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  神が鳴く 作者:
第十戦:校長先生
藤堂雷那が校長に礼を言って立ち上がる。
そのまま校長室を出て行くと、走って演習場に向う足音が聞こえた。

{タフだな…………}

雷那はつい先ほどまで校長の能力を受けていた。
校長の能力は殺傷能力は全く無いが、逆に精神に与えるダメージは並の幻術能力者のそれを上回る。
過去に数名、その能力を受けた者を見たことがあるが、その誰もが能力を受けている最中に気絶するか、終わっても数時間は動けずにうずくまったままの者ばかりだ。
俺自身は受けたことが無いが、能力を受けている者を押さえていると想像も出来ないような苦痛の中にいることが分かる。
それを、雷那は終わると少し肩で息をするだけですぐに立ち上がり。礼を述べる余裕を見せた。

{やはり今までのとは事情が違うらしいな。}

桜木自身、校長から詳しい話を聞いている訳では無い。
今回雷那を校長室に呼んだのは、奴がこの学校に入る前から決まっていたことだ。
目的は、雷那が使えない『煉放出』を使えるようにすること。カウンセリングでは勿論無い。
校長が言うには、雷那が『煉放出』を使えないのは奴自身に問題があるのでは無く、幼少期に人為的に使えなくさせられた…らしい。
今回は幼少期にされた「何か」の一部を開放して法力能力を取り戻す作業だったわけだ。と言うことは、雷那の掛けられた術は校長の能力と同じか近い物と言うことになる。

{それが何なのかも言ってくんねぇんだよな}

心の中で真相を教えてくれない校長を非難していると、本人がソファーから立ち上がろうと腰を上げた。

「おっと! 大丈夫ですか? ふらついてますよ?」

「えぇ、大丈夫よ。久しぶりだからちょっと疲れちゃったかな?」

ソファーから立ち上がると、足取りが少しおぼつかない。顔色も悪いようだ。
サッと支えに入って、ソファーに座り直らせた。いつもしっかり働いてる姿と比べるとよわよわしい。
心配して声をかけると眩しさに色気を乗せた笑顔で返された。そこらの男なら一発で惚れるなこりゃ。
実際に20代後半で容姿も美しく、清楚で色気もあるってことでファンクラブまであるそうだ。
だが実際には性格は意地悪でイタズラ好きのドSというのは一部の人間しか知らない。

「いかがでしたか? 藤堂雷那は」

「雷那君か……いい子じゃない。かわいいし♪」

そう言って口元を押さえながらウフフとイタズラっぽく笑う。もちろん俺が聞きたいのはそんなことでは無い。
校長もおそらくそのことを分かっていて、からかっているいるのだろう。ただ、かわいいので怒れない。
その証拠にからかっていた顔からすぐに真剣な顔に変わった。

「今までで一番苦戦したわ。一部を解放するだけでこんなに消耗するなんてね」

校長が悔しそうな表情を浮かべている。やっている最中は平然とした表情をしていたが、意外と苦戦していたのか。
しかし、雷那の中がどんな状態なのかも、奴に何が起こっているのかも、更には自分の能力も、この人はまったく教えてくれない。

「校長。奴………雷那が何者なのか。雷那に何があるのか。なぜ教えて下さらないのですか?」

「ウフフ。そのうちイヤでもわかる時がくるわ♪」

そう言ってまたイタズラっぽく笑う校長。本当に教える気は無いようだ。

「桜木先生。アナタは雷那君の監視役。しっかり彼を見ていなさい」

唐突にそう言った校長はイタズラっぽい笑顔を俺に向ける。
ただ、今度は有無を言わせない強い意志を持った目でまっすぐに見てくる。
なぜ俺が? と言おうとすると先に校長が答えた。

「あなたの能力が一番都合がいいのよ♪」

「……………分かりました。」

「うん♪ よろしい。じゃあもう訓練に合流していいわよ。お疲れ様」

「はい、では失礼します」

そう言われて自分も校長に礼をして校長室を出て、演習場へと向かう。


監視役かぁ……賑やかになりそうだな。









桜木が出て行って、一人になった校長室でボソッと呟く。

「呪いの子………か」


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