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 変態とか言うな。僕のメンタルの弱さを忘れたか。

 

 風速六メートルで崩れるって言っただろ。


 あれ。三メートルだったっけ。


「てか、直斗はお昼食べないの? それこそお昼休み終わっちゃうよ?」


「食べるよ。今やってるステージのラスボス倒したらな」


「それってどれくらいかかるの?」


「分からん。別に僕のことは気にしなくていいから、先に教室戻ってろよ」


「そんなこと言われてもなあ」


 煮え切らない返事をしつつ彩楓は再度僕の前の席に座る。


「お前は僕と違って友達多いんだから、先に教室に戻ることくらいどうってことないだろ」


「そ、そんなことないよ! あ、今のそんなことないってのは直斗に友達がいないことを否定する意味での言葉で」


「別にそんな気を遣わなくていいよ。僕に友達がいないことは事実だし」


 僕には友達がいない。


 だが、特に問題はない。高校の3年間など、アニメとゲームとライトノベルさえあれば乗り切ることが出来る。


「いるじゃん。あたしっていう友達がさ」


「彩楓は友達じゃなくて幼馴染だろ?」


「幼馴染だって友達だよ。言うなれば、親友的立ち位置的な?」


「親友ねえ……まあ、確かにその言い方も間違ってはいないのか」


「でしょう? だから、直斗には別に友達がいないって訳じゃないから、安心して。直斗にはあたしがいるから」


「…………」


 よくもまあ、そんなに気恥ずかしい台詞を口にできるものである。


 僕だったら絶対に無理だな。


「てゆーか、今ゲームしなくてもよくない? 直斗、どうせ放課後にはまた部室行ってゲームするんでしょ?」


「まあな。でも、放課後の時間だけじゃ足りないんだよ」


「どんだけゲームしたいの直斗は……えっと、確かオタク研究会だっけ?」


「そう。略して『オタ研』な」


 オタク研究会――略して『オタ研』は僕の所属する部活である。


 珠玖泉高校では、生徒なら誰でも部活を作ることが可能である。とは言っても、生徒会に部活を立ち上げる理由を提出し、提案が通らなければ部活を立ち上げることは出来ない。いくら生徒達の意見を尊重し、部活専用の校舎を有する珠玖泉高校でも、そんな無尽蔵に部活を作る訳にはいかないからである。


 だが、それを僕は上手く掻い潜って見せた。特に何をした訳でもなく、ただそれなりの文章を書いて生徒会に提出したら通ってしまったのである。


 僕が提出した分は以下のものだ。


 ゲーム・アニメなどの娯楽を通じて、もっと色々な人と繋がりを持ち、様々な人間関係を間近に見て研究し、その沢山の経験を以て、将来自分が旅立つ社会に難なく適応するためにこの部活を立ち上げたい――。


 正直、こんな建前だらけの理由で通るとは思っていなかったのだが、まあ、通ってしまったものは仕方がない。お陰様で僕は毎日放課後誰もいない部室で一人パソコンの動画サイトでアニメを観て、一人誰も文句を言われずにゲームをし、一人静かにライトノベルを読んでいる。


 まさしく最高の時間だった。人が皆部活に打ち込む理由が分かった気がする。多分他の皆と僕とでは部活に対する価値観が違うのだろうが。

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