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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから―― 作者:疲労困憊

第十章 勇者冒険編・決戦、浮遊大陸!

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第246話 セリカの願い

 ケイカ村に帰ってしばらく過ぎた。

 その間、多くの人が訪れた。
 各国の貴族や町長。
 エルフ族長ヤークトや妖精女王オルフェリエ。
 獣人地区議長に就任した竜人族のシャンドラや、ドルアース町長など。


 ブリザリア王女のフレイヤまでもがティッキーと一緒に公式に尋ねてきた。
「遠くからわざわざすまないな」
 ティッキーは、ほがらかに微笑む。
「アイスドラゴンならすぐよ――でも、さすが勇者ね。夢が叶ったようでなによりだわ」

 フレイヤも巨体でどすっと足を踏み鳴らす。
「さすがケイカさま、強いのです! 魔王を倒してくれてありがとう!」
「霜巨人族は魔王に迷惑かけられてなかったんじゃないのか?」
「それでも、いやなの! もう魔法少女になったから、魔王なんていらないからっ!」
 フリルのドレスを揺らして言った。

 ティッキーが話題を変える。
「そうそう。やきうのチームを作ったわ。何チームもね」
「早いな。こっちの準備はもう少し待ってくれ」
「ええ、その間に練習して強くなっておくから」

 フレイヤも投球モーションをしながら言う。
「私も練習、がんばるっ!」
「ああ、頑張ってくれ。楽しみだな――ついでに挨拶回りしておくか」

 フレイヤとティッキーを連れてエトワールやステラに会わせた。
 ステラは見慣れたものらしいが、エトワールは気絶しそうなほど驚いていた。


 また別の日の朝。
 意外な人物が訪問した。

 ぴちぴちのスーツに身を包み、怪しいマントを羽織っている、体格の良い男。
 夜魔伯爵マッシブ。

 屋敷の応接室に入るなり、豪快に笑い出した。
「はっはっは。私は勇者が魔王を倒すと会った時から気付いていた! だからこそステラを褒美として先渡ししていたのだ! 我が婿よ、夜魔街を第二の故郷にするが良いぞ!」

「何が気付いていた、だ。コウモリ男め。変態の家なんかに、婿養子に入る気はない」

 マッシブは傷ついた顔をしてよろめく。
「な、なんということだ……はっ! そうか!」

「ん?」


 マッシブはバサァっと派手な音を立ててマントを脱ぎ捨てる。
 背を向けて尻を突き出す。
「確かに処女のサキュバスなんぞ、なんの褒美にもならん! ――ここは前回見せ損なった、薔薇のように美しいケツの穴を見せようではないか!」

「そんなもん、褒美になるかぁ!!」
 奴のケツを蹴り上げた。
「ふぐぬぁ!!」
 衝撃で上半身の服をビリビリに破りながら、床の上で悶絶した。


 窓から可愛らしいけれども、呆れた声が響く。
「なにやってんだか~。もうお父さんはアタシに関わらないで欲しいんだけど~?」
 マッシブの娘ステラが窓枠に頬杖を突いて、うんざりした表情で見ていた。
 浴衣が着崩れて、紐だけで隠された美乳や下腹部が見える。

 マッシブが飛び起きて叫ぶ。
「おお! 我が娘よ! 勇者をかどわかしたか!? ぜひとも、夜の世界に引き込むのだ!」
「いやいや。ケイカをどうこうできる人や魔物なんて、この世にいるわけないじゃん――あ、これ。頼まれてたカーテンの紐」
 はぁ~、とあきれ返ったため息を吐いた。

 それから紐を俺に投げてきた。
 細かい刺繍と両側にフリルの飾りが付いた幅の広い紐だった。
 使わないときカーテンを縛る飾り紐だ。間違いない。
 和服の袖に仕舞った。


「何を言うか――ん? ステラ、ついに処女を捨てたのかっ!」

 驚くマッシブに、ステラは胸を張って答える。

「魔王を退治した勇者に処女を捧げたサキュバスなんて、歴史上初めてよっ! アタシが一番なんだから~!」
 ステラは艶かしいポーズを取った。美しい半裸が日差しを浴びて輝く。

「そういうことは大声で言うな」
 俺はポリポリと頭を掻いた。
 ――まあ、約束だったから叶えてやらないとな。
 それに俺のピンチの時、魔物なのに一生懸命祈ってくれたんだから。


 マッシブはぐぐっと大胸筋に力を込めてポーズを取りながら叫ぶ。
「おお――ッ! やるではないか! 淫魔族始まって以来の快挙ッ! さっそく祝宴を開き、盛大に乱交するのだ! ――そして、勇者をかどわかして帰郷し、夜魔街を繁栄させるのだ!」

「他人と肌合わせるとか、絶対にイヤ! アタシはもうケイカのものなんだからねっ! お父さんは臭いんだから、地下街に引きこもってて!」

「ぐはぁ!」
 マッシブは吐血して気絶した。

 ――なんだ、この親子。

 この後、早々にお引取り願った。


 ちなみにリヴィアとリリールもやってきた。
 こちらは表敬訪問ではなく、訴訟。
 どちらが俺の嫁にふさわしいかで仲違いしていたらしい。

 二人のケンカは世界に影響を与えかねないので、平和的な方法で解決させることにした。
 俺を惚れさせたほうが勝ちという無茶振り。
 冗談だったが、本人達は乗り気になった。
 まあ、世界が平和になってなによりだ。

       ◇  ◇  ◇

 そんな日を過ごしていた、ある晴れた朝。

 屋敷で朝食を終えた時、セリカが言った。
「ケイカさま、エーデルシュタインでの祝賀会の用意が整いました。これから始めますので、どうかお越しください」

「そういえば、まだだったな。そんなに豪華な式典にしなくてもいいだろうに」
「そういう訳にはまいりません。ケイカさまを讃えるのですから――さあ、さあ!」
 セリカは大胆に手を繋いでくると、俺を引っ張って妖精の扉へ向かった。

 いやに積極的だった。
 それに端整な顔を少女のように輝かせている。波打つ金髪も艶やか。
 いつも以上に美しく可愛らしかった。


 エーデルシュタインの王都シェーンブラウ。
 湖上に立つ城に移動すると、すぐに従者たちが群がってきた。
「ケイカさまはこちらです!」「姫さまは1階控え室へ!」

「お、おい……」
「ケイカさま、またあとでお会いしましょう!――ふふっ」
 セリカは金髪を揺らして踵を返すと、軽い足取りで別室へ向かった。

 俺は黒髪を梳かれ、身だしなみを整えられる。


 そして連れて行かれたのは二階のバルコニー。
 いやに飾った燕尾服を着ている大臣ゲーリッツがいた。
「お待ちしておりました、ケイカさま。どうぞこちらへ」

 案内されてバルコニーへ出る。
 広場にはすでに人々が集まっていた。
 騎士たちが二列になって整列している。

 一望できるその広場に違和感があった。
 騎士は赤く細長いカーペットの両側に整列していた。


 ――と。
 広場の反対側、赤いカーペットの端に人影が現れた。
 全身を純白のドレスで覆い、長い裾を引きずって歩き出す。
 ヴェールからのぞく金髪が陽光を浴びて輝く。ティアラはもっと輝いている。

 花で編んだ冠を被ったラピシアが裾の端を持ち上げていた。
 ドレスの女性はセリカだった。

 どう考えても、これは結婚式。
 だから準備に時間がかかったのか!

 それにエトワールが先に結婚すると宣言した時、ひどくショックを受けていたのは、正妻なのに先を越されたからか。


 騎士たちに守られた赤いカーペットの上を、しずしずと歩いてくるセリカ。
 優雅で、静かな微笑みを浮かべていた。
 安堵、なのかもしれない。

 長い冒険の果てに掴んだ、セリカの願い。
 その形がこれだったんだ。


 セリカは城へと入り、階段を上がった。
 バルコニーまでやってくる。
 ラピシアはソーセージを頬張りながらどこかに消えた。食べ物で買収されていたらしい。

 それにしても……。
 間近で見ると、女神のように美しい。
 いや、性格や能力を考えたら、リリールやリヴィアなんて足元にも及ばないな。

 ――って、そうか。
 朝の時点でいつも以上に可愛く見えたのは、すでに結婚式用の化粧を終えていたからか。


 セリカが横に並んで俺を見上げた。
「ケイカさま……よろしかったでしょうか?」
「驚かされたよ。でも、悪いはずはない。セリカの願い、かなえてやる」

「ケイカさまぁ……」
 ヴェールに隠された頬を染めてうつむいた。
 今日のセリカはどんな仕草も可愛らしい。


 大臣ゲーリッツが声を張り上げる。
「諸君! 勇者ケイカさまとエーデルシュタインの正統後継者セリカ王女は、魔王を倒し世界に平和をもたらした! 皆のもの、讃えよ!」

「「「ケイカさま、ばんざーい!!」」」
 騎士や官僚、人々が声を揃えて叫んだ。
 どうやら練習したらしい。準備に時間がかかったわけだ。


 ゲーリッツが続ける。
「そして、ケイカさまはセリカ王女と未来を誓い合った。――勇者ケイカさま、あなたはセリカ王女を一生大切にすると誓いますか?」
「もちろんだ。誓って大切にしよう。一生かけて、幸せにしてみせる」

「では、セリカ王女。あなたはケイカさまを一生支えると誓いますか?」
「当然です。これまでも、これからも。わたくしはケイカさまを命を懸けて支えてみせますわ!」

 ゲーリッツは大声で言った。
「今ここに、二人は夫婦となることを誓ったと認める! ――さあ、誓いのキスを!」


 ――やっぱりするのか。
 俺はセリカに近付くと、顔を隠すヴェールを持ち上げた。
 澄ました顔をしているが、耳は赤くなっている。

 そんな端整な顔を近づた。目を閉じる彼女。
 果実のように赤い唇にキスをした。
 甘い感触が伝わる。セリカが和服を掴んで体を震わせた。

「「「ケイカさま、セリカさま、ばんざーい!!」」」

 観衆が祝福の声を揃えて上げた。
 その後は、うわぁぁぁ、とまちまちに騒いでいた。


 唇を離すと、セリカの顔は真っ赤に染まっていた。
「嬉しいです、ケイカさま」
「これからも、傍にいてくれよ?」
「はいっ、もちろんですわっ――きゃっ!?」

 可愛いことを言ってくれるセリカを、お姫様だっこで持ち上げた。
 俺の首に腕を回して、ギュッとしがみついてくる。


 バルコニーの端まで行くと、広場の大衆に向かって叫んだ。

「魔王の脅威は去った! しかし、災難、災厄はいつ訪れるともわからない! だからこそ誓おう、俺は何度でも世界を救うと! セリカ王女のために! エーデルシュタインよ、永遠なれ!」

「け、ケイカさま……っ」
 俺の胸に顔を埋めてきた。感激してないているらしい。

 観衆は「うわぁぁぁ!」「ケイカさまぁ!」「ばんざ~い!」とバラバラに叫んでいた。
 どの声も歓喜に満ちているのだけは伝わってきた。

       ◇  ◇  ◇

 その後、披露宴や謁見をした後、王女の部屋へと戻った。
「お疲れ様でした、ケイカさま」
「今日は一段と美しかったな」
「ありがとうございます。こんなにも幸せな日を迎えられるなんて、夢のようですわ――え?」

 セリカをベッドに押し倒した。シーツの上に、金髪が扇のように広がった。
 彼女は頬を上気させながら、青い瞳を丸くして子供のようにイヤイヤをする。
「だ、だめですよ……? ほんとにだめですよ?」
「セリカが美しすぎるのが悪い」

 ドレスの隙間から手を入れて大きな胸を揉んだ。
「そ、そんな――ひゃあっ! ダメですわ、まだ明るいのです。ケイカさまったらっ――ああっ!」
 セリカは口では嫌がりつつ、身をよじって唇を求めてきた。
 儀式とは違う、熱く湿ったキスを奥深くまで交わす。

 その後、セリカはベッドの上で、花びらを散らすように純白のドレスを乱し続けた。
次話は昼更新。
GAノベルより3月15日に2巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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