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Chapter:01 日常
Episode:08
「ルーフェイア、どうかしたのか?」
「あ、いえ、なんでもありません」
 黙りこんでしまったあたしを心配して、シルファ先輩が声をかけてくれる。

「それならいいんだが。
――それにしても今日は、ずいぶん暖かいな」
「そうですね。
 あ、だから先輩、スカートなんですか?」
 あたしがそう言うと、シルファ先輩が困ったような顔をした。

「あの……?」
 またあたし何か、悪いことを言っちゃったんだろうか。

「すみません、あたし……」
「あ、いや、そうじゃなくて……その……見ないでくれないか……」
「え?」
 見ないでって言われても、どうすればいいんだろう。

「その、目をつぶっちゃうと……歩けないんですけど……」
「そういう意味じゃないんだが」
 あたしの言葉が可笑しかったみたいで、シルファ先輩が笑った。

――素敵だな。
 シルファ先輩は本当に大人の雰囲気で、とても憧れる。
 今もワインレッドのシャツに、もう一段濃い色のひとつボタンのジャケット、それに黒に近いグレーのタイトスカート――それも前スリット――を、さりげなく着こなしていた。

 けど本当に、シルファ先輩のスカート姿は珍しい。覚えているかぎりでは、ドールでのドレス姿以外じゃ初めてだ。
 それもドレスを着てもらうのに大騒ぎ(?)するほど、先輩はスカート類は大嫌いだった。

「だから、見ないでくれないか……」
「え、でも……」
「――やれやれ」
 シルファ先輩の言葉に困っていると、タシュア先輩から呆れられてしまった。

「すみません……」
「ですから、あなたが謝る事ではないでしょう。
 これで何度目だと思いますか?」
「――ごめんなさいっ!」

 思わず下を向いて、泣かないように唇を噛んで――でもやっぱり、涙がこぼれた。
 ここへしゃがみこんでしまいたくなる。
 けどそうやってても、絶対にまた怒られるだけだから……。

「その、まぁ、とりあえず行こう。イマドが待っているぞ?」
「あ、はい……」
 シルファ先輩がまた、あたしをうながした。

 そのままメインストリートを真っ直ぐ行く。この先は右へ行けば駅、左の坂を下れば公園だ。
 不意に潮風が吹きぬけた。
 碧い海から駆け上がってきた青い風。

 やっぱりあとでイマドに頼んで、海を見ようと思いながら、あたしは突き当たりで右へと折れた。
 駅前の広場は暖かいせいなのか、けっこう賑わっている。だけど駅から出てくる人はいないから、まだ列車は着いていないみたいだった。

「どうにか間に合いましたかね?」
 同じことをタシュア先輩も言う。

「あの、そうしたら、ここでいいですから――」
「ルーフェイアっ!」
 先輩たちにお礼を言いかけたところで、聞き慣れた声が重なった。




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