第3話 すれちがい
バタン!!!
私は勢いよく、玄関の扉を閉めた。
その場に崩れ落ちる。
涙が玄関の床を湿らせ…
次から次へと
雫は落ち続ける。
「心の…馬鹿!!馬鹿だって思っていたけれど、ここまで馬鹿だとは思わなかったわ!!」
怒りを涙に変えた…
私はその涙を見て…思い出す。
最後に泣いたのは
いつだったのだろう?よく考えてみれば
父の、母の、秀哉の涙はあまり見たことが無い…。
泣くのは恥ずかしい事だから?
私は…
泣くのが嫌だった。
弱くて、弱くて
感情だけで溢れる涙が嫌いだった。
でもこのままじゃ
辛いよ…
こんな感情、初めて。
だから…
「うわぁ〜ん!!」
私は玄関の床に崩れ落ちた。
ザァと流れでる涙を
必死に抑えて…
…一方、心。
公園で、ブランコに座りゆらゆら揺れる。
思想は止まらない。
「ハァ…。」
心は、里乃が走りさってから、必死で追い掛けたらしいが、途中、信号に引っ掛かり、見失ってしまった。
そのせいか、さらに里乃のコトバが心の頭を横切ったり、止まったりしている。
「大嫌い…か。」
ゆらり…
少しブランコを揺らしてみた。
気をまぎらわすため。そしてうつ向き
「なぁ…?姉貴?」
心は自分の足元にうつる影を見て
ボソリと呟く。
「あっ!!」
姉貴…と呼ばれた女は声をあげる。
「驚いた!!心君、私の事気付いてたのね!!」
「まぁ…影見たらすぐ分かるし…。」
心は振り向き、姉、結女を見る。
「心君、やつれてるわよ?」
結女は心の青ざめた顔を心配そうにのぞく。それから、数秒後
結女は重たい口を開く。
「あのね、心君。
私があんな事、したから彼女…怒っちゃったの?」
そう…
心に飛び付いてきた女は、姉だったのだ。
昔からじゃれあい、寄り添い暮らしてきた彼等にとって
当たり前の事だったのに。
「私が、あんな事しなかったら、彼女…。」
「いや…姉貴のせいなんかじゃないよ…。」
―どうして、里乃。
どうして泣いたんだ?
君の、涙は
悲しかった…。―
…
2人の間を沈黙がながれた。
ふと、結女の髪がヒゥ…と吹いた風に
揺らされる。
それをキッカケに
「姉貴、俺、彼女にあやまってくる!!」
そのコトバを叫ぶと
心は、里乃が去っていった、涙の残る道を激走していった。