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Chapter:01 日常
Episode:02
「シルファ、おそらくこのケーキのことです」
 考えこんでいる私へ、タシュアが説明した。

「このケーキって……これはチョコレートだぞ?」
 間違ってもイカ墨を入れたりはしない。
 だいいち、見れば普通は……。

「……チョコレートって、ケーキに使うんですか?」
――この子は例外だったらしい。

「ルーフェイア、チョコレートが何かは知っていますか?」
「携帯食のキットによく入ってる、黒くて甘くて四角いのですよね?」
 問いにルーフェイアは、無邪気に答えた。しかも「美味しいから好きだ」と言う。
 やれやれとタシュアがため息をついて、この子がきょとんとした顔になった。

「あの、違うんですか……?」
「間違ってはいないんだが……」
 どう説明したものか。

 悪気は無いのだが、どうもルーフェイアは一般常識に疎い子だった。
 知識が必須だった戦闘関係と医療・語学、あとはなぜか歴史に偏っていて、その他の事となると不安なほどに知らないのだ。

「ともかくチョコレートは、もともとはお菓子だったんだ。
 ただそれが非常食に向いていたものだから、キットに入れるようになっただけで……」
「あ、だからおいしいんですね」
 とりあえず納得したらしく、この子がうなずく。

「その調子で、よく今まで平気でしたね」
――いけない。
 せっかく泣き止んだルーフェイアが、また泣き出しそうになった。

「と、ともかく食べたらどうだ? お茶でも淹れるから」
 慌ててまた間に入る。

「コーヒーにしていただけますか?」
「分かった。
――ルーフェイアは何がいい?」
「あ、あたしはなんでも……」
 およそ自己主張とは縁のないこの子は、予想通りの返事だ。

「紅茶でいいか?」
「あ、はい」
 それにしても保護者役のイマドがいない分、ルーフェイアを泣き止ませるのは大変だった。
 なんでもこの子が言うには、いつもこの時期になるとイマドは、親戚のいるドールへ母親のお墓参りに帰るのだそうだ。

「そう言えばイマドは、いつ帰ってくるんだ?」
 なんとはなしに訊く。
「えっと、今日の午後帰ってくるんです」
 嬉しそうにルーフェイアが答えた。
 当人は全く自覚していないのだろうが、やはりイマドの傍がいいらしい。

「じゃぁこのあと、ケンディクまで行くのか?」
「はい」
 その答えを聞いて、私は少し考えこんだ。

「そうしたら……ケンディクまで一緒に行くか?」
 ルーフェイアの表情が一瞬だけ輝く。
 ただ遠慮深いこの子は、またすぐにうつむいてしまった。

「どうした?」
「いえ……その、迷惑、ですから……」
「いいんだ」
 きっぱりと言い切る。

「今日はもともと、このあとケンディクへ出て、買い物をしようと思っていたんだ」
 こう口添えすると、ようやくルーフェイアが安心した顔になった。



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