第十九戦:治療テント
「で、怒って雷那くんを殴ってしまったと…ゆうことだね。」
「……はい。」
今の状況を説明すると、乙女の心配を気持ち悪いと言った雷那を怒りにまかせて殴ったはいいが(よくはない)
冷静になってみると骨&内臓をヤった左わき腹をモロに殴っていたことに気づき
口から魂みたいなのを出して動かない雷那を見て情けない悲鳴を上げてテンパってると
丁度グルグル巻きになった翔と血だらけの蓮くんが来たってワケ。
見かねた九条先生が雷那の骨と内臓を治療してくれた。
身体強化は使ってなったから新たに骨折するようなことは無かったらしい
しかし、想像を絶する痛みだったのか、泡を吹いてそのまま起きない。
九条先生の話だと気絶してるだけらしい。
「とりあえず起きたら謝っとけばいいんじゃない?」
「も゛ーも゛ーぶぇん、ぼろヴぉろほろうてふぅんね? (訳:なぁなぁ蓮、そろそろほどいてくんね?」
「で、でも最初に言ってきたのは雷那だし……。」
「おい、連れが何か言ってるぞ。」
雷那のベットを挟んで向かい側に座ってキセルをプカプカしてる蓮くん。
何か蓮くんに相談してるみたいになってる気がする。ちなみに蓮くんと翔のキズは私が直した。
で、蓮くんの後ろには半身を起こしてベットに寝てるデカブツ…もとい、雷那の対戦相手の戦部くん。
そのベットの上に煙のロープです巻きにされて転がっている翔。猿ぐつわ付き。
「雷那が気持ち悪いなんて言わなきゃよかったんだし…」
「素直にならないとダメよ〜」
「黙っててください放置先生。」
「定着してきてるッ!?」
少し離れたところでこっちを覗いてる九条先生withその他のナース服。
仕事そっちのけでこっちを覗いてるので(私もだけど)容赦なく切って捨てる。あ、落ち込んだ…
「の」の字を書いてる先生は無視。と今度はす巻きが暴れだした。
「ヴぉい、ふぇん! とふぃふぁえふふちほほれ! (訳:おい、蓮! とりあえず口の取れ!!」
「おい、連れが何か言ってるがいいのか?」
「自由にすると面倒だからそのままにしといて。」
蓮くんにかわって返事をする。蓮くんもニコニコしてるだけで何も言わないから同じことを思ってるんだろう。
戦部くんが涙を浮かべる翔を哀れそうに見つめ、ポンと肩を叩く。鬼みたいな顔の割りに意外と優しいみたいだ。
「まぁ、雷那くんだったら怒らないと思うよ。」
「そうだろうけど……」
「………ど、どうゆう状況でござるかこれは…………」
「あ、猿飛くんおかえり。」
ござる口調の声に入り口の方を見ると気絶しているのか意識のない薫とそれをおんぶしている猿飛くんがいた。
なんともいえない表情で開口一番、この状況を聞いてくるってことは周りから見たらそんなに酷い状況らしい。
まぁ、泡吹いてるのとか、す巻きのとか、マッチョとか、キセルとか居るから無理はないのだが…って私もナースだった…
「ふぁ! おふぇ! フォ、フォノヤホー!ふややまひい! (訳:あ! お前! コ、コノヤロー羨ましい!」
「…コレはなんて言ってるでござるか?」
「「知らない。」」
「…………あ、頭が痛くなってきたでござるよ……」
「……気持ちは分かるぞ。」
初対面なのに何故か戦部くんと気が合うみたいだ。
〜〜〜〜〜〜5分後〜〜〜〜〜〜
「で…こんな状況なんでござるか。」」
「ふぉうひうほほはな (訳:そうゆうことだな。」
「イヤ、何を言ってるのか……」
さっきから頭を抱えっぱなしの猿飛くん。
フガフガ言ってる翔を私が殴って大人しくさせて、その間に開いていた向かいのベットに薫を寝かせた後
何故か近くにあったイスの上に正座して、この状況を聞いてくる猿飛くん。
とりあえず簡単に戦部くんを紹介して、雷那が何故泡を吹いてるのかを説明(ナースコスプレのワケも)
その後についでに蓮くん対翔と雷那対戦部くんの戦いを蓮くんと戦部くんが教えてくれた。
一応猿飛くんも納得したようだ。頭は抱えたまんまであるが。
その話の中で私は戦部くんが話してくれたことが気になっていた。
雷那が『電化能力者』? そんなハズ……だって中学の時の雷那なんて『煉放出』もできない落ちこぼれだったし…
そんな聞いたこともない能力を使えるワケがない。
でも、戦部くんの話だとかなり強力な能力で、先生が止めなければ殺されていたかもしれない…らしい。
それこそ、雷那がそこまでするとは思えない。アレで結構優しいところもあるし、ケンカはするけど好きなわけじゃないみたいだし。
ケンカする時はいつも相手が仕掛けてきたりして仕方なくしたのが殆どだったはずだ。
それに煉を電気に変えるって…そんなこと………
「…ありえへんやろ、電気って。」
「きゃぁ!! び、びっくりした!!」
「まぁ、ウチはこの状況にびっくりやけどな……」
突然考えてたことを言われて飛び上がりぎみに振り向くとベットの上で胡坐をかいて頬杖をつきながら苦笑を浮かべる
薫がいた。少し距離が開いてるのはこんな集団だからだろうか。ちょっとショックだよ…
「いつから起きてたの?」
「え〜っと、戦部くんの紹介あたりから…」
「全部じゃんッ!!」
ベットに寝かした意味はなかったとゆうことか。
雷那の能力のことを言ってるから全て聞いてたのは本当なんだろう。
そして薫も雷那の能力の奇異さに気づいている。そしてみんなも……たぶん翔意外、気づいてる。
「煉を電気にって……ムリやろ? 聞いたこと無いで?」
「普通ならそうでござるな。」
「ふぇ〜 ほうはのふぁ? (訳:へ〜 そうなのか?」
薫の問いを猿飛くんが肯定する……まではちょっと真剣な雰囲気だったのを翔がブチ壊す。
翔、少しの間黙ってくれたらその縄解いてあげるから黙ってて。
翔の言葉を気にした様子の無い猿飛くんが更に続ける。顔は微笑んでいるように見えるが、目は真剣そのものだ。
「でも、他の四人ならともかく、薫殿と拙者ならまだ理解できる能力でござるよ。」
「どうゆうこと?」
「…四人にはまだ説明してなかったでござるな、拙者の能力。」
『空蝉』
そう言って胸の前に手を構えて印のようなのものを結ぶ。一瞬シンッとなったかと思うと
突然、猿飛くんの体が胸を中心に消え始めた。
「「「「ッ!!?」」」」
私を含めた4人が突然のことで声を上げそうになる。
薫は驚いてないところを見ると模擬戦の時にこの能力を見たのだろう。
そう思う5秒もしないうちに猿飛くんが完全に私たちの視界から消える。コレは…
「拙者の能力は『完全迷彩』。周りの景色と完璧に同化する能力でござる。」
「『完全迷彩』…」
何もない空間から声が聞こえる奇妙な感覚。今人が来たら空耳か幽霊だと思うだろう。
「そう、そして薫殿の能力は……」
「『異常視覚』。簡単に言うとこうやな。今は見せられへんけど、最大500メートル先まで見渡せて、障害物を透視できる能力や。」
勝手に言わないでとゆうように薫が猿飛くんからセリフを奪う。こちらは実際にみていないが
戦った猿飛くんが言うのだから嘘ではないのだろう。
ここでやっと薫が戦闘医療科じゃない理由が分かった。いつもどのタイプなのか聞いてもはぐらかされる
ばっかりだから分からなかったけど、その能力ならきっと索敵系か偵察系なんだろう。
でも、実際目にしたもののまだ理解できない自分もいる。
「『完全迷彩』に『異常視覚』? そんなことが出来るの?」
「普通ならムリでござる。いわば、『特異法力』。通常の能力者では出来ない法力でござるよ。」
「じゃあ、雷那の『電化能力』も…」
「おそらく『特異法力』の類でござろうな。」
「そうなんだ……」
そう言ってスゥと現れる猿飛くん。
薫も猿飛くんもどこか少し悲しそうな表情。確かに強力な能力だがその気の無い人でも
非能力者が見れば人間離れした物に見えるだろう。ただでさえ超人的な力を持っている
能力者のなかでも更に奇異な存在。私には分からないけど、二人とも過去にその能力が原因
でつらい思いをしたのかもしれない。あくまで推測の域だけど。
ふとベットに眠る雷那を見る。
泡も引いてきて静かに眠る雷那を見て突然ヘンな気分になる。同情か哀しみかも分からない感情。
そのままスッっと手が自然に動いてスヤスヤ眠る雷那の頬を優しく撫でる。
意外とスベスベの肌をゆっくり撫でてると不思議とヘンな感情も消えていく。
ちょっとイタズラ心がくすぐられて頬をプニプニする。マヌケな顔になる雷那を見て自然と口元が緩む。
私は味方だからねと心の中で囁きかけると丁度ピクンと雷那も反応してドキッとしてしまう。
ヤバイ今顔赤いよね。もぉ、雷那のくせに。………でも……ちょっと幸せかも……
「………意外と大胆やね…」
「いひゃぁッ!!???」
「いや、ウチらずっとおりましたやん。」
わ、忘れてた。ずっと話してたのに頭の中から完全に消えていた。
周りを見るとジト目とニヤニヤの嵐。ちなみにニヤニヤの大半を占めるのは遠くにいる九条withナース服。
え、今もしかして私みんなの前で……寝ている雷那の頬を……ナデナデ…
ボン! と音を立てて自分の顔が茹で上がるのを感じる。いや、顔だけでなく足先から指先まで全て真っ赤に
染まっているみたいだ。顔から湯気が出てる。今なら頭で焼き料理全般が調理可能。
「やっぱり……千代の彼氏ってら……」
「ち、ちちちちちちがう!!! まだ…じゃなくて! わわわ私と雷那はそんなんじゃぁ!!???」
「いや、ここまでやっといて何を言うか。」
「まぁ…イチャイチャは二人きりのときがいいと思うでござるよ…」
「殴った理由聞いた時点で分かってたけどね。」
「……どうやらこの娘には暴走グセがあるようだな。」
「おふぇにほっふあふぃふぁはらってふぁんじはげほな (訳:俺にとっちゃ今更って感じだけどな」
「いや、その、まっ、ちょ…」
私の言葉はオール無視。みんな自由にオリジナリティ溢れる感想を述べている。
私的には蓮くんと戦部くんの発言が聞き捨てなら無い。のだが、今は反論より先に逃げるべきだろう。
滝のように汗を流しながら必死に話題を変えようと試みる。
「そ、それより『特異法力』のこと……」
「そんなこと今どうでもええねんッ!!!!!」
「えええぇ!??」×2
さっきまで真剣に話し合ってたじゃん!?
突然の特異法力仲間の裏切りを受けて猿飛くんも絶叫。そして私とハモる。
ソレは無いでしょ、と言おうとするが、いつの間にかすぐ傍まで迫っていた薫の圧力に押しつぶされ不発に終わる。
イスに座る私に覆いかぶさるように迫ってくる。手をワキワキと動かし、ヘッヘッヘっと
16歳の少女とは思えない悪そうな顔。こ、怖い。薫さん、キャラが変わってます。
「これはおもろいことになって来ましたなぁ?」
「薫? お、落ち着いて…」
「今度こそ吐いてもらうでぇ……吐かへんのやったら…ヘッヘッヘ。」
「キャーーーー!!! 貞操の危機!?」
更に指をワキワキさせてゆっくり近づいてくる。
もう息が掛かる距離まで来てる。このままだと本当に貞操が危ないかもしれない。
途中までちょっとシリアスな感じだったのに。予想外の展開だ。
いっそのこと白状しようか…いや! 白状するも何もみんなの勘違いだって!
私と雷那はそんなじゃなくて……姉弟……そう! 姉弟みたいなものだって!
自分の脳内のことなのに何故こんなに焦らなくてはならないのだろうか。
とりあえずこのままでは分か悪い。
みんなの誤解は後で解くとして、今は戦術的撤退だ。あくまで戦術的。
時間を稼いでもらおうと猿飛くんの方を見る。
「ど、ドロンでござる。」
丁度、合掌していた手がスゥと消えていく所だった。
「あ! に、逃げた。裏切り者!!」
猿飛くんは別に味方ってワケではないのだが、咄嗟に叫んでしまう。
てか、こんなことに『完全迷彩』使ってるし。前言撤回、こいつら辛い目なんか遭ってない。
遭ってたとしてもそれ以上にこの能力、どうでもいいことに使ってるに違いない。気の毒に思った私がバカだった。
こうなったら誰でもいいとその他の男共に視線を向ける。
「ってやっぱり逃げてるコニャローーーーー!!!!!!!。」
そこにはスヤスヤ寝てる雷那がいるだけで、さっきまで居た三人が一瞬で居なくなってる。
ご丁寧に置手紙付き。読む暇は無いのだが、いつの間に書いたのかが気になる。
しかし、これで助けが入る可能性が無くなった。薄情者達め。
こうなったら一人で逃げるしかない。
猿飛くんでアレなのだから薫なんて私が逃げたら躊躇無く能力を使うだろうが、
運がよければ逃げ切れる。腹をくくれ私! 貞操を守るんだ!
「逃がさへんでぇ……ヘッヘッヘ。」
イスから一気に走り出そうと力を入れた瞬間ガッシリと肩を掴まれた。
早くも計画失敗! てか実行する前からバレていた。
悪そうな顔の少女が肩をガッシリ掴んで離さない。め、目が据わってる。
一応、薫が私を問いただすってだけのはずなのだが、今の薫は私を売り飛ばしそうな勢いだ。
ヤバイ。本気で貞操の危機。ってか身の安全さえ危ない。
と思っている間にガッシリ掴んでいた手が突然私の襟を持ってズルズル引き摺り始める。
「えぇ!? ちょっと、どこに連れてく気!??」
「とりあえず事務所で話聞かせてもらいましょか〜ヘッヘッヘ〜」
「事務所ってドコーーーーー!!!!????」
「ねぇちゃん諦めや〜もう手遅れやで〜」
「イーーーーヤーーーーーー!!!!!!」
「う……うん………ふぁ〜〜……よく寝た。」
アレ?そういえば何で俺は寝てたんだろう。あぁそういえば、暴走した千代に
何でか思い切り殴られたんだった。で、骨折した場所にクリティカルヒットして気絶したのか。
周りを見ても千代も戦部も居ない。殴ったくせに見舞いも無いなんて薄情な奴らだな。
ふと自分のベットの上を見ると一枚の置手紙らしき紙が置いてあった。
{がんばって893さんから逃げてください。一足先に逃げさせていただきます}
「何だコリャ??」
置手紙には意味不明のことが書かれてる。ヤクザなんて会ってない。
しかも「がんばって逃げて下さい」って完全に見捨ててるじゃねぇか。
俺が寝てる間にやくざにケンカを売ったのだろうか?……身に覚えがない。ってある訳ねぇだろ。
頭が疑問符いっぱいになってたら紙の下の方にまだ続きを発見した。
{追伸:僕たちは雷那くんのこと応援してます。 蓮、翔、戦部より。}
「???」
更に頭に疑問符が増えた。
蓮と翔と戦部が俺のことを応援してくれてる。俺何か応援されるようなことをしただろうか。
もしかして俺が寝てる間にヤクザにケンカ売って、それでみんなヤクザに脅されて
仕方なく置手紙を置いて逃げたのだろうか。そうだとしたら俺って今追われてる? 東京湾に沈められるのか?
「と、とりあえずみんな無事でいてくれ。」
特に何をするわけでは無いが、一応無事を祈っておく。
ヤクザより強そうな戦部が居るから大丈夫だろう。
ってかいつの間に戦部は蓮と翔と知り合ったんだ?
謎は深まるばかりだ…………
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