僕と、ドラと、ザ☆ドラえもんズと。(25/29)縦書き表示RDF


僕と、ドラと、ザ☆ドラえもんズと。
作:文月



第25話。甘い香りに誘われて。


2階に上がり、片っ端から扉を開けて行く。

鍵は三つ、今ここにあるのが1つ。

あと二人、クロネコの刺客がここか、3階にいるはず。



そして、ドラがある部屋を開けた。そこは調理室のような物らしく、開けたとたんにふわっと甘い匂いが漂って来た。

 「ここだぁ!」
ドラが叫ぶと、他の皆がその部屋に一気になだれ込む。僕は一番最後、取り残される形になってしまった。僕も急いで中に入ると、そこは別世界のようになっていた。

学校の家庭科室のようなへやのテーブル一杯においしそうなお菓子が所狭しと並んでいる。


アイスクリームにプリン・アラモード。カラフルなゼリーにドーナツ。
ショートケーキにシュークリーム。ドラ焼きもあれば、羊羹だってある。



部屋に漂うバニラエッセンスの香りが気持ちを和ませてくれる気がする。

 「わーい、ドラ焼きドラ焼き〜!」

一番にドラ焼きに食いついたのがドラリーニョ。いっただきまーすと言ってドラ焼きを口にほおばる。
それを見て、我慢し切れなくなった他の皆も次々に食い付いて行く。
王ドラは最後まで警戒してお菓子には手をつけようとはしなかった。それでもちょっと食べたそうにしているが。

―――あのさぁ。
僕はちょっと肩を落とす。
敵陣なんだから、毒があったりとか、考えた方が良いんじゃないの?罠かもしれないし。

なんだかさっきまで皆にあった物凄いやる気が、急に失せた気がする。
そんなことを考えていると急に叫び声が聞こえた。




 「あぁ〜!!小麦粉がなくなった!!困った、困った。」
そして準備室から出てきた影は写真に移っていた少女のと一緒だった。



3色のコック帽に、ベージュのちょっとはねてる髪の毛。
栗色の眼鏡に帽子と同じ3色の服。


 「おや、久し振りだねぇ。ドラえもんズ。元気してたかい?」




 「ジェドーラ!!!」


僕にとっては初めて聞く名前だった。王ドラの方をチラリと見てみると、目が合った王ドラが説明してくれた。


 「彼は超一流のパティシエです。僕達と同級生。でも…。」

言いたい事はわかる。今は彼も敵だ、という事だ。
僕がジェドーラの方へ向き直ると彼と目が合った。彼はにっこりと笑って


 「始めまして、君は、お菓子は好きかい?」

 「え、うん。好きだけど…。」

 「なら食べて行くと良い。大丈夫、毒なんて入ってないから。
毒なんていれるのは、僕のポリシーに反するからね。」」

そう言って彼女は僕にケーキの乗った皿を渡す。王ドラにも自分の作ったドラ焼きを手渡しした。
僕が恐る恐るクリームたっぷりのそれを口に入れてみると正直、めちゃくちゃ美味しかった。静香ちゃんには悪いかもだけど、彼女が作ってくれるのよりもこっちの方が美味しい。

 「美味しい…。」
僕が思わず呟いてしまった一言をジェドーラは偉く喜んでくれたようだ。満面の笑みを僕に返してくれた。
王ドラもちょっと躊躇いながらもドラ焼きを食べる。一口食べてから毒が入っていないことが分かると、酢に醤油にラー油をかけまくって食べ始めた。


 「相変わらず酢と醤油とラー油なのかい?王ドラ君。」

 「当たり前です。」
からかうように言うジェドーラにちょっとムッとしながらも王ドラは最後の一口を口に放る。


―――ん?僕何か忘れているような気がしないでもないような…。えーっと…
あ。

 「そうだ!鍵だよ鍵!」


 
 「あ。」

他の皆はすっかり忘れていたようで、僕がそう言うと皆我に帰ったように食べるのを止めた。
皆ほっぺたにクリームや餡子をつけたまま、ジェドーラの方を見る。

 「ありゃ?君達鍵欲しいの?」
すっ呆けた事を言い出すジェドーラ。

 
 「ま、とりあえず落ち着いて。別に僕は洗脳されたわけでもないし、君達を殺すつもりも更々無いから、安心して。」


 「じゃ鍵くれ。」
キッドがジェドーラの方に手を伸ばすも、ジェドーラは鍵を渡そうとはしなかった。溜め息をつきながらジェドーラはテーブルの上のボールに入ったクリームをかき混ぜ始める。

 「それは無理だね。組織に所属している以上はその組織の決まりには従わなければならない。」

 「じゃなんでクロネコに入ったんだよ」

 「お菓子を作りたかったから。あ、そこの砂糖取ってくれる?」

左手でドラニコフの近くのテーブルにあった砂糖の袋を指差す。ドラニコフは言われたとおりにその袋を投げてよこした。砂糖をボールにちょっと入れてから、またジェドーラは話し始めた。
その瞳には、ちょっと悲しさも混じっている気もした。

 「僕がこの姿になって少しした頃かな。薫が来たんだ。

僕も最初は断ってたんだけどね、その内猫型ロボットは全員洗脳するつもりだから入るなら今、とか言い出して。

笑っちゃうよね、普通のセールスみたく軽い口調で言うんだもの。

それでも僕は洗脳されたくなかったんだ。

僕の大好きなお菓子作りは、美味しいものを作りたいって言う気持ちがないと作れない。
だから僕は洗脳されちゃう前にここに入ったんだ。
まさかこんな事になるとは思ってなかったけど。」


クリームの角が立つようになるとボールを置き、まだクリームの塗られていないスポンジケーキにそれを塗り始める。


―――凄い。
お菓子作りにここまで気持ちを入れこむ人なんて始めてみた。

 「と言うわけだから、鍵は渡せないよ。
どうしても欲しいんだったら、まぁその時は…戦うしかないね。」


 「ジェドーラ…。」

 「んじゃ、勝負するしかねえな。」

そう言ったのは、他でもないキッドだった。ケチャップとマスタードをホッペに付けたまま、話し始める。

 「俺達は鍵とって小龍達に会いに行かないといけねーんだ。
ワリいけど、鍵貰ってくぜ。」


指についたクリームをなめてから、ジェドーラはフッと笑う。眼鏡をクイと上げてから、泡立て器を持って言う。

 「うん、そう言う所も君達は変わってないね。
仲間の為に猪突猛進ってカンジが。良いよ、勝負だ。

レッツ・クッキング♪」


彼女がウインクをするのと同時に、引き出しの中の皿がカタカタと動き始めた。
ガラスの割れる音がして皿が彼女の周りに集まって行く。クルクルと皿が彼女の周りを回り始めた。

 「制限解除したサイコントローラー。僕が念じるだけでここの食器達はその通りに動くから。
あ、コントローラーは僕の体の中だから。頑張ってね。」



いや、なんか手加減無しだね。
さっきまでの良い雰囲気どこへやらってカンジなんだけど。












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