帝丹小学校――。
「あ、哀ちゃん。また来てるよ〜、新一お兄さんと快斗お兄さん」
歩美は窓から見える門の方を指さした。
「…はあ」
哀はため息をはき、窓から目を反らした。
「ホントに毎日来てるよね〜」
「どういう嫌がらせなのかしらね」
「あ!哀ちゃん、見て!なんか喧嘩してるよ」
「させとけばいいでしょ」
「やっぱりクールだね…」
歩美はそんな哀に苦笑いしながらホームルームをしている先生に目線を向けた。
(本当にやめてくれないかしら…)
哀はもう一度チラリと門の方を見て、ため息をはいた。
新一と快斗は毎日といって言い程、帝丹小学校の校門の前に来ていた。
それも初めの頃は小学生達も騒いだりしていたが、今では慣れたもので、それが当たり前の光景になっていた。
「オメー、毎日毎日頑張るよな」
ポケットに手を突っ込んだまま新一は言った。
「哀ちゃんの為〜。新一には負けたくねーし」
快斗は頭の後ろで手を組んだまま、そう言った。
「ケッ」
「新一も頑張るじゃん。時間にルーズなオメーが5分前行動だなんてな」
「俺はオメーと違って、学校からも家からも近いんでね。離れた街からわざわざ来る奴とは違うんだよ」
新一と快斗はお互いに引き攣った笑いで睨み合いながら口喧嘩を始めた。
「愛の力だよな」
「ただの馬鹿だろ」
「オメーは推理バカだな」
「あん?何か言ったか?泥棒バカ」
「耳遠いのか?でかい声で言ってやろうか?すーいーりーバ―――…」
「いい加減にしてくれない?恥ずかしくないの?公衆の全面で」
快斗の言葉を遮るように声をあげたのは、ランドセルを担ぎ、学校から歩美と出てきた哀だった。
「哀ちゃーん!!」
哀の登場で快斗はコロリと態度を変えた。
「ケケケ…怒られてやんの」
「工藤君、貴方にも言っているんだけど?」
「え"」
新一は横目で快斗を見ながら喉で笑い馬鹿にすると哀から鋭い一言がはいる。
「バーカバーカ」
快斗が新一を指さしながらそう言うと新一はムスリとした。
「よし、灰原帰るぞ」
「いや、哀ちゃんは俺と帰るんだよ!」
「オメーの家は遠いだろ!俺は隣なんだからな!」
「そんなの関係ねぇっつーの!!」
また口喧嘩を始める二人に哀はため息をはいた。
「悪いけど、今日は今から吉田さんと映画を見に行くの。…じゃあさようなら」
哀がそう言うと新一と快斗は
「え"ぇ"!?」と声をあげた。
「まじかよ!哀ちゃ〜ん、俺遠くからわざわざ来たんだけど!!」
「頼んでないし、知らないわよ、そんな事」
「そんなああぁぁ…」
快斗が情けない声を出すと歩美は申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね?新一お兄さん、快斗お兄さん」
「こんな人達、ほって置けばいいのよ」
「で、でもぉ…」
いいのかなぁ…と歩美は新一と快斗に気を使う一方、哀は
「ほって置きなさい」と言い切った。
「…保護者…保護者として着いて行ってやるよ!!」
新一がそう言うと、しょげていた快斗もニカッと顔をあげた。
(俺って頭いい!!)
(新一もたまにはやるじゃん!!)
「結構よ」
受かれ気分だった二人に哀はまたあっさりそう言った。
「…つめたっ」
「グサッと来た」
新一は肩を落とし、快斗は手で胸辺りを押さえた。
「じゃあ、みんなで行こう!!」
「吉田さん…!」
「いいじゃない哀ちゃん!たくさんいた方が楽しいよ、きっと!それに新一お兄さんも快斗お兄さんもカッコイイし!!ね?」
歩美がそう言うと今度は哀が肩を竦めた。
(吉田さん…優しいのはいいんだけどね…。ただ工藤君がいると事件に巻き込まれるから嫌なのよ…)
「歩美ちゃんは優しい…」
新一はしみじみとした言い方でそう言った。
「ならこの際、歩美ちゃんに乗り換えたら〜?俺は哀ちゃん一筋だけどね〜♪ね?哀ちゃん」
「知らないわよ」
デレデレとした顔で快斗は哀に言うが哀はスパッと言い放つ。
「バーロ!!なんで小学生に…!!」
「哀ちゃんも小学生だもんねェ〜」
「うっ…」
そりゃそうだけど!!と新一が言うも虚しく、快斗は相変わらずニヤニヤしている。
(ったく黒羽の野郎!!灰原の前だとデレデレデレデレ鼻の下伸ばしやがって!!)
その後、四人で映画館に行くが、哀の隣をめぐって争いが始まり映画どころじゃなくなったのは、言うまでもない。
「お兄さん達うるさいよぉ〜」
「どっちが保護者か分かったもんじゃないわね」
映画館でのマナーは守りましょう。暗くなったらお静かに…。
「どけェェ黒羽ァァ!!」
「いーやーだっ!!新一が向こう行けよ!!俺は哀ちゃんの隣ィィ!!」
「灰原の隣は俺って決まってんだよォォ!!」
「んなもん、誰が決めたんだよ!!ここは譲らねェェ」
その後、映画館を出てから新一と快斗は哀にしっかりと説教されたとか。 |