偶然という名の奇跡2〜社長令嬢のジレンマ〜(25/41)PDFで表示縦書き表示RDF


偶然という名の奇跡2〜社長令嬢のジレンマ〜
作:城ノ内 ジョウ



αー13


あたしはあわてて部室を出ると、少し早足で歩いた。この事件に興味がないわけではないし、少なからず知り合いも関わっているから解決してあげたいが、今日のところはこれ以上意見出そうにないし、あたしの考えではまだまだ情報が足りない。だから今日はこの辺でお暇させていただくことにしよう。
こんな言い訳じみたことを考えながら、あたしが向かっているのは教室だ。昨日はすっかり忘れてしまっていたが、斉藤が来ているかもしれない。これからは自分で掃除しようとしていたのだ。今日こそ行かねば!そう思うと、あたしは自然に小走りしていた。
 教室に着くと、案の定、斉藤がいた。すでに掃除を始めていたようだが、不幸中の幸い、まだ始めたばかりのようだった。
「本当に変なやつだね、あんたは」
 あたしは少し呆れたような口調でこう言った。
「ああ、日向さんか」
 斉藤は手を止め、振り返ってあたしを確認した。あたしは近づき、斉藤から雑巾を奪った。斉藤は驚いている。
「もういいから。あとはあたしがやるよ」
「僕も手伝うよ!」
「いいから。あんたもこうなるよ?」
 あたしは自分の机を指さす。
「・・・別にいいよ。それよりも大事なことだ」
 この前とは違う態度の斉藤に驚いた。こいつも覚悟を決めたらしい。きっとあたしが何を言っても揺るがないだろう。あたしはそんな斉藤を見て、
「そう」
 としか言うことができなかったが、内心はすごく嬉しかった。
 それからあたしたちはお互い口を利かなかった。あたしはあたしで恥ずかしかったし、こいつもこいつで恥ずかしかったのだろう。
 さすがに二人でやると仕事が早く、太陽が完全に沈む前に終わった。
「あー、疲れた」
「うん」
「今日はありがとね」
「うん」
 やけに口数が少なくなってるな。何か話しかけるのも億劫になってきた。だからあたしと斉藤は向かい合ったまま、黙り込んでいた。
「何してんだ?」
 この沈黙を破ったのはあたしでも斉藤でもなかった。ドアの外に見える人影がその声の主であるようだ。聞き覚えがあるな。と、思ったのと同時に嫌な予感がした。
 ドアの外にいる人物は動かなかったが、もう一つ人影がやってきてあたしに向かって、
「あれ?日向さんじゃないですか!まだいたんですね」
 と言った。嫌な予感が見事的中した。この状況を見られたくないランキング一位二位コンビだ。最悪だ。身体中の汗腺という汗腺がフル稼働した。それと同時に頭をフル回転させた。何か言い訳を考えなければ!
 この状況を見られたくないランキング同率二位の岩崎さんが教室の中に入ってくる(ちなみにもう一人の二位はいじめの黒幕。誰かは知らん)。それにランキングダントツ一位の成瀬が続く。
「えーっと、忘れ物取りに来たらこいつがまだ掃除してたから、ちょっとその手伝い。ねっ?」
 あたしは斉藤に同意を求めた。というか眼で威圧した。斉藤はあたしの意図を理解したのか、マジでびびったのかは知らないが、首を縦に振った。
 岩崎さんはそいつがいることに初めて気が付いたようで、
「あなたは斉藤一貴さんですね?」
 と言った。マジでいろんな人の名前知ってるんだな。まさか全校生徒知っているんじゃないだろうね。
「私も手伝いましょうか?」
「ああ、もう終わったから平気だよ」
 岩崎さんの言葉に応対しながら、あたしはびびってた。成瀬の沈黙が怖い。何か言われるのも怖いが、黙っていられるのもかなり嫌だな。
「あんたの言ってた用事っていうのはもういいのか?」
 やっぱ黙っててもらったほうがいいな。
「あー、あれね。もういいや。大したことじゃなかったし」
「やたら急いでいたように見えたが?」
 本当に嫌なとこつくな。あたしが返答に悩んでいると、岩崎さんが変わりに答えてくれた。
「成瀬さん、人の予定をあまり深く聞くのは良くないですよ。プライバシーの侵害です。まして女の子に対して、デリカシーのかけらもありません!」
 ちょっと的外れだけど、岩崎さんありがとう。
「そういうこと。あまり詮索しないでほしいね」
 成瀬は聞いているのかいないのか、今日室内をきょろきょろと見回し、最終的にあたしを通り越してあたしの机を見て、そして斉藤を見る。じーっと見ている。二人が来てから黙り続けている斉藤は少しびびっている。そして成瀬は口を開く。
「お前、神って信じるか?」
「えっ?」
 突然何を言い出すんだ、こいつは。いったいどんなプロセスの上にこの質問が生まれたのだろう。だが、聞かれた本人の斉藤はそんな疑問一切感じないようで、
「はい」
 と、即答した。
「じゃあ奇跡は?」
「信じます」
「そうか」
 成瀬の発言の意図は全く解らない。しかし成瀬はそんなことお構いなしって感じで、
「じゃあ俺は帰るから。掃除もほどほどにしてろよ」
 と、言い残してさっさと教室から撤退していった。岩崎さんも、あたしたちに軽く頭を下げると成瀬のあとを追っていった。
「じゃあ僕たちも帰りましょうか?」
 しばらく呆けていたあたしに斉藤がこう言って、自分の荷物をまとめ始めた。一つ聞いてみることにする。
「あんた、成瀬と知り合いだったりする?」
「いえ。今日初めて話しました」
 やっぱりか。初対面であの質問をしたのか?理解できないね。何か意味があったのだろうか。ついでにもう一つ。
「岩崎さんのことは知ってたの?」
「いえ。顔くらいしか」
 こちらも予想通りだ。あたしも自己紹介なしで名前言われたからな。探偵みたいな人だな。
 あたしたちは適当に会話をしながら帰路についた。












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