第5話 悲恋 1
私の胸は、高鳴っていた。
真っ白なシーツの上にトスンと音をたてて座る。
スカートの裾が折れていたのに気付いて
しなやかになおしてから、また胸が高鳴ってしまう。
今日は、心と初デート!!
心は、また変な格好をしてくるのかな?
似合わないタキシード?とか。
普通で良いのにさ…
なんて、
心の格好の事を考えていると
ブルブルブル
私の机の上で携帯が震える。
サブディスプレイには心の名前。
私は震えている携帯を手にとり、
通話ボタンを押す。
『あっ、もしもし、里乃?』
心の声が、携帯独特の音で聞こえた。
「はい、里乃ですよ〜、ご用件は?」
ちょっと冷たく言ってみた。
すると、携帯越しの心は少し黙ってから
『今から迎えに行くね!!』
「うん、待ってるわ。ちゃんと普通の格好してきてよね。」
『普通…?』
「そう普通。絶対。」
心は小さくうんと言い、電話をきった。
ボーっと待受画面を眺める。
特に印象があるわけでもない風景画…
そこに少しだけ、私の顔が浮かぶ。
ってか
どんな顔して、心に会えばいいの!?
今まで心をけなしまくってたし!!
最悪だわ…私。
はぁ…と溜め息を吐くと、画面が白くなった。
「まぁ考えてても仕方ないわね。」
そう言うと携帯をポケットに入れてバックを持ち、髪を手ぐしで軽くとき
階段を降りていく。
ピーンポーン!!
あっ!!
タイミングばっちし。
私は軽い足取りで玄関扉の前まで行き
ガチャ…と開け…。
心じゃない!?
そこに立っていたのは、気弱そうなパーカーを着た少年、その隣にはいかにもお嬢様風な身ぶりをした少女。
まあ、カップルだろうね…。明らかに不似合いだけど…。
すると、お嬢様風な少女が呆れた表情をしながら、口を開く。
「ちょっと、勇。この家、間違ってない?」
お嬢様風な少女が私の方をちらっと見ながら言う。
「ってか、あんた達何?」
私はお嬢様風な少女の態度に腹を立てて
ちょっときつく言ってみる。
すると、パーカーを着た少年が
「こちらは、谷本医院長のお家ですよね。」
あっ、ただの人違いか。
「いいえ、谷本さんの家は私の家の左隣ですよ。」
私は軽く微笑み、隣の家を指差す。
するとお嬢様風な少女が
「ありがとう。」
と小さく微笑み、言ってくれた。
以外に可愛いじゃん。
なんて、思っている間に、彼等は谷本医院長の家に歩いて行っていた。
ふ〜ん。
いいカップルじゃない、羨ましい位。
カップルの背中を見送って想いにふけっていると…
「里乃ぉ〜!!」
心の声が聞こえてきた。
私は走ってくる心に手を振って
「心!!早く〜!!」
と叫んだ。