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この作品には 〔ガールズラブ要素〕 が含まれています。

チョコ色インバウンド

これは夏色インバウンド(http://ncode.syosetu.com/n9950cv/)の続編にあたります。
 三学期になっても容赦なく現れる宿題。それを消し去るためササヤマはヒマリ家を訪れていた。

「もうすぐバレンタインでしょう。勿論ゆめにはチョコあげるから期待してて」

 ヒマリが左肩に密着しながら言う。髪の毛のいい香りが気になって気になって正直宿題が進まないんだけど。だからといって離れて欲しいわけじゃない。

「ササヤマにお菓子作りのスキルなんてないんだけど……」

 バレンタインと聞い宿題が進まないこと以上に困ってしまった。去年までは適当に友チョコを買って渡す程度でよかったけど、今年は恋人として迎える初のバレンタインである。そう、ササヤマとヒマリは恋人同士。

「大丈夫! ホワイトデーに3倍で返してもらうから! そう、体で!」
「なんでよっ! ヒマリはどうしてそっち方面にばっかり行っちゃうかな!?」

 夏休みの時からヒマリはエロくなった気がする! 揉めば大きくなるよと隙あらばササヤマのササヤカな胸を狙ってくるのである。そんな戯れ言誰が信じるものか! なんとかヒマリのヒマラヤを吸収とかできないものか!

「よーし陽鞠さん頑張っちゃう! 爪とか髪の毛とか生理の血とかブレンドしたオリジナルを――」
「ちょっと待て! 何それ!? 普通に怖いんだけど!! 何入れようとしてんのッ!?」

 ビックリして飛び跳ねるかのようにヒマリから距離を取った。流石にこれはエロいイタズラされるとかそんなレベルの話じゃないって! ネットでそんな話を見掛けたことはあったけどリアルで自分の身に降り掛かってくると恐怖以外の何でもない! やめて、死ぬっ!!

「そんなチョコをササヤマに渡そうとする奴とは別れる! さよなら!」
「ちょっ……」

 朴木陽鞠とササヤマこと私、笹山ゆめは幼馴染の関係だった。だったけど去年の夏になんやかんやあって恋人関係になった。なったけどそれも今日でおしまい。

「これからもいいお友達でいてね。じゃっ」

 くるりと背を向け、ダッシュで逃げる。「待って」と追いかけてる怖い人! 玄関まであとちょっとというところでその辺に放置してあったスリッパを踏ん付け、滑って盛大に転倒!! やっちまったぁぁぁぁと思ってるうちに顔面を強打した……。そして鬼ごっこは終わったのでした……。

「ゆめ……大丈夫? スカート捲れてスイカ柄が丸見えになってるけど。ところでそういう下着ってどこで売ってるの? 陽鞠さんはいつも感じている疑問をこのタイミングで投げつけてみました」
「違うでしょっ、このタイミングでそれは違うでしょっ……!」
「どうでしょう? このタイミングでのスイカ露出。もしかして私を食べての意思表示という可能性も」
「ないわよ変態バカァ!」

 体勢を立て直し服装も直してバカ女を睨みつける。なんでササヤマはこれの彼女になったんだろう……。気の迷いかな。それとも精神操作的なヤバイやつかな。チョコに血をいれるとか言ったし、すでにヤバイ薬とか盛られてた可能性もそこそこあるんじゃないの?

「真面目な話大丈夫? 病院行く? おでこ赤くなってますが?」
「大丈夫よこのくらい」
「頭大丈夫? 病院行ったら?」
「明らかに悪意を感じる言い回しに変わったんだけど!?」
「頭大丈夫? テスト大丈夫?」

 大丈夫じゃないからヒマリに宿題見てもらったり、勉強教えて貰ったりしてるのよおおおおおおおお!!

「必殺のチョキを喰らえ!!」
「ぎゃあああああああああっっ!!!」

 ヒマリにチョキによる目潰し攻撃を仕掛けたら、大げさに叫びつつ後方にジャンプ。ササヤマが踏んだスリッパの片割れを踏み付け盛大にすっ転んだ。

「……うぐぐぐ、こんな、はずでは」
「さて、アホ。覚悟はいい?」

 若干痛みはあるもののこの程度慣れたものだ。ヒマリに足を掴まれて転んだり、ヒマリにスカートを掴まれて脱げた挙句に転んだり、勢いよく走ってきたヒマリがスピードを殺しきれずに突っ込んできてすっ転んだり。ええ、ホント、慣れたものね。ははははは……! 思い出したら泣きたくなってきた。

「ま、待って……今、本当に余裕がないから」
「だから今のうちに日頃の恨みを晴らしておこうかなって思って」
「あの、ゆめちゃん……? 目が、マジです、よ? というか泣くほど痛いのならやめていいの、よ?」

 ヒマリのせいで転んだことが何度もあるササヤマは嬉しくないけどそこそこの耐性がついてるの。だから回復するのも早い。それに比べてヒマリの方は慣れてない。つまり色々とやり返すチャンスと言える。

「覚悟はいいかっ! ヒマリ死ねえええええええ!!」
「ごめんなさあああああああああ!」

 そして、ヒマリは死んだ。ついでにササヤマの心も悲しくなった。
 馬乗りになってヒマリの巨乳を揉みまくったんだけど、なぜヒマリはこんなにもヒマワリサイズなのにササヤマはササユリサイズにも満たないのか! いずれ二人がくっつくこと前提で神様がバランスをとったとかなじゃないでしょうね!! 酷い! 酷い、ひどい……。ああ、泣きたい。大泣きしたい。

「ヒマリを殺してササヤマも死ぬー!」
「いくらなんでも大げさすぎるでしょう。チョコにちょこっと母乳いれてあげよっか?」
「どうやら……全然反省とかしてないみたいね」
「待ってくださいゆめさん。顔はやめてえええええ!!」

 バチーンととてもいい音が響いた。
 それから数分後、

「ゆめさん、ごめんなさい。調子に乗りました」
「分かればよろしい」
「ゆめちゃん、ちょろい。チョロイン」
「もう2、3発いっとく?」
「ノー!」

 もう、まったく! これだからヒマリは! と、心では怒ってるはずなのにどうにも笑みを浮かべてしまうのはなんでかしらね!

「ゆめは笑ってる方が断然可愛いよ」
「うるさい!」

 急に可愛いとか言うなし。顔の温度急上昇だし! これだからヒマリは困る!!

「おじゃましまーす」

 誰かきた!? 後方を確認したら両手にビニール袋を持った史恵だった。

「……ゆめりんとお楽しみ中のところ失礼しまーす」
「違うっ!」
「ひまりん、そのほっぺのモミジなーに?」
「今ゆめちゃんとSMプレイをしてまして。予想以上に激しかったのよ」
「してないわよ!! 何変なこと言ってんの!? 違うからねっ!?」

 両手を頬に当ててくねくねするな気持ち悪い! これ以上続けていると史恵の変な勘違いが加速しそうなので慌ててどいた。

「おぅおぅ相変わらず仲いいねー羨ましい」
「だから違うからね。ところで何で史恵が朴木家に?」
「ほら、チョコの日近いからねー。一緒に作ろうって約束してて。チャイム鳴らしたけど反応なかったよー」
「へー……ササヤマというものがありながら他の女とチョコ作りねえ」
「た、大変だ……ゆめちゃんのメンヘラが発症した!!」
「メンヘラって何……?」
「なんでもありません。ゆめちゃんも一緒にチョコ作ろう」
「オッケー。ヒマリが変なものいれないか監視しないとね」
「あれは冗談だったのに……」

 史恵が持ってきたビニール袋をキッチンへと運びこむ。

「ほーい、ひまりんご所望の材料買ってきたよ。外雪降っててー、寒かったよぅ」
「積もったらヒマリを雪だるまにしよう」
「体冷えたらゆめちゃんが温めてくれるんだよね?」
「カップ麺食べるついでにヤカンのお湯かけてあげる」
「わーお。ゆめちゃん過激」

 とにかくチョコを作ることになった。なぜササヤマはその事を何一つ聞かずにここにいるのだろうか。全てはヒマリが黙っていたせいである。チョコ作ってて宿題が無事に終わるのか謎である。明日のササヤマはいろんな意味で大丈夫なんのか心配。
 そもそも手作りチョコってどうやって作るの? 「ユセン」ってなんだっけ??

「そー言えば、さっき言ってたチョコに何か入れるとか入れないってなーに? 抹茶とか? アーモンドとか?」
「もっとこう生理的に受け付けないもの」
「蜘蛛の足とか?」
「やめてっ、さすがの陽鞠さんもそこまでのものは入れようとしなかったから!」
「いや……ササヤマ視点で言わせて貰えればイーブンよ」

 そもそも血はOKなのにその他はダメって……。ササヤマは血はかなり上位ランクの異物だと思う。見ていた感じ何かヤバイものを投入した形跡は今のところない。というか、ササヤマ何もしてないうちに細々していたチョコレートがドロドロになっていき、今は氷水で冷やされている。温度計を使っているけどそんな本格的にやらないと駄目なの?
 適当に融かして形を整えればいいんじゃないの? と一瞬思ったけど、レシピ通りに作らなかった結果とんでもなく不味いものが出来上がるというのは創作物ではよくあるパターン。漫画や小説並の口に入れた途端に気絶するような衝撃が発生するとは思えないけど、美味しくないものが出来上がる可能性はある。レシピというは完成された究極の形の一つだから、素人が下手に手を加えていいものじゃないのだ。きっとそうよ。
 とはいえ温度計を使うような料理はササヤマには高度すぎて無理だと思う。しかし今後も何かある度に見ているだけというのは流石にどうかと思う。少しずつでも料理の練習して、いつかヒマリに……。

「ゆめりーん」
「なんでもないから!」

 やばいやばい。やることなさすぎて思考の海に沈みかけていた。

「ひまりん、ゆめりん。何か入れる? スライスアーモンドあるよー?」
「スイカがあれば欲しいわね」

 ササヤマの下着のことか!!

「ヒマリコロス……てかササヤマ本気で何もしてないんだけど。仮にこれをヒマリにあげたとして何の意味があるのか分からないんだけど!」
「じゃ、じゃあ……あたしの分のチョコにはゆめの唾液をたっぷりと!」
「……うーーーん、まあ、ヒマリがそれでイイって言うのなら、まあ、うん」
「私はアーモンドを上に乗せようかなー」

 史恵のツッコミが入ることもなくチョコレートin体液が完成してしまった……。なんてこと……あれだけ嫌がっていた異物をこのササヤマが入れることになるなんて。それを大好きなヒマリにあげないといけないなんて……! ササヤマはどうすればいいのよ! 何なのこの無駄すぎる葛藤は!! ああもう全部あのアホが悪い!! だから考えるのはやめる!!

 そして2月14日。バレンタインデーがやってきた。ヒマリが我が家にやってくることになっているので来るまでベッドの上で待機である。
 ヒマリは幼馴染でありササヤマの親とも面識はある。というか母的には娘その2であるため、一々ピンポン押さずとも玄関は顔パス状態だ。
 待つこと十数分。玄関のドアが開き、トントンと足音が響いてくる。

 この日のために準備したのだから、覚悟を決めろササヤマ!
 足音が近付くにつれて、心臓の鼓動が加速していく。ああ、なんか心臓が破裂しそう。やっぱり来ないで! そのまま帰ってくれてオッケーよヒマリ!

 そんな思いは裏切られ、部屋のドアがゆっくりと開きヒマリが顔を見せた。

 だからササヤマは、だから私は――言う。

「ちょ、チョコレートは……わたし、よ!」

 今のササヤマの格好を簡単に説明するのなら、全裸にリボンである。さすがに唾液入りのチョコレートは却下よ却下! あんなものを渡すくらいならササヤマは自らを捧げるわ!

「きゃああああああああ♪ 何その格好♪ ゆめちゃんかわいい♪」
「何言ってんのよ、もうっ!!」
「ゆーめちゃん、顔真っ赤にしてどうしたんですか♪ うふふふふ♪」

 なんかヒマリが気持ち悪い笑顔だ!! これは失敗だったんじゃないのかと今更ながらに後悔する。しかしもう賽は投げられてしまった! 逃げるコマンドを実行しようにも出入り口側には大魔王がいる!! 仕方ないのでこのまま行く! このままなるようになれ!

「だってしょうがないじゃない! ササヤマは何にもできなかったんだから!」
「うん。嬉しい! ゆめがこんなサプライズを用意してくれてるとは思わなかったから」

 ま、まあ、喜んでくれているのならいいのかな。

「でも、そっか。チョコレートか。ゆめはチョコレートなんですね。それじゃあ食べないとね! いただきまーす!!」

 ヒマリがジャンプして抱きついてきた。というか完全にベッドに押し倒されるような形になってるけど、まあいいか。今日くらいは許す。

「ゆめちゃん可愛いわー、写真撮っていい?」
「アウト! それは完全にアウトだから!!」
「じゃ、じゃあなめていい? チョコレートなめていい?」
「え、あ、……うん」

 はたしてこんな裸同然なササヤマが、ケモノのようなヒマリにペロリとなめられるだけで済むかどうかは考えないでおく。

「ゆめちゃん大好き!」

 えーい、なるようになれ! 召し上がれ!!

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