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雅に時雨れる 作者:秋鹿光久
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 明日だ。もう数時間経てば日付が変わり、僕は答えを出さねばならない。
 この一週間、ライトノベルというものに触れた。僕にとって未知の存在であるこの小説は、思っていたよりも遙かに自由で何にも縛られないものだった。
 僕が今まで純文学にこだわってきた理由がなくなって、ライトノベルという新たに開かれた世界に挑戦してみたいという気持ちも出てきた。
 執筆活動は続ける。この一週間でそれは決意した。今まで以上に自分に厳しく、良い作品を生み出していく。それはもう自分の中で揺るぎないものになっていた。
 とはいえ、この二人一組でライトノベルを書くというのはまた別の問題だった。最初はまったく知らないジャンルだったからと言えたが、今ではにわか程度であるがその世界を知ってしまった。二人一組でやる利点もはっきりわかっている。正直に言えば、断る理由がほとんど無い。しかし、どうしてもそれで上手くいくのかと不安になる。ただ時間をいたずらに使って終わってしまうのではないか。
 僕はどうしてもネガティブに考えてしまう。それは僕だけでなく妹も認める事実。だけどこの時だけはネガティブだとかポジティブだとかそんなものは抜きにして本気で考えたい。彼は真剣に僕の力を必要としているのだから、こちらも真剣に向かい合わなければ失礼だ。信頼はできないが、それくらいの礼儀は払わなければならない。
 メリットの一つは、僕に欠けている創作のセンス――想像力を補えることだ。もう一つはストーリーを考えるのにかかる時間を全て執筆に回せる。もちろん彼が考える時間もいるだろうけど、それでもやはり得意だと自負しているのだから当然、僕が考えるより早くなるはずだ。
 逆にデメリットを考えてみよう。例えば彼がスランプに陥ってしまったとする。それで話が考えられなくなったとき、仮に僕が絶好調な状態だとしても執筆はそれ以上続けられない。僕が代わりに考えてもそれは良いものになり得ない。片方の作業に支障が生じてしまえば、もう片方にも影響する。互いに支え合う代わりに、足を引っ張り合うこともある。つまりは一心同体。
 信頼していなければ成り立たない。僕は彼を信用することができるのか。

 脳内で葛藤し続けていると、小鳥のさえずりが聞こえてきた。
 集中しているとあっという間に時間は経ってしまうようで、さっき穂積さんと別れたばかりだと思っていたら気が付けばもう朝になっている。

「ああ、眠れなかった……」

 でも、覚悟は決まった。
 僕は甘かった。だから可能性が少しでもあるのなら試してみる。どうせこのままでは駄目なんだし、彼も僕を必要としてくれている。

 さあ、行こう。



「一緒にやることにした」
「うん」

 思っていたよりも薄い反応に面食らう。
 元からその答えをもらえるとわかっていたかのような落ち着き。
 その反応が面白くなく、僕は言わないでおこうとしていた言葉を発してしまう。

「半年だ。半年だけ君との共著を試す。その間に駄目だと判断したら今回の件はなかったことにする」
「いいよ」

 再びあっさりとした返答。
 本当にできると思っているのだろうか。それとも無理でも仕方がないとか思っているのか。
 少年の目を見る。黒く大きいその瞳からは激しく燃える闘志が感じられる。
 宮内は本気なのだ。試すとかそんなこと言っている場合ではない。とりあえずは彼を信じるんだ。

「がんばろう」
「ああ、よろしく」
半年ってのは仮です。あとで直すと思います。
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