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死ネタ大量
苦手な方はご注意を。(グロも時たま)

Paradiso
作:炎



狂人 1





 「――…死ね」



 悪態を付きながら、男はベッドから身を起こし頭を掻いた。
 「またかよ……」
 泣きじゃくる少年……その手には、鋭利な刃物……眼前には血塗れの両親……
 脳裏に蘇る過去の映像は、何かを暗示するかのように、鮮明に映し出された―――…



 深夜。
 スラム街は、月明かりをも遮るほど入り組んでいた。
 慣れた物でも時折迷ってしまう道程は、逃げるものにとってはそう……天国であった。


 「そろそろ、か」
 ルクソード・アルドネット・ヘル、21歳、男。漆黒のような髪に炎の如く紅い瞳に、未だ少年を思わせる顔立ちをした暗殺者。
 黒で統一された服は闇と同化し、人を襲うにはもってこいの格好だ。


 スラムの一角にある小さなボロ屋に、ルクソードはいた。
 片隅に置いてあるベッドから降り、向かいの棚へと足を運び、獲物をとる。使い慣れた愛刀、シズナ。手元のスイッチ一つで刃が振動し、殺傷能力を増幅させる。堅い岩も、軽々粉砕することが可能だ。
 「そこで何してる……」
 不意に発せられる声は男らしく、落ち着いていた。が、その声が向かう先には、何も見当たらなかった。


 「あたいを買っておくれよ、ルクソードちゃん。」
 リターニャ・バンデンゲージ、29歳、女。妖艶な容姿を持ち数多の男どもを抱いてきた、娼婦 兼 情報屋。


 「たまにはあたいに気持ちいいことしておくれよ……」
 「気色悪いことを言うなょ。…お前は買わないが、お前の持つ情報は買ってもいいぞ?」
 「……素っ気無いねぇ。」
 男――ルクソード以外誰もいなかった部屋に現れたリターニャは、我が物顔でベッドへと腰掛けた。敗れた裾から覗く足は、男を誘惑するかの様に曝している。そして前髪で隠された右目が妖艶さを醸し出し、魔女の様な微笑みは幾重にも重なる嘘を隠していた。
 ルクソード同様黒に統一された服はボロボロだが、それもまたリターニャの魅力の一つとなっている。頭から被る紫のスカーフは、顔を隠すためか、はたまた別の何かなのか……。


 「いい男が、女を知らないなんて笑えるねぇ……。しかもこんな辛気臭い部屋で寝て……新しく家を建てたらどうだい? 金は腐るほど持ってるだろぅ? 王宮よりも見事な城だって夢じゃないだろうに……」
 「城なんか建ててどうすんだょ。何の意味もない。」
 「確かにそうだけど……金持ちってのは自慢が趣味だろう? お前もその手の部類の……」


 手が…口が止まった。次の瞬間、リターニャは護身用とは思えない程の銃を一丁構え、ルクソードは手入れが終ったナイフを握り締めた。
 「止めておくれよ、巻き込むのは! あたいはただの娼婦だ、殺しはやらないよ。」
 「そんな厳ついモノ構えながら言う台詞か? ……とそれより、援護頼む」
 「了解」


 ヒュッ……と風を切る音がした。ルクソードの頬には一筋の紅い血が滲み、壁には短刀が突き刺さっていた。
 そして一発の銃声。
 何が起きたかわからないまま、一人の男は死に絶えた。
 「流石あたいだ! 狙いは外さないねぇ。」
 「……結構なお手前で。」
 「一人300万ヒルだ。後で贈っとくれ、ルクちゃん。」


 気色悪い呼び方するなと言いながら、ルクソードは窓から屋根へと上った。するとそこには三人の黒服に身を包んだ男が居て、各々の武器を構えていた。
 三人はルクソードを見るや否や総攻撃を仕掛けた。が、男どもはうめき声と共に崩れ、銃声の余韻だけが残った。


 「おい。」
 「やっぱりあたいは狙いを外さないねぇ。今日は調子がいいみたいだ。」
 満面の笑みを零し、自惚れている顔。自分がどうしようもなく可愛くて、他のモノに目が向いていない状態で、ルクソードの声を無視する。


 「おい!」


 話を聞かないリターニャに対しての苛立ちを軽く抑え、声量を多少上げてもう一度呼んだ。
 「何だい、ルクソード。さっきから煩いよ? あ…そうそう、四人共あたいが殺ったんだ、1,200万ヒル、しっかり貰うよ!」
 返事をするリターニャをじっ…と見つめ、悟ることをルクソードは待った。が、それは無駄に終わり、ちょっとした間をおいてから声を出した。「一人くらいは生かすだろ?」と。
 「あ」
 「報酬は無しだな。後、片付けといてくれ、俺は仕事だ。血は綺麗に……綺麗に拭けよ! 鉄の臭いは嫌いだ。」
 自分の犯したミスを後悔し、リターニャはしぶしぶ頷き窓から出て行った。それに続きルクソードも、闇へと消えていった。

 












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