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Chapter:01 日常
Episode:10
「ルーフェイア、泣くの一時停止な。メシ食いに行けねぇから」
「う、うん」
 急いで涙をふく。
 いつも「お腹がすいた」と言ってるイマドを待たせるのは、いくらなんでもできなかった。

「シルファ先輩、どっかお勧めのとこありません?」
「そう言われても……」
 話を振られたシルファ先輩が考えこむ。

「先日新しい店がオープンしたとか、言っていませんでしたか?」
「だが、あそこはけっこう高いし……」
 どうやらそのお店というのは、それなりに高級なところのようだった。

「あの、でしたらあたしが、お支払いしても……」
 何を考えてるのか知らないけれど、あたしの口座には毎月母さんが、かなりの額を振りこんでいる。

――使い道、ないのに。
 服は学院の制服で大半は用が足りるし、学用品はたいした金額にはならない。
 あとはせいぜいケンディクへ出た時に使うくらいだから、けっきょくお金は貯まる一方だった。

「支払うって、4人分をか?」
 なぜかシルファ先輩が慌てる。
「この様子ですと、いつもミルドレッドたちに、支払わされているのでしょうね」
「え、でもみんなが、お金がある人が……払えばいいって……」
 ケンディクに自宅があるミルはともかく、シーモアやナティエスは学院からの支給だけだから、外食のお金まで毎回払っていたらとても持たない。

「まったく。人の言うことを疑わないのも、ここまで来ると困ったものですね」
 けどタシュア先輩の言い方だと、とても悪いことをしてしまったみたいだった。
「あの、あたし何か悪いこと……?」
 心配になって尋ねる。
 イマドとシルファ先輩とが顔を見合わせた。

「まるっきり悪い……とは言わないだろうが……」
「っつーか、あの連中に見事に言いくるめられたような……」
 2人は理由が分かっているみたいだけど、あたしにはさっぱりわからない。

「ねぇ、何が悪いの……?」
「えーと、どう説明すりゃ……って、後じゃダメか? 話が込み入っちまうし、腹減ったし」
「あ、ごめん!」
 なんの話をしていたのか思い出して、あたしは謝った。
 これじゃいつまで経ってもお昼にならない。

「まぁどちらにしても、ルーフェイアが払わされる気もしますがね。
――ともかく今日は私が出します。後輩に払わせるわけにはいきません」
「え、でも、大丈夫なんですか?」
 シルファ先輩が躊躇うようなところで4人分も支払ったら、かなりの金額になるんじゃないだろうか?

 と、タシュア先輩があたしに視線を向けた。
 思わずすくみ上がる。

「出来ないことを私は言いませんよ」
「でも……」
 確かに先輩は嘘は言わないけれど、高額になった場合が心配だ。
 けどそんなあたしへ、シルファ先輩が言葉をかけた。

「ルーフェイア、私もタシュアも上級だから、ちゃんと学院から給料をもらっているんだ。
 だから心配しなくていい」
「あ……」
 初めて思い出す。

「その顔だと、完全に忘れていたようですね」
「す、すみませんっ」
 見透かされたような言葉に、またあたしは小さくなった。
 泣きたくなる。

「――早くその店に行きません?」
「――そうだな」
 イマドとシルファ先輩とがそう言って歩き出して、あたしも慌てて後についていった。




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