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紙様の願い

作者:堆烏
俺には止めることができなかった・・・・

そう、あの時俺は、唯一彼女を止めることができる立場にあったんだ・・・・

もし、あの時、彼女に読書をやめるように言っていれば・・・・

後悔しても、もう遅い。彼女はもう・・・・

あんなことになるなんて・・・・


すべてはあの夏の日に始まった。




彼女は『紙』になった。




正確には『神』といった方がよいのかもしれない。世界中のどこにでも意識を飛ばすことができ(紙があるところ限定らしいが)、紙なのに声を発することもできる。そして、姿は人には見えない(紙だからな)。

俺自身信じたくはない話だが、どうやらその声が聞こえるのは俺だけじゃないらしいので、俺の頭はどうやら正常のようだ。

十日間の間、彼女は自室で読書を続けていたらしい。確かにそんなことを宣言していた。彼女の親が娘の引きこもりを不審に思って、二週間たった日に(普通そんなに放置しておくものなのか?)部屋のとびらを開けると大量の紙が舞っていたのだとか。

『母さん、私、紙になったよ!』

喋る紙に母親は気絶した。

あとから聞いた話だと、昔は人が紙になるのはよくあることだったらしい。

なぜ今はそうでないかは俺は知らない。それは別の物語だ。そしてこれは、紙になった彼女の物語。









『ぎゃあああああああぁぁぁ。』
真夜中、音がよく響く図書館の中で、大の大人が必至の形相で駆けていく。


『ん~、次は何しよっかな~。』

私は一人で呟いた。誰もいないはずの図書館の中で、女の子の声が聞こえるわけないもんねー。警備員さんビックリしてるよ。あははは。


紙になぜか成ってしまってから、私はイロイロなところへ意識を飛ばすことに夢中だった。世界中の紙が私の一部のような感覚。なんかエライ人になった気分。

この能力をつかってたくさんの本を読んだ。国の機密事項とか簡単に読めた。読書に疲れたら声を出して人を驚かせて遊んだ。

『でも、いい加減飽きたな~。なんか楽しいことないかな~。』

やっぱり神様も寂しいよねっ、と心の中で訊ねてみる。まぁ『紙様』程度の私の問いかけなんかに応じるわけもないか。

夜の図書館をフワリと抜け出し、風に任せて街を漂う。この紙が私だなんて、誰もきづかないんだろうな。

ふと、あの日のことを思い出す。十日間読書宣言をした日のことだ。みんな無理だって言ってたけどアイツだけは無理とか言わなかったなぁ。

二日前のことも思い出す。紙の私がアイツと再会したときのことだ。あんまり驚いてなかったなぁ。なんかムカツク。


風がわたしをどこかの路地裏へ運ぶ。今日はここで眠ろう。野宿だ、と一人でサバイバル気分に浸ってみる。まぁ、起きたら別の紙に意識をとばせばいいだけだもんね。

私はサスライなのだ。









紙になる、というのはどういう気分なんだろうか。公園のベンチに寝そべって俺は考えてみる。

目を閉じる。

思考する。

目を開ける。

『ダメだ。想像もつかねえや。』


彼女は今、どこにいるのだろうか。紙は腹が減るのだろうか。笑うと紙にシワが入ったりするのかも・・・・

毎日見ていた顔が急にいなくなると、やっぱり寂しさは無意識に生まれてくる。無くなって初めて大事さに気づく。

『それこそ髪じゃねえかよ(笑)』


苦笑いをいて空を仰ぎ見る。雲のない青空。神様から見たら丸見えだな俺。いたらの話だけど。

『なぁ神様。あんたは寂しくないのかよ。』

空に向かって叫んでみる。返事はない。そりゃそうだ。俺も誰もいない公園だったから言ってみただけだし。

一人で言い訳をしていると、子どもが一人、公園内に入ってきた。ちょうどいい。帰るか。

強い風も吹いてきた。ゴミや紙が吹き飛んでいく。

ベンチから体を起こす。ん、いい天気だ。









『私、十日間本を読み続ける!』

急に教室内で叫んだ私にみんな呆然としていた。まぁ、一瞬のことだが。私が突拍子もないことを言うのは今に始まったことではないからだ。

『つまり、一日三時間ぐらいの読書を十日続けるんだろう?俺でもできるぜー。』

ニヤニヤ顔の後ろの席の男子。いつも突っかかってきてウザい。

『違うもん。二十四時間×十日間本を読み続けるのっ。』

『ご飯とかどうするの?』

『食べながら読む。』

『風呂は~?』

『部屋に閉じこもって読むつもりだから、我慢する。』

『閉じこもっちゃうの?流石にトイレぐらいは行こうよ・・・・。』

『ん~、じゃトイレだけ行く!』

改めて周りを見渡すと、みんなあきれ顔だった。また、いつもみたいにバカなこと言ってるよ~、みたいな。

『みんな無理だと思うの?』

悔しくて聞いてみる。せめて一人ぐらいは・・・・

教室にいた人はみんな、同情の顔で頷いていた。無理だと思うよ、と言わんばかりに。


『ん?できるんじゃね?お前なら。』

隣の席の「アイツ」だけは違った。眠そうな顔をこすってどうでもよさそうに、でも当たり前のようにそう言った。

『昔っから読書好きだもんなーお前。十日ぐらいちょちょいと終わらせそうだ。宿題に関してはちょちょいと終わったとこは一度も見てないがな。』

その時は、勉強面は関係ないでしょー!!っと怒っていたけど、ホントはとても嬉しかった。









突風が吹いて私は目を醒ました。ひらひら、というよりバサバサと飛ばされてる。いや、痛いってば。。

『もー、意識飛ばしちゃうか~・・・・っっっ!!』

飛ばせない!なんで!!

分からない。気が動転しながら私は街を転がっていく。

『紙様パワーがなくなっちゃったのかー。うん、それはしょうがない。』

とりあえず結論付ける。でもなぁ。移動めっちゃ不便やないかー。つか、どこまで飛ばされるんや私はー。


十分後たどり着いたのは早朝の公園。あ、家の近くの公園だ。よくアイツとここに来てたなー。

『っているじゃん。』

ベンチの上で寝そべってる。そして私は風に乗って・・・・




その横を通り過ぎた。




いや、風さん!空気読んでよっ!


そして、上昇気流にのって空に舞い上がりかけた私に


なにかがぶつかった。









走りながら、背の低い少年は呟いた。

『セミ。まだいるかな。まだいるかな。』

いなきゃ困る。だって、だって・・・・

夏休みの自由研究が終わってないんだよー!

僕は知らず知らずのうちに小走りになって公園へ向かう。うん、大丈夫。聞こえる。セミの声。

よーし、捕まえるぞー。

虫取り網を肩にかけて颯爽と早朝の公園内に入る。

しかし、予想外のことが・・・・


『先客が・・・・いる、だと・・・・。』

木のそばのベンチに男が寝そべっていた。

きっとセミを捕るチャンスをうかがっているに違いない。

そして、先客(セミ捕りライバル)の存在に驚いた少年が目を見開いたその瞬間。


世界が真っ白に覆われた。いや・・・・


顔面に『紙』が張り付いた。

『うぇ~、汚ね~。』

・・・・ん?今のは僕の心の声なのかな?まぁいいか、それよりも。

ベンチで寝そべっていた人がむくっと立ち上がった。ダメだ。きっと僕より先にセミを採るつもりなんだ。

『なんとかして気を引きつけないと・・・・。』

あたりをを見渡した後、さっき顔からはがした長方形のコピー用紙を見る。これだ。









『うぇ~、汚ね~。』

ガキの顔に張り付いちゃったよ。まぁいいや。このガキに運んでもらおう。

『ねぇ君。この紙である私をあのベンチにいる人に届けてくれないかな?』

無反応。紙様パワーのうち、意識移動と声の両方ともなくなっちゃったのかよぅ。

『ってアレ?私、折り紙じゃないんですけどー。』

ガキが私を折り始める。もういいや。遊びたきゃ遊びなさいな。

出来上がった紙飛行機(in the 私)




(寝ぼけたあの人に投げつけて、怯んだスキに僕がセミを先に捕る!!)

僕は投げた。




『ん?』

子どもが俺の方へ何か投げてきた。




『ぎゃああああああああぁぁぁぁ』

私はガキに投げられた。









俺の下に落ちた紙飛行機は、何かやり遂げた感を放っていた。

そして、

『ただいま。』

彼女の声が聞こえたような気がしたから

『お帰り。』

と、呟いてみた。


『この紙飛行機、もらってもいいかな?』

子どもに聞くと、何故か驚いていた。あたふたしているその子どもの頭にセミがポトン、と落ちてきた。子どもは気づいてすぐ捕まえた。

結局返事も返してくれずに何か喜びながら帰っていく。


まぁ、いいか。俺も帰ろう。




ポケットに紙飛行機を大事にしまって。





読んでいただけること。読んだ結果、暖かい気持ちになってもらえること。登場人物を気に入ってもらえること。なんでもいいです。目を通してくださった全ての人に感謝してます。あ、初投稿です。

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