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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから―― 作者:疲労困憊

第四章 勇者村内政編

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第71話 王都インダストリア

第四章開始です。
 勇者になった俺は、王都を襲った魔物の仲間レオを討伐するよう王様から依頼される。
 俺はドラゴンと取引をしてレオを助け、世界樹にいた四天王を倒し、エルフを一族ごと助けて信者にした。
 そのあと聖女こと大海神リリールから魔王の真相を聞いた。魔王はヴァーヌス神の別名だった。



 四天王を倒した次の日、世界樹に魔物避けの結界を張ってから出発した。
 エルフの送別を受けながら、南西へと向かう。

 これからやることは腕のいい鍛冶職人を見つけ、エーデルシュタインで産出する宝石を手に入れ、聖剣を作る。
 そして信者を5万人獲得すること。

 とりあえず目指すは王都インダストリア。
 一週間ほどの旅路だった。


 サンドリザードに乗って砂漠を渡る。
 俺、セリカ、ミーニャ、ラピシア、フィオリア親子の6人に、聖女リリーこと大海神リリールが加わっている。

 リリールはラピシアと一緒にサンドリザードに乗っており、道中、神術を教えていた。
『いいですか、ラピシア。大地の力を少し借りて使うのですが』
『うん』
『大地に思いを馳せて、自分の手足のように動かす感じです』
『んう?』
『地面の中に長い手を入れて下から掴んでみましょう』
 ――そんな方法でいいのか。

 ラピシアはトカゲの背中に乗りながら、眉間にしわを寄せて、うーと唸る。
「つかむ!」
 通り過ぎる砂の上を指差した。
 すると、もこっと10センチメートルほど盛り上がった。
 それだけだった。

 リリールがラピシアの頭を撫でる。
「えらいわ。よくできましたね。それが基本になるから、しばらく頑張りなさい」
「わかった!」
 ラピシアは青いツインテールを揺らして繰り返し練習を始めた。
 道しるべのように砂が点々と盛り上がっていく。


 先に魔力の使い方を体で知っておくほうがわかりやすいか。
 説明が大雑把だけど。

 リリールは目がくらむほどの美女だが、ドジっ子なところがあった。世界を終わらせるレベルの。
 何かやらかさないか、不安である。


 ――それはそうと、リリール。
『なんでしょう?』
 ――リィのステータスはどんな感じだ?
『ずっと注意して視てましたが、おそらく種族と年齢に異常があるかと』
 ――やはりエルフじゃなかったか。年齢も違うのか?

『世界樹が倒されたのは約30年前ですが、あの子は139歳。その父親がリィの生まれた時に20歳としても、120歳超えていないと辻褄が合いません。人間はそこまで生きれないでしょう。逆に生きてたらさすがのエルフも怪しみます』

 ――あー、いろいろとおかしいな。実際は60~70歳ぐらいになるのか。
『見た目は13~14歳なんですけどね。エルフたちは時間の流れに対して鈍感だから、元の数値を調べようがなく……』
 ――もう、大海神の力で種族と年齢、上書きしてしまえ。
『無茶言わないでください。もう少し、生命や魔力の波長を調べてから種族を上書きしましょう』
 ――その辺は任せるよ。

 そんなフィオリア親子はローブを頭から被ってエルフとはわからなくしていた。
 余計な揉め事は避けるための工夫。


 3日ほどで砂漠を抜けて、街道へと入った。
 途中の町でトカゲを売り払って馬を買う。

 痩せた土地を通り過ぎる。
 柵で囲った畑や放牧地帯を通る。畑は干ばつに強い作物が多く、牧畜も盛んな様子。


 出発から一週間で王都インダストリアに着いた。
 大陸の西南、海に面した大きな街。
 南にある港には大きな船が停泊し、海岸沿いには倉庫と工房が雑多に並んでいる。
 鍛冶屋だけでなく、木工屋、織物屋、染物屋、陶器屋など、多くの商店や工房が並んでいる。もちろん問屋街もある。

 運んできた原材料をこの街で加工して、それを輸出しているらしい。
 ファブリカ王国は領土の多くが砂漠化したために、食糧自給率は低いが加工技術で国を支えているようだった。


 そんな街に、俺たちは北側から近付いた。
 高い街壁の周辺は貧民街となっていた。これだけでも一つの街を形成している。
 流れ者や出稼ぎ、壁の内側に住めない貧民たち。
 これだけの人が集まるということは、仕事が多いことを意味していた。

 しかし街壁の門のところでもめていた。両開きの大きな門は閉められ、人だかりができている。
 兵士が言う。
「今日は危ないので街に入れません」
「なんでだよ!」「入れないと仕事できないだろ」「通せよ!」
「ダメな物はダメだ!」
 兵士たちが増援されて、人々に槍を突きつけて入らせようとしない。


 俺は【勇者の証】を見せつつ近寄った。
「俺は勇者だ。何があった?」
「なんだお前――あ、これはダフネス国の勇者さま! 遠路はるばるご苦労様です! インダストリアへようこそ! 今、職人どもが街中で行進していて危険です」
「デモやストライキでもしてるのか」
「ええ、まあ。そんな感じです」

 俺は《千里眼》で街中を見た。
 大通りで兵士と住人がにらみ合っていた。住人の多くが職人と思われた。
【俺たちは奴隷じゃない】【増税反対】【武器ばかり作らせるな】
 ステータスを見た感じ鍛冶師が多かった。
 ――勧誘する前に怪我されたら、困るな。


「わかった。俺が止めてきてやる」
「本当ですか、勇者さま!」
「任せろ――セリカたちはここで待ってろ。フェリシア親子を守ってやれ。リリー、こい」
「いいだろう」
 人々を掻き分けて身長2メートルの大男が現れた。

 短い赤髪、頬には刀傷。目付きは鋭く、いかつい顔をしている。赤銅色の肌の下では筋肉がうねり、歴戦の冒険者の雰囲気をまとっていた。
 その荒々しい姿のため、大男の周りだけ空間ができている。

 変身したリリールだった。気が付いたらこの姿になっていた。
 蜃気楼投影ミラージュフォルムという、姿を誤魔化せる魔法らしい。


「え、こちらもお仲間……」
「そうだ。門を通るぞ」
「今、開けま……」
「いらん」
 俺とリリールは両開きの分厚い鉄の門を押した。
 ギィィと重い音を立てて開いていく。

 兵士が目を丸くする。
「なんて力! 5人がかりで押さないと開かない扉なのに!」
「勇者だからな」


 そして開いた門の隙間から俺と大男リリールは中へ入った。
 一つ目の街壁をくぐると、そこは工場街だった。
 雑多な工房が所狭しと立ち並ぶ。
 あちこちにある煙突からは白い煙が昇り、空気がかなり埃っぽい。

 油で汚れた石畳の道を颯爽と駆けた。
 向かうは第2の街壁の中。

 数百メートル走ると2つ目の大きな門が現れる。兵士が見張っている。
 先ほどと同じようなやり取りをして門をくぐる。

 そこは普通の市民や職人が住む街。
 商店や住居が立ち並んでいる。
 しかし人通りはなかった。
 大通りで兵士と職人の集団がにらみ合っていた。
 怒声と罵声が響きあう。

 先程よりも互いの距離が縮まり、一触即発の状態。


 俺は地面を蹴って高く飛んだ。和服がはためく。
 そして二つの集団の前に出た。大男リリールも後に続く。

 兵士が叫ぶ。
「な、なんだお前!」
 俺は【勇者の証】を回りに見えるように掲げた。
「俺は勇者だ。双方、無駄な争いはやめるんだ」
「「「ゆ、勇者さま!」」」

 さあっと潮が引くように集団が沈静化していく。
 とくに不満を抱えているらしい職人集団の熱がみるみるうちに収まっていく。


 俺は職人たちに言った。
「お前たちだってこのままぶつかれば怪我をしたり牢屋行きになるのはわかってるだろう? 何か困っているなら勇者の俺が話を聞いてやる。それでいいな?」
「は、はい……」「わかりました……」「すんません」
 三百人ぐらいいた職人集団はわらわらと路地や脇道へと散っていった。

 俺は兵士たちへと向き直る。
「というわけだ。デモはなくなった。けが人一人出なかったんだから不問にしてやれ」
「はい、わかりました! さすが勇者さま! ――戻るぞ!」
 兵士たちを率いていた隊長が声をかけると、ぞろぞろと街の中心にある城へと戻っていった。


「あ、あのう。勇者さま。話を聞いてください」
 二人の男が傍へ来た。どっしりした体躯の鍛冶師と、商人風の男。
「なにがあった? 鍛冶屋が多いみたいだったが」
 真理眼でステータスを見たので間違いない。

「実は、王国側がとても安い値段で武器や防具、携帯食料を作らせようとするのです」
「しし、しかもたくさんでぇ! 5本や10本なら今までもあったし、許せるってもんだが、原価割れの仕事を1000本単位で発注されたら、俺たち死んじまう!」

「なるほど。それで正当な対価を要求したが受けいられずストライキとデモになったというわけか。実際どれぐらいだ?」
「今月末までに1000本。来月末までに4000本です。防具や食料も同程度」
「多いな」
「ぜってー死人出らぁ。魔法じゃねぇんだから、そんなほいほい作れるかよ!」


 ――まるで戦争の準備。
 どことする気だ?

 リリールが心話で話しかけてくる。
『まるで戦争の準備ですね。魔物退治でもする気でしょうか?』
 ――それならいいんだがな。


 商人風の男が腰を低くして言った。
「それで、助けていただけるでしょうか?」
「そうだな。王国側の意見を聞いてから考えるが――値段や本数の交渉はしてみよう」
「ありがとうございます、勇者さま!」

 そのとき、背後からパカパカと蹄の音が響いてきた。
 振り返ると、城からやってきたらしい、騎士が馬に乗ってやってきた。後ろには馬車が続いている。
「勇者殿とお見受けする。ファブリカ国王ロンヘイム陛下が至急お会いしたいとのこと。来ていただけるか?」
「丁度いい。今から向かうつもりだった。――リリーはセリカたちと合流してどこかの宿に入っててくれ」
「うむ」
 いかつい顔で頷く大男リリール。

 俺はリリールと別れ、馬車に乗って城へと向かった。

今日はもう一回投稿したいです。
GAノベルより3月15日に2巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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