第4話 約束
私は腫れた眼を休めるため、まだ涙の残ったベッドに横たわる。静かに眼を瞑り、網膜に心を浮かべる。
心は笑ったり、怒ったり、すねたりしている。ただ、心は何も変わらずに、私の中で生きている…。
溜め息が出た。
ハァ…
もう一度。
心にはもう、会えないんだな、と思うと
また、涙が溢れてきた。怒っていた筈なのに…。
私は寝転んだ足元に横たわる薔薇の花束を見た。
花は散っている
「散ったんだよ…
私の恋は…。」
また、涙が溢れてきた…。
馬鹿な私。
私は仰向けになり、枕に抱きつき、目を瞑った。
ピーンポーン!!
家のインターホンが私の家の中に鳴り響いた。
私は反射神経を生かしてとびあがる。
「あぁ〜もぉ!!眠れそうだったのに!!誰よ!!」
私は部屋の中で小さく叫んでから、
ギシギシ音を立てる階段を、ドスドスと降りてゆく
ガチャ!!
「はい、どちらさま…!?」
私は玄関の戸を荒々しく開けて、
目を丸くした。
心…!?
「あっ…里乃。」
心はハァハァと息を切らしながらも、必死に私の名を呼ぶ。
「…近寄らないでって言わなかった?」
心の眼を睨む。
こんなこと、したくないのに…。
「…ねぇ、里乃。ごめんな!!」
「はぁ?」
私は心の謝罪に疑問を抱く。
だから、こう言った。
「ってか、何であんたが謝るの?」
心はうつ向く。
「…どぅしたらいいのか、分からないんだ。里乃が…泣いているのが嫌だった。
俺が泣かせてしまったのかって思って。」
「あんた、ちゃんと、日本語話してくれない?」
心のあまりにも変な回答に顔を歪めながら、腕組みをする私。
「だからさ…その!!
俺、里乃を泣かせたく無いし、里乃を守りたいんだ!!」
言ってる心は思わず赤面する。
心のストレートな気持ちを聞いたのは
今日が初めて。
「…里乃が泣く理由も分からなくて…未熟な俺なんだけど…。
里乃の隣が好きなんだ!!これだけは、はっきりしてる!!」
心の気持ち、痛いほど胸に感じる。
私もね…
心が好きなの…
気付けば私は泣いていた。
組んだ腕は、そのままで。これじゃ、腕組みの意味が無いわね。
「里乃…?」
「ねぇ、心…約束していいかな?」
「何?里乃?」
「これからは、私を泣かせないで…絶対。
私、弱い自分が嫌いなの。」
「うん、里乃!!約束する!!」
「次私を泣かせたら、私があんたを泣かすわよ?」
「うん!!やっと、君と居られる…
ああ!!マドモアゼル!!明日はダンスでどうだい?」
あは、いつもの心に戻った。
馬鹿な心に。
でもこの心も好き。
真剣な心も好き。
「ちょっとダンスはねぇ〜馬鹿だし。どうせなら、遊園地でも行こうよ!!」
「…うん。里乃が隣に居てくれるなら何処でも!!」
私達は、明日の約束を交した。
さぁ!!
これからはずっと2人!!
明日はどんな日なのかなぁ?
あっ、そういえば
あの女は誰だったんだろ?
まっいっか!!
夕暮れ近くなっていた。そんな空を2人で見上げる。
明日、楽しみ!!