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Chapter:04 不審
Episode:39
「あの――」
「うわっ!」
 いきなり声をかけたのがまずかったのか、ひどくびっくりされた。
「す、すみません、おどかすつもりじゃ……」
「べ、べつに僕は何も……」

――この先輩、何を慌ててるんだろう?
 何か困ることがあるとも、思えないけど……。
 やりとりに気づいて、シルファ先輩も戻って来た。

「大丈夫か?」
「あ、はい」
「そうか。
――何か、用なのか?」
 シルファ先輩が尋ねると、この男の先輩がすごい勢いで首を振る。

「なんでもない、なんでもないですっ!」
 それから猛スピードで、駆け去ってしまった。

「――? なんだ、あれは?」
「なんでしょう……?」
 また2人で首をかしげたけど、やっぱり理由は分からずじまいだ。

「よく分からないが……ともかく、食べるものを買って帰らないか」
「そうですね」
 あの先輩のことは、保留にする。

「そう言えば、ずっとルーフェイアが言ってた気配は……あれとは違うのか?」
「はい、違います」
 きっぱりとあたしは答えた。あの気配はもっと殺気立っていて……ともかく、間違えようがない。

「そうか。
――ああ、そこの店が、美味しいんだ」
「ほんとですか?」
 シルファ先輩に連れられるまま、ちいさなスタンドの前まで来る。
「うわぁ♪」
 確かに店の前には、美味しそうなサンドイッチの写真がたくさん貼られていた。

「どれにしよう……?」
 ひたすら悩む。
 あたし自身は、どれでもいいんだけど……。
 しばらく悩んでいると、シルファ先輩が待ちくたびれたみたいで注文を始めた。

「すみません、これと、それと……」
 タシュア先輩の分だけじゃなくて、イマドの分まで頼んでくれる。
「これだけあれば、足りるだろう?」
「あ、はい」

 なにしろ先輩が頼んでくれたサンドイッチは、5人前くらいある。
 それを少し待って作ってもらって、持ち帰り用の箱に詰めてもらった。

「早く帰ろう。きっとタシュアもイマドも、お腹を空かせているぞ」
「はい」
 急ぎ足で病院まで戻る。

「タシュアが、逃げ出してないといいんだが……」
「どうでしょう……?」
 こればかりは、行ってみないと分からない。
 ただタシュア先輩は「約束する」と言っていたから、待っているんじゃないかと思った。

「診療が終わってるのに……人が、多いな」
「お見舞いの人じゃないですか?」
 シルファ先輩の言うとおり、確かに病院内は人が多い気がした。けどここは500床近い大きな病院だから、お見舞いの人だけでもかなりの人数になるんだろう。

 先輩の病室にいちばん近い昇降台まで行って、ボタンを押した。
 病院はどこもそうだけれど、2台並んだ昇降台が2箇所にあるから、あまり待たない。
 そのまま他のお見舞いらしい人たちと乗り合わせて、一番上の7階――8階は立ち入り禁止――で降りた時。

「――あっ!」
 急に声をあげたあたしに、シルファ先輩が怪訝そうな顔をした。

「どうしたんだ?」
「その、あたし……飲み物、頼まれてたのに……」
「そういえば、そうだったな」
 先輩も思い出す。

「あたし、今から行ってきます」
「だが、ここまで戻ってきて……」
「でも――」
 イマドががっかりする顔を、見たくなかった。

「あの、やっぱり行ってきます!」
「そうか?
 そうしたらイマドには、私から言っておこう」
「すみません、ありがとうございます」
 お礼だけ言って、あたしはもう一度下へ向かう昇降台へ乗り込んだ。




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