偶然という名の奇跡2〜社長令嬢のジレンマ〜(35/41)PDFで表示縦書き表示RDF


偶然という名の奇跡2〜社長令嬢のジレンマ〜
作:城ノ内 ジョウ



αー17


いったいあたしには何ができるのだろうか。 
 この自問自答にあたしは答えを出せずにいた。この状況を脱するにはいったい何をすればいいのだろうか。全く思いつかなかった。
 あたしはいつも放課後遅くまで残っていた。それも意識的にではなく、気が付いたら外はもう日が暮れていた、という感じである。どうすれば。どうすればいい。解らない。何一つとして解決策が導き出せない。自分の無能さと弱さにはほとほと嫌気がさす。
 山内にあたしが原因だと言われたあのときから、解りやすい物理的ないじめはなくなっていた。だが、誰とも話せないのは何よりもきつい。それも誰にも相談できない。あたし一人で解決しなければ行けない状態なのだ。なのにこの現状・・・。
 でもあたしがこうして我慢していれば、これ以上犠牲者は出ない。あたしが犠牲になれば。
 今日はもう帰ろう。そういえばあたしは放課後遅くまで残っていては不自然なんだ。嘘とはいえ成瀬たちには忙しいと言ってあるんだ。さっさと帰らないと。
 帰り支度をしていると、教室の外に足音。こんな時間に教室に来るやつなんてほとんどいないはずだ。少し興味はあるが、あたしにはどうしようもない。誰であろうと話すことなどできないのだから。
 そう考えて帰り支度に専念しようと思った矢先、この教室の前で足音が止まり、直後ドアが開いた。
「やあ。まだいたんだ」
「・・・。何の用?あんたと話すことなんて何一つないんだけど」
「そう言わずに。ところで日向さんて、誰かにいじめられてるの?」
 は?何を今更。こいつは頭がいかれたのか?それなら大歓迎だが、それにしては様子がおかしい。この教室にはあたししかいないのに、こいつは猫かぶっているんだ?あたしにはとっくに正体を明かしているじゃないか。しかもその柔らかなセリフとは裏腹に表情は険しく、禍々しく歪んでいる。
「そのことについてこの二人が話ししたいらしいんだ」
 その言葉とともに背中から二人の生徒が登場した。その二人は・・・。
「初めまして、日向さん。私はTCC部長の岩崎です。こちらは成瀬さんです。ある人からクラスメートから不当な扱いをされているから助けてやってくれという依頼を受けて、参上仕りました」
「なんで・・・」
 あたしは二の句がつなげなかった。なんでこの二人が山内と一緒にいるんだ?そいつはあたしの敵なのにどういうこと?
「山内さんには協力者として、あなたのクラスの情報を提供していただくことになりました」
 協力者?こいつが?一番選んじゃいけないやつだ。どうして、よりによってこいつなんだ。
 あたしは舌を抜かれてしまったように全く口が利けなくなってしまった。頭も回らない。いったい何が起こっているの?どうしてこんなことになってしまっているの?
「もう少し時間があるときにお会いしたかったのですが、どうやら日向さんに関わった人を傷つけるという内容のようなのでこんな時間になってしまいました。申し訳ありません」
 そこまで推測できていたんだ。でもその推測も配慮も全く意味がない。だってこいつが、山内が黒幕なんだ。
「でもこれからは私たちは日向さんの味方です。何かあったら私たちに相談してください。お役に立ちますよ」
「そうだよ。僕も協力するよ」
 得意の善人スマイルを浮かべて岩崎さんの言葉に賛成する山内には、吐き気を催す。この男が身内にいる時点でこの相談は何の意味もなさない。スパイが倒すべき相手の頭なのだ。山内からしたら絶好のポジション。これ以上ない位置を勝手に用意してもらったようなもの。これではこの二人も遠からず危険な目に合ってしまう。
「あたし、別にいじめになんてあってないから」
 絞り出すような声であたしは三人に訴えかける。
「大丈夫ですよ!私はこう見えて結構強いですよ。成瀬さんは弱いかもしれませんが、頭はいやらしいくらい良いです。そして山内さんは以前合気道をやっていたような人です。そんな簡単には負けませんよ」
「なんで僕が合気道やってたこと知ってんの?」
「私は何でも知ってるんですよ。だからなかなかいろいろな人にも顔が聞くんじゃないですか?」
「まあそうだね」
 なんだか和やかな雰囲気で会話が進んでいる。あたしの気持ちも知らないで・・・。
 あたしは机をぶったたいてその会話を打ち切らせる。二人は驚いてこちらを向く。
「あたしのことは放っておいて!あたしはいじめられてもないし、こんなこと望んでもないの!だからもうあたしには関わらないで!・・・迷惑なの、迷惑なのよ!あたしの気持ちもい知らないで、勝手なことばっか言わないで!もう放っておいてよ・・・」
 あたしは二人に迷惑をかけたくない。何をしようともあたしに関わるときっとろくなことにならない。というのはきっと建前で、あたしは二人に嫌われたくなかった。疎まれたくなかった。だからあたしのほうから関係を絶ったんだ。逃げ出したんだ。でもこれじゃ何の意味もない。どうしようもない。
 知らず知らずのうちに涙を流していたあたしに、成瀬が近づいてきた。
「何よ・・・。あんたももう放って・・・」
 成瀬はあたしの言葉をさえぎってあたしの頭をなでた。そして、
「あんたを救ってやるよ」
 成瀬は穏やかに微笑んだ。まるで、何もかもお見通しだというように・・・












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