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ブサイクの逆襲  作者: 黒田 容子
本編
20/33

悩ましきサラリーマンたち

権田、痛恨のミス。

先方の予算、聞くの忘れた…


 所長への報告もそこそこに アタシは天井を見ていた。加藤さんは、あの後すぐ帰った。帰る前に、何だかあったんですよ…アタシにゃ刺激的なことが。

ああー加藤さぁん!爆弾を二段オチで投下するの、ホント止めようよ…




 アタシが ポカーンとしているワケというのも。

 衝撃の恋の告白の後、もう一つ、爆弾投下があったのだ


「…藍ちゃん」

 加藤さんが席を立つ時、それはもう さりげなく呟いたことだった。 


 何を隠そう、アタクシ 権田ごんだの下の名前デスヨ。

 あたしのフルネームは、権田ごんだ あいなんです。でも、久しく「藍ちゃん」なんて呼ばれたことない。社内は勿論、小学校の頃から「藍ちゃん」どころか「権ちゃん」だった。


 べつにいいんだけどさぁ?

 でもね、でもね。呼ばれるとなると… やっぱ、きゅうんとは来るんですYo!

 …アタシの下の名前なんて、知らないんだろうなって思ってた。どこで知ったんだろう。いや、知ってくれてたんだ…そっちの感謝の方が大きいよ。


 しかも、衝撃の「藍ちゃん」発言の後、奴は言ったのだ

「よろしくね」

 一体何に「よろしく」なんだ!? 案件で人探してね?なの? 俺とお前のこれからに、なの?


 そして、呆然としたあたしの頭を、ぽんぽんと撫でてくれて…最後に髪をクシャっ


 あの時の加藤さんは…謎めいた笑い方じゃなった。むしろ… 

 頭撫でる仕草と髪をクシャっとする仕草もまた、ただの付き合いの範囲を超えた… 甘かった。甘さがあった。


 なんなのよ、あの溶けるような雰囲気…想像した先で、思考は強制終了させた。

 あーアタシ、今日もう仕事にならないなー お茶でも飲むか…席を立つと、そういえばカナコがいない。


「あれえ?カナコは?」

 庄内カナコファンクラブ会員No.8番君に聞いたら

「気分が悪いって…」

 おいおいおいおい、それは無いでしょ~

「さっきまで、ピンピンしてたわよね?」

 応接ブースから声が漏れるほど、キャピキャピ声が漏れてたわよ?気分が悪いって…


 ふと過ぎる、あの時感じた違和感が蘇ってきた。



 

 変だと思ったのよね。見積り作るために、一旦離席したじゃない?そこからまた、来客ソファーに戻ったとき、何故かもうカナコが居なかった。カナコだったら、もうちょっと居座って加藤さんに絡んでそうだと思ったのに…


「ウチの庄内は?」って聞いたら、何故か、加藤さんは何も答えなかった。


 …あれ? アイツどうしたんだ?ってその時は思った。


 具合が悪くなるほどの急展開の会話があったってこと? あれ? 具合が悪いんじゃなくて…


「具合が悪いんじゃなくて、『気分が悪い』んだっけ?」

 会員No.8クンに改めて聞き直した。

「…いや、じ、自分…そこのビミョーな差には自信ないッス」

「具合悪いんだったら、さっさと女子社員だれかトイレに迎えに行くとこでしょう?

 …気分が悪いってのは、何?」

 あたしは、一旦躊躇したけど、口をもう一度開いた。読みが外れても良いから、言ってしまえ!!

「株式会社テンマの加藤さんに、怒られたかでも起きた? …ナンパしてフラれたとか。」

 もちろん、そんなコト起きてほしくない。来客である加藤さんに申し訳ないし、会社の沽券に関わる。

 …まあ 加藤さんは…流してくれそうだけど…


「いや、自分、知らないッス」

 いいわ、別に答えは求めてないし。…どうせそんなトコでしょ… さてさて。

 あたしは、気持ちを切り替えてまた話始めた。

「あいつ、まだトイレ?」

「いや、所長が… 確か…外の空気吸いに、長めで良いからゴハンしてこいって…」

 あ、墓穴掘ったわね?具合悪いんだったら、「ゴハンしてこい」なんて指示出ないわよね。あー、やっぱ、そうなんだ?

 あとは、っと。聞きたいのは後一つだけなのよねー

「モンスターダーリンからの電話とかって来てるの?」

「モンスターダーリンって何すか?!」

「いや、どう考えても モンスターでしょ?あの営業妨害級のクレーム電話」

「じ、自分には、誰のことか分かんないッス…」

「ほおう? じゃあ、実名挙げて話そうか」

「いや、結構です…」

「で? 電話来たら、よく分かんないけど、客先のわ・か・いイケメンとご歓談を楽しんでらしたようですが、途中から気分が悪くなってましたって言えばいいのね?」

「そこまで正確に事実を詳細に言わなくても…」

「冗談よ?…いやよ?後になって、カナコ彼氏さまから『ウチの可愛いカナコを泣かすような客先に、カナコを出すな』とか怒られるとかって。…超とばっちりじゃな~い」

 ホントにそうなったら、迷惑だわ


「まっ、流石のカナコも、今回はチクり電は出来ないかあ?」

 あたしは、楽天的に考えることにした

。…だってねえ?

 そもそもが、彼氏とは別にキープ君作ろうとすり寄る自体が、彼氏に知られたくないハズ。

 そして、オトコは自分だけには甘くて誘いも喜んでくれると勝算を踏んでいたのかしら?まさか…断られるとかいう想定外の展開も誤算だったはず。


 何から何まで相談できない中、多少、ある程度未練もあるとしたら…


「苦しいだろうねえ、カナコ」

「優しいっすね」

 会員No.8が驚いた風に言う

「いや。まあ。」

 間違えた。正確には「見苦しいわねえ、カナコ」だった。ま、でも敢えて口に出すことではないかあ!?


ふふん♪と笑った丁度そのとき、視界の陰に、いやーな空気を察した気がして振り返ると。


あ、ヤベ!忘れてた!


「所長に報告行かなきゃ!!」


 すっかり忘れてたわ、あははは

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