Paradiso(6/7)縦書き表示RDF


Paradiso
作:炎



傲慢 2


 大きな重たい扉を開き、真っ赤な絨毯の上を歩く。円柱と円柱の間には鎧が並び、今にも動き出しそうに構えている。
 ジャラジャラと鳴る鎖の摺れる音と、城の外から聞こえる動物や人の声だけで他はしんと静まり返っている。不気味という言葉がぴったりだ。
 まるで人の住む場所ではないと感じるほどだ。


 そのまま暫くすると、見えてきたのはまた下り階段。
 長く続くそれは地下道へと逆戻りをしている感覚に陥る。


 「どこ行くんだ…?」
 「牢屋だろ」


 読唇術。
 音として伝えるのではなく、口の動きだけで相手に伝える術である。

 ルクソードの読みは当たっていた……というより、当然のことだろう。たどり着いた先は、紛れもなく牢屋。
 罪人を一時的に拘留しておくための場所。

 ここMrenマレン Ticaティカではすぐに判決が下るため、牢の数も少なく罪人はもっと少ない。
 皆恐怖しているというのもあるが、一番の理由としてはやはり洗脳が挙げられるだろう。幼少時のすり込み程怖いものはない。
 最初に教えられたことが絶対になり、それを疑うことは滅多になくなる。何故ならそれが物事を判断する基盤となるからだ。


 「汚ねぇ……」
 「当たり前だ。牢屋だぞ…? 罪人に綺麗な寝床はいらねぇ」
 「でもよぉ…! 俺は清潔にしてたい人間なんだ!」

 牢屋には、ルクソードだけ入れられた。

 「あ…?」
 「アルだけ?」
 「お前には別な場所で尋問だ」


 妖しい眼の動きを見せたルクソードを、ルイは見た。普段と違う雰囲気を纏い、微かにだが笑みをこぼした。
 普通の神経を持つ奴なら怯えるところだろうが、ルイはそれを見て喜んだ。

 「ハハッ…」
 「何が可笑しい!」
 「いやいや別に、何でもないっス!」

 そう言うルイは首の鎖を引っ張られ、牢を後にした。
 残されたのは、中級兵二人とそれをまとめる総督そうとく。ルイと共に出て行ったのは、下級兵二人と上級の近衛兵このえへい三人。
 それが今の現状――…



 「なぁなぁ、兵隊さん。俺、これからどこ連れてかれるの…?」
 「城では静かにと言ったはずだ。」
 「でもでも気になる〜!」
 「まず……その女々しい口調をどうにかしてくれないか…?」

 イラつき気味の近衛兵。無表情の中にも確かな憤りを感じる。それをわからないほど鈍感でもないルイ。彼はわかっていて怒らせているのだ。
 共に歩き続ける兵たちも、ピリピリした空気を感じているのか強張った表情が見え隠れしている。
 ルイにとってはそれがどうしようもなく楽しくて楽しくて仕方がなかった。
 今はその感情を抑えた方がいいというのもわかっていた……でも楽しすぎてストップが効かない。ルイの中でも葛藤かっとうしていた。


 その頃ルクソードは備え付けてあったベッドに横になり、中級兵二人に問いを投げかけた。
 「どこから情報が入ったんだ?」
 「………。」
 だんまりを決め込む兵士に、ルクソードは無関心。
 ルイがいなくなった途端に静かになり、場が持たなくなったのだ。
 いたらいたで煩くも感じるが、いなければいないで少しの寂しさがある。
 (あいつも意外と役に立ってたんだな……)


 「出てよろしいですよ。」

 隊を纏める総督は、あり得ない口調で出るよう言った。
 ルクソードはニヤニヤと笑い、立ち上がり、声を出した。遅いぞ…? と。
 兵たちはそのやり取りに目を丸くし、貴様何をしたと叫びだす。しかし牢を出たルクソードの動きには対応できず、次の瞬間には膝をついた形となっていた。
 兵の頭を後ろから押さえつけ、動けないように力を込める。それでなくても圧倒的なスピードについていけない兵二人は、途方にくれていた。
 嗚呼…これほどまでに己は無能なのか……と。


 「お前は俺の下僕になってもう。……そうだな、お前はとりあえず――…」
 とりあえず――…。そう言ってすぐ、右側の兵の首には強い衝撃が走った。間髪入れないほどの、見事な手刀しゅとうだ。
 隣で崩れる兵の姿を見て、震え上がる。頼みの総督は敵であるはずのルクソードに従い、頼れる者は己だけとなった状況で一体何ができるだろうか。
 そんな兵を見たルクソードは不適に笑い、こう漏らす――…



 「――…命乞いでもするか…?」

 












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう