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3-6

「ていうか、『人の揚げ足を取る』ってどうして『揚げ足』って言うんだろうね。唐揚げなのかな?」


「僕もよく知らないけど多分そういう意味ではないことだけは確かだな」


 その慣用句からその発想が出来るとはお前は何て大食いキャラ思考なんだ。逆に尊敬する。


「まあいっか、そんな難しいことは!」


「お前話を逸らすの下手だな」


「難しいこと考えたらお腹減っちゃったよ。直斗、早くご飯食べいこ!」


「え? あ、おう」


 歩き出した彩楓の後に続いて僕も廊下を歩き出す。


 人の揚げ足を取る――その言葉の語源は分からなかったが1つだけ分かったことがある。


 それはもう彩楓が先程の一件に対して僕を怒っていないということだ。


 何度も言うがあれは元々偶然の事故であり、僕に責任は無いので当然のことなのだが。


「そう言えばさ、今の『揚げ足』で思い出したんだけどさ。今日カレーと一緒にお母さんが唐揚げ作るんだって」


「そうなのか。結構お腹いっぱいになりそうだな」


「うん、だからね」


 リビングと廊下を隔てる扉のノブに手を掛けながら彩楓は満面の笑みでこう言った。


「さっきあたしのお風呂上がりの姿を見た罰として唐揚げ全部あたしが食べるから♪」


「…………」


 怒ってた。


 まだ怒ってらっしゃったよ、僕の幼馴染は。


「い、いや、せめて1つくらいは食べてもいいんじゃないかな。あれはだって偶然の事故だった訳だし――」


「返事は『はい』か『イエス』でお願いね」


「両方とも肯定じゃねえか!」


 ――そして。


 今夜の夕飯にて、僕は唐揚げを1つも食べることが出来ないのであった。



 ◆ ◆ ◆



「まさか本当にあの量を全部1人で食べるとはなあ……」


 躑躅森家での夕食後、自宅の自室にて僕は苦笑と共に呟く。


 皿の上に山積みとなった唐揚げを全て食べてしまうとは……流石は彩楓。


 ひょっとして彩楓の胃にはブラックホールでもあるのではないのかと真面目にそんな馬鹿げたことを考えてしまうほどに彩楓の食いっぷりは凄まじい。


 何だろう。僕に風呂上がりの姿を見られたことによるストレスだったのかな。


 そんなことを考えながら僕はベッドに腰を下ろす。すると、それと同時にポケットの中でスマホが震えた。


 ポケットからスマホを取り出す。着信したのは彩楓からの電話だった。


「もしもし?」


『あ、直斗? 今大丈夫?』


「まあ、今からやることと言ったら眠くなるまでゲームするくらいだから多分大丈夫だ」


『良かった~。あのさ、明日数学あったじゃん?』


「あったな」


『今それの宿題やってないの思い出してさ~。写させてくれない?』


「構わないよ」


『ありがとーっ! 流石直斗! オタクなだけあるね!』


 それは僕を褒めているのか、それとも貶しているのか。


『それじゃあ、いつも通りベランダ使ってそっちに行くから』


「良いけど落ちるなよ」


『直斗みたいに運動神経悪くないから落ちないよーだ。鍵開けといてね、部屋の窓の』


「あいよ」


 さり気無く馬鹿にされたような気がしたが……まあいいか。


 彩楓との通話を終えた僕はスマホをポケットに入れるとベッドから立ち上がりベランダに繋がる窓の方へと向かう。


 余談だが、僕の部屋と彩楓の部屋は隣同士なのである。そして、お互いの部屋には互いの部屋に向かってベランダが突き出しており、態々下に下りて玄関から家の中に入るよりもこういったちょっとした用ならばベランダを使った方が早いのである。


 閉め切っていたカーテンを開ける。すると、丁度彩楓がベランダに降り立つところだった。

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