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勇者のふりも楽じゃない――理由? 俺が神だから―― 作者:疲労困憊

第七章 勇者地固め編・貴族動乱

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第166話 王都防衛と必然悪

 日の暮れた王都。
 貴族たちの作戦を粉砕した俺は、悪の根源たるヴァーヌス教の粛清に向かった。

 魔法の明かりが照らす街路を走って教会へ来ると、大きな入り口前には人々が集まっていた。
 中へ入ろうとする町の人たちと、背の高い盾を並べて押し返す神官戦士たちがもめている。

「いったいどういうことだ!」「あの映像は本当なのか!」「騙していたのか!」
「今、協議中です。静かにお待ちください」
「ええい、お前じゃ話にならん! 入らせてもらう!」

 年配の男が通ろうとするが、神官戦士は盾ではばむ。
「ここは教会です。神聖な場所ですから無断で立ち入らないでください」
「ふざけるな!」「説明しろ!」「やっぱり魔王の手先なのか!」
 人々が詰め寄るが、神官戦士は岩のように動じない。

 それにしても人々の高ぶりが激しい。
 信じていただけに、よけいに憎さが大きくなっているようだ。


 俺は人波をかき分けて、入り口の前に出た。
 懐から銀色のメダル――勇者の証を取り出して印籠のように見せつける。

「ヴァーヌス教が魔族と共謀している可能性があるから調べさせてもらうぞ」
「今は誰も入れるなと命令されております」

「ほう。ということは、罪を認めるということだな。お前も魔王の手先というわけだ」
「いえ……そんな」
「勇者の捜査を邪魔する者は、全員牢屋行きと知らないのか?」

「くっ……! それでも通すわけには――ッ!」
 三十代ぐらいの男は顔を青くしながらも、かたくなに断った。


「そうか――だったら敵だ」
 俺は太刀に手をかけた。
 抜き放つ勢いで二人を殴り付ける!

 ドッ、ゴッ!

「ぐっ!」「うわっ!」
 彼らを盾ごと殴り飛ばす。

 盾の壁に隙間ができた。
「安心しろ、峰打ちだ。――通してもらうぞ」

 隙間を風のように駆け抜け、教会の中へ入る。
 後ろでは神官戦士たちが騒いでいたが、人々を押し返すために動けなかった。


 協会内部のエントランス。
 広い階段と左右の通路。
 千里眼で見通す。
 奥には祭壇のある礼拝堂。事務室や控え室に目的の人物はいない。
 頭を抱える末端の神職がいるばかり。

 モザイク調の天井画を見上げた。

 2階では上級司祭たちが集まって話し合っていた。
 上級司祭たちでもヴァーヌス教が魔族とつながりがあったことを知らない人が多いらしい。

 そして3階。
 赤い絨毯が敷かれた豪華な部屋で、一人の老人が手を合わせ、血走った目で祈りを唱え続けていた。
--------------------
【ステータス】
名 前:ガリウス
性 別:男
種 族:人間
職 業:大司教
クラス:僧侶Lv49 魔法使いLv61
--------------------
「間違いないな」
 困ったときの神頼みしか残されてないってわけだ。

 俺は和服をなびかせて、階段を駆けあがった。


 3階。
 質素に見えるが上等な絨毯や石材が使われている廊下。
 一番奥の部屋の前には神官戦士が3人、並んでいた。

 俺は懐に手を入れつつ彼らの前まで行く。
「ちょっと通してもらおうか」
「大司教さまはお取り込み中だ」

「祈ってるだけなのにか?」
「さすがは大司教さまだ! いつも神の御心とともにおられる! ヴァーヌス教に栄光あれ!」
 狂信的な顔つきで叫ぶ神官戦士。声が人気のない廊下に反響した。


 ――いや、違う。
 中のガリウスに知らせるためだ。
「あくまでも勇者に抵抗するってわけだな。――どけ」

 俺は太刀を抜いて一閃。

 ザザザンッ――!

「う――っ」「うぁっ!」「ぐふっ」
 3人の神官戦士はなすすべなく床に倒れる。
 ガチャガチャと装備が耳障りな音を立てた。


 重厚な木のドアを開けて中へ入る。
 ガリウスは部屋の真ん中にいた。
 干物のようにしなびた老人。俺の侵入を予期してか、杖を突いて立っていた。

 怒りに顔をゆがめながら、しわがれた声を出す。
「よくきたな、不届き者が」

「それはお前のことだろう。人々を守り導く神職が、魔物を使って人々を脅し、信者を増やしていたのだからな」

「これは必要悪じゃ! 我々は人々を守るためにやっておったのだ! 魔物の脅威を与えることで、人々は一致団結できたのであるから」

「死人が出るようなこともか? 貴族に荷担して王都を魔物に襲わせ、王族を殺そうとした」

「多少の犠牲は仕方がない。2つの国が統一されるためじゃ!」
「そして国教の座を得て、ヴァーヌス教を不動のものにするといったところか」

 ガリウスは声を裏返しながら叫んだ。
「それのなにが悪い! ひいては魔王の脅威を減らすためじゃ! 人々の力が合わさることで、明るい未来が待っておる!」

「汚い手段の上に建てられた理想など無意味だ。ヴァーヌス教が最大信徒を持つのも、信仰が薄い村や町を魔物に襲わせ、神官戦士団で助けて信者を得ていたんだからな」

「それもすべて人々のため! ヴァーヌスさまこそ世界に平和を求めるものじゃ!」
 激昂しているのか、頬の肉が震えていた。


 俺は、くるっと振り返って言った。
「ということです、みなさん。すべての黒幕はヴァーヌス教でした。五大領地貴族もからんでこの国を乗っ取ろうとしたのです」

 その瞬間、やけに静かだった窓の外から意味をなさない叫びが聞こえたきた。
「「「うわぁぁぁ!!」」」
 ヴァーヌス教に騙されてきた人々の悲鳴だった。


 その声にガリウスは血走った目であたりを見渡した。
「な、なんじゃ!?」

「中継させてもらったよ」
「なんじゃと!」
 ガリウスは驚きのあまり口が半開きになった。

 俺はニヤリと笑いつつ言う。
「中継所をこちらが押さえた時点で、最悪の事態を考えるべきだったな。まあ、諦めろ。自分たちは正しいと思うあまり、人の道を踏み外したことを悔やむがいい」

「お、お前さえいなければ……いなければ! ――偉大なる神、ヴァーヌスよ! この者に天罰のいかずちを降らせ! ――聖轟雷光破ホーリースパーク!」
 口の端から白い泡を飛ばしつつ、ガリウスは杖を突きだした。

 カッ!

 まばゆい光が室内を照らす。
 杖の先から青白い光がほとばしった。

 ズバァッ、バリバリバリ――ッ!

 聖なる雷が俺を直撃し、そして散った。

 光が消えた後には、無傷の俺が立っている。
 黒髪がそよいだ程度だった。


 悠然と、大きく一歩踏み出した。
 ガリウスは怯えて半歩下がる。

「な、なぜじゃ! 神のいかずちが……!」
「つまり、俺は天罰に値しない、正しい人間だという証明だ! ――次はこっちの番だ」

「く、くるな! くるなぁ!!」
 ガリウスは杖をぶんぶんと振り回した。
 しかし当たるはずもない。

 俺は目の前まで来ると、太刀を振りかぶる。
「自分の行いを地獄で反省するんだな――《水月斬》」
 無造作に振り下ろす。

 ギッ、ザァンッ!

 ガリウスの持つ杖ごと、肩から斜めにぶったぎった。
「ぐわぁぁぁ! なぜ、なぜじゃ……わしは、正しい……」
 血まみれになって床に倒れる。
 2、3度痙攣して、そして動かなくなった。


 太刀を振って血をとばし、鞘に収める。
 窓の外から喝采が聞こえてきた。
「すげぇ! 魔法が効かなかった!」「嘘じゃないよな!?」「さすが大地母神に愛されたケイカさまだ!」「神の御心は勇者とともにあり!」「勇者ばんざい!」

 俺は窓から顔をのぞかせた。
 教会を取り囲むように集まっていた人たちが、うぉぉぉ、とうねるような歓声を上げた。

 ――これで教会の権威は失墜する。
 逆に、俺の信者が大幅に増えただろうな。
 ……まあ、ルペルシアの信者も増えそうだが、名前を借りた謝礼代わりだ。


 手を振って人々の声に答えながら、ヴァーヌス教が管理する映像中継所を千里眼で見た。
 少し前の夜に、副司教が貴族たちと密会した建物でもある。

 建物の中、広い廊下で一方的な戦闘がおこなわれていた。
 セリカがフローズンレイピアから吹雪を発して、逃げようとしていた副司教と神官戦士たちを氷付けにしている。
 激しい風に赤いスカートがめくれて白い太ももがのぞき、金髪が美しく逆巻く。
 細剣をかざす姿は凛々しかった。
 さすがセリカ。

 ――副司教が教会の悪事を実行していたから、こいつは生かして情報を得る必要があった。


 ともあれ、ようやく掃除完了。
 予想より手間取った。

 あとは王様が心変わりしなければ終了だな。
 最後を見届けるため、もし同情心でも見せようものなら諌めるため、俺は城へ向かった。
まだ貴族動乱編が終わらない……。明日も更新します。
GAノベルより3月15日に2巻発売します!
何度も改稿してなろう版より格段に面白くなってます!
勇者のふりも楽じゃない
勇者のふりも楽じゃない書籍化報告はこちら!(こちらはまだ一巻)
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