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Chapter:01 日常
Episode:04
「いえ、私はけっこうです」
「あたしも、もう……」
 とりあえずは2人とも、満足したようだった。

「そうか。そうしたら私はこれを片付けるから、その間にお茶も飲んでおいてくれ」
 たいした量ではないが、一応洗い物がある。
「シルファ、それではあなたが食べられないでしょう」
 そう言うと、最後に残っていたコーヒーを口にして、すっとタシュアが立ち上がった。

「洗っておきますから、食べてはどうです?」
「すまない」
 流しの前にタシュアが立ち、入れ替わりに空いた席へ座る。

――これならもう、この子は泣かされないな。
 そんなことを思いながら、フォークを手にした瞬間。

「シルファ、私は別に泣かせるようなことは言っていませんよ」
 見透かしたかのように、すかさずタシュアが突っ込んできた。
「あ、いや……」
 思わず返答に困る。

 当のルーフェイアの方は、目を丸くして彼が洗い物をする様子を眺めていた。タシュアが私に代わって洗い物をするなど、考えもつかなかったらしい。

 だがこの学院では孤児が多いせいもあって、自分のことは自分でやるのが普通だ。男子でも例外ではない。
 むしろルーフェイアのように、自分でなにもしなくとも困らなかったという方が、ずっと稀だろう。

「ルーフェイア、何をそんなに見ているのです」
「ご、ごめんなさいっ!」
 背中を向けたままのタシュアに鋭く言われて、この子が縮こまった。
 そして彼が振り返る。

「以前もそう言ったかと思いますがね」
「………」
 ますます身を縮めたルーフェイアの瞳から、何度目かの涙がこぼれた。
 タシュアの暇つぶしなのは分かっているが、これでは埒があかない。

「その、タシュア、ルーフェイアが食べ終えるまで……泣かせないほうが……」
 柔らかな金髪を撫でてやりながら、タシュアに言う。
 だいいちタシュアの毒舌も、泣かせるのが目的なせいで、言っていることはかなりいい加減だ。

「泣かせているわけではないと、先ほども言ったはずですが?」
「でも、これでは間に合わないだろうし」
 いくらなんでも泣かされ続けて遅れるのは、可哀想だろう。

「やれやれ……」
 タシュアはそうため息をついたが、今度はもう何も言わなかった。またこちらに背中を向けて、洗い物の続きを始める。

「ほら、ルーフェイア、早く食べてしまわないと」
「……はい……」
 顔を上げたこの子の涙をぬぐってやりながら、急かす。

「おいしいか?」
「はい」
 この後はタシュアが黙ったこともあって、順調だった。どうにか時間前に食べ終わる。
 さすがの彼も、遅刻させる気はないのだろう。




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