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「直斗があたしの子供かあ……あははっ、何か育てるの物凄く面倒臭そう」


「笑いながら何とんでもないこと言ってんだよお前は」


 思わずゲーム機から顔を上げてしまった。今の僕はそれほどに彩楓の発言に驚いている。驚きの度合いが分かり辛いか。


「さらっと酷いことを言うなあ、お前は。言っておくがな、僕以外だったら今の言葉は即死レベルだからな。一撃でヒットポイント0になるレベルだからな」


「それじゃあ、直斗だとどうなるの?」


「僕か? 僕だと一週間ほど部屋に引きこもって出て来なくなるレベルだな」


「メンタル弱っ」


「僕のメンタルの弱さを侮るなよ、彩楓。僕のメンタルは風速五メートルで脆く崩れ落ちる自信がある」


「それってドヤ顔で言うことなの?」


 絶対に違うな。


「と、とにかく、だ。そういう人の心を抉るような発言は控えること、いいな?」


「はーい――って、何であたしが直斗に言い包められているのよ。あたしに意見したかったらね、まずそのゲームを一度止めてから意見してよ」


「それじゃあ意見しないわ」


「あれ!? 諦めちゃうの!? 意見しないの!? てかしてよ意見!」


「お前はどんだけ人から意見されたいんだよ」


 必死すぎて若干引いちゃうよ、僕。


「まあいいや……直斗にゲーム止めるように言うこととか虫と会話しようとするくらいに無謀なことだもんね」


「その例えはどうかと思うがそうだな。やっと分かってくれたようで何より。あと、早くしないと昼休み終わるぞ」


「だから誰のせいだと思ってんの!」


 今一度声を荒げて大盛りのカツ丼に立ち向かい始める彩楓。彼女が食べ始めたことを確認して、僕は改めて小型ゲーム機の液晶画面へと視線を移す。


 躑躅森つつじもり彩楓(さやか)


 同じ高校の食堂にいる時点で分かるとは思うが、僕と同じく珠玖泉高等学校に通う高校一年生である。


 彩楓とは昔からの付き合いであり、家が隣同士ということもあってか、性別の垣根を超えて一緒に遊ぶことが多かった。いわゆる、幼馴染という奴である。


 神様の悪戯か、彩楓とは小学校・中学校と同じ学校に通い、また同じクラスになるという謎の連続したマッチングが発生している。しかも、その悪戯はこの高校でも続くという徹底ぶりだった。


 一体神様は何を考えているのだろう――彩楓とこの学校で同じクラスになった瞬間、僕は割と本気でそんなことを思ってしまった。


 神様絶対遊んでるでしょう。仕事して下さいよ。


「完食ーっ!」


「そしてお前食べるの早過ぎだろ」


 ゲーム機から顔を上げる。気付けば、本当に先程までどんぶりの中に所狭しと収められていたカツ丼はご飯粒ひとつ残すことなく完全に食べ尽くされてしまっていた。

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