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Chapter:01 日常
Episode:09
「イマド!」
 後ろへと振り向く。
 出てくる人に混じって、学院に入学した時からずっと目にしている姿があった。

「悪りぃな、わざわざ迎えに来てくれたのか?
 あ、先輩たち、こいつのお守してもらってすいませんでした」
 イマドが頭を下げる。

「お守りをしていたわけではありませんね。まぁ、手がかかったのは確かですが」
「ごめんなさい……」
 いつも迷惑ばかりかけている自分が情けなくて、また涙がこぼれた。

「ですから、もう何度も言ったはずですが」
「先輩、言うだけ無駄ですって。こいつ、言い返す代わりに泣くんですから」
「……なるほど」
 隣でやり取りを聞いていたシルファ先輩が、納得したようにうなずいた。

「タシュアの毒舌の代わりに、泣くわけか」
「シルファ、何が言いたいのです」
「あ、いや……」

 先輩が口篭もる。
 タシュア先輩の言葉には、シルファ先輩も言い返せないみたいだった。
 もっともタシュア先輩に平気で言い返せる人がいるとは、ちょっと思えない。

――母さんはやったらしいけど。
 ただ母さんの場合は、言い返すどうこう以前に常識を無視しているから、迷惑のかけ通しだったんだろう。

「え〜と先輩、取り込み中申し訳ないですけど」
「別に取りこんでなどいませんが」
 この言葉にも、先輩は見事に切り返す。
 でもイマドはけろっとしているから、こっちもある意味凄いかもしれない。

「それはともかく、俺、昼メシ食いに行きたいんですけど」
「どうぞ」
 一言で終わって、一瞬呆然とした。

「あの、先輩たちは食べないんですか……?」
 信じられないほど食べる――イマドもだけど――タシュア先輩が、お昼抜きで持つとはとても思えない。

「誰も食べないなどとは言っていません。イマドに食べに行っていいと言ったんです」
「ご、ごめんなさい!」
 鋭く言われて、思わずあたしはすくみ上がった。
 また涙があふれてくる。

「――シルファ先輩、これ何度目です?」
「たぶん……午前中に一緒になってから、10回は超えてると思うが……」
「なんだ、まだ記録更新ってわけじゃなさそうですね。
――ほら、顔上げろって。あとでお土産やるから」
「あ、うん……」

 言われてあたしは顔を上げた。
 不思議だけど、イマドの声を聞くと落ち着く。

「物でつられるとは、まさに1年生ですね」
「………」
 またタシュア先輩に鋭く言われて、自分が情けなくなった。
 涙が止まらない。

「タシュア……」
「先輩……」
 イマドとシルファ先輩とが、ため息をついた。

「あ〜もう、ともかくメシ食いに行きません? こんなとこで突っ立ってるのもなんですし」
「そうだな。
――タシュアも行くだろう?」
「シルファがそれでいいのでしたら」
 気が付くと、みんな一緒に食事することになったらしい。




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