第1話〜時折見る夢〜
「俺はヒーローじゃない。
勇者でもない。
人気者でもない。
特別足が速いわけでもない。
手先が器用なわけでもない。
信頼されてるわけでもない。
俺は・・・なんなんだろう・・・」
考えても仕方のないことを俺はいつも考えている。
「・・・・・。・・・・。・・・・ッ」
何かが俺を呼んでるような気がする。
「・・・・ッ。・・・ま」
俺はその“空間”から追い出された。
「・・やま・・・・みやま」
その声がどんどん大きくなってくるのを感じた。
「バシッ!!」
何かがたたかれた音だった。
「神山!!」
身震いをする俺。
「何が起きた・・・?」
冷静に判断した結果すぐに答えがでた。
「・・・授業中か。。。」
「神山、146ページから読みなさい」
「・・・先生、教科書がありません」
「そうか。なら廊下に立っとけ」
嫌がることなく教室を出る俺。
こんなこともなれたらなんとも思わなくなる。
恐ろしいことだ。。。
「おう、やっと起きたか」
ふっと横を見る。
そこには先客がいた。
「トラ、お前も立たされていたのか」
先客は爽やかな笑顔で答えた。
「でも、眠り始めたのはお前が先だぜ」
言われなくてもわかっている。
なんてったって授業が始まる前から眠っているからな。
そんな他愛もない会話をしていると、授業の終わりを告げるベルが鳴った。
他の教室から数人出てくるなか、俺たちの教室からはだれも出てはこない。
中からは、怒りにも似た声が聞こえてくる。
おおかた理由はわかっている。
たぶん・・・いや、絶対に俺たちの悪口を言っているのだ。
いつものことだから仕方がない。まあ、俺たちが悪いのだが・・・
「ガラッ」
戸の開く音がし、先生が出てきてこちらを睨んでいる。
「神山、虎谷。職員室まで来なさい。」
逆らわずに職員室に向かう2人。
いつものことだ。
また、職員室で威張り散らすつもりであろう。
・・・・・・・・。
職員室にはすでに数名の先生が次の授業の準備をしていた。
中にはそそくさと職員室を後にする先生までいた。
仕方がない。この先生の声の大きさはハンパないから。
「神山、虎谷。何度言わせたらわかるんだ!!・・・・・・」
いつもと同じ台詞から説教は始まった。
「少しはアレンジしろよ・・・」
なんて言ったら説教の時間が延びるだけだ。
そっとしておこう。
隣のトラも聞いてるのか、聞いていないのかわからない顔をしている。
・・・聞いていないな。
「・・・・・・・・・・・・」
声の調子が衰える事はない。
その点についてだけは褒めてもいいとおもう。
相変わらずトラは眠そうな顔で何かを見ていた。
たぶん、無意識のうちに。
紹介しておこう。
俺の隣で眠そうな顔をしているのはトラ。
本名 虎谷 良輔。
とても大柄な体格をしていて、たぶん学校一の力自慢だ。
いいやつなんだが、誰かが喧嘩ををはじめるとすぐに乱入してしまう。
もちろん、トラの圧勝で終わってしまう。
だれもトラを止められることが出来ないから。
そんな訳もあってか学校では喧嘩が滅多に起きることはないのだ。
んで、俺たちに説教しているのはハゲ丸。
本名 春川 丸尾
俺たち3年の学年主任である。
口うるさくて有名だ。
女房には逃げられたという噂が立っている。
そして、俺はカオル。
本名 神山 薫
一般的な中学生だ。俺はそう思ってる。(違うのかもしれないが・・・)
そしてここは、町立光中学校。
この学校は山の中にある田舎の学校だ。
創立150年も経とうとしているかなり古臭い学校だ。
生徒数116名という小さな学校だが・・・
「この学校を日本一の中学にする!」
とか、
「この学校に誇りを持て!」
とか、先生はいつもそんなことしか言わない。
こんな生活に飽き飽きした俺は一人、街の学校に入学することを決意する。
創設5年目の学校で、特に校則に等にうるさそうなイメージはない。
電車で1時間はかかるがそこに行きたいと俺は思っていたので受験をした。
合格発表まであと3日と迫っているがたいした緊張をしているわけでもない。
なにせ私立の高校だからね。
「神山ぁ!!」
ビクッ!!
俺はまた身震いしてしまった。
「話を聞いているのか!?」
「・・・すいません」
先生がブツブツ言っている。
また長くなりそうだ。
「虎谷は教室に戻っていいぞ」
「・・・」
無言で立ち去る虎谷。
どうやら説教が長くなったのは俺だけのようだ。
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