――君がいたから僕がいる
――君が僕の生きてる証
――僕には君が必要で…
――君にも僕が必要ならば
――…ずっと一緒にいよう
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この娘と俺を残して…お前は何処へ行くんだ?
一人で行ってしまうんだね。いつも一緒だと約束したのにな。
笑う時も、泣く時も、永遠に眠る時も。なのに先に一人で…
――迂闊だった。
まさか、まだ組織の残党が捕まりそうりなり自殺したジンに代わり、宮野志保の暗殺を実行していただなんて。
幸せすぎて、気付かなかったのかもしれない。俺も志保も、微妙な変化に。
求めていた幸せを手に入れたと…、俺は世界一幸せなんじゃないかって思っていた…なのに。
俺と幼いこの娘の前で…大切な君が銃で撃たれ赤く染まっていった。ゆっくり地面に倒れながら…。いや、ゆっくりに見えただけ、だろうが。
あの時の感情は忘れない、初めて殺意ってのを感じた。…何度、撃った奴を殺してやろうと思った事か。目暮警部が止めていなかったら俺はきっと……。
悔やんでも、例え奴を殺したとしてもアイツは戻って来ないのに。
でも、怒りとか悲しみとか悔しさとか…いろんな感情が溢れ出して、止める術を俺はわからなかったんだ。
“アイツを返して”
そう思いながら何度も部屋の壁を殴って涙を流した。枯れる事を知らない涙が、止まらなくて。
アイツがいなくなって何日目かの夜。いや、何ヶ月かもしれない…。
俺はまだ悲しみの中で、一人暗い部屋でベッドに寄り掛かり膝を抱えていた。
…俺はこんなにも弱かったのか。アイツがいないと何も出来ないなんて…。
…それ程、俺にとってアイツは全てだったんだ。
「……志保…っ」
目をつぶれば瞼の裏には志保がいて、熱い雫が頬を伝う。
――泣かないで。
…志保?頭の中に響くのは確かに志保の声。
――工藤君、もう…泣かないで…。
志保、志保…そう言いたいのに声が出ない。目を開けたいのに、目を開ける事が出来ない。
――いくら悔やんでも、何も変わらないわ。前を見て歩いて…。貴方なら出来るはずよ。貴方は強い人だから…。
俺は強くなんてない。出来ないんだよ。当たり前に前向きだった事が、今は出来ないんだよ…。
――あの娘もまだ小さいわ。あの娘には貴方しかいないのよ。貴方がそんなんじゃ、あの娘はどうなるの?
あの娘は貴方に、任せたわよ。
無理だよ。俺はお前がいないと何も出来ないんだよ。
――大丈夫。私はずっと見ているから…貴方の事も、あの娘の事も。傍でいつも見ているから。
志保…。
――しっかりしなさいよ。…父親なんだから。
志保…。
――ねえ、工藤君。私はもういない。いくらそうしていても私は返らないの。……悲しいの…そんな貴方を見るのは…。
志保…っ。
――強くて、輝いてて、腹が立つくらい自信家な貴方の方が好きよ?だから…笑って欲しいの。
志保。…ちゃんと傍にいろよな…?約束だからな?
――いるわよ。約束するわ。だから工藤君も約束してちょうだい。もう、悲しまないって。
…約束、するよ志保。だからオメーも約束守れよな。
愛してるよ、志保。世界一、愛してる…。
――私もよ。貴方の事、愛していたわ…。
「…志保」
声を出せたと同時に目も開ける事が出来た。
静かな部屋に俺だけが息をしている。…あれは夢だったのか…。妙にスッキリとした頭でさっきの事を思い出す。
志保が前を向いて歩けと言った…。俺なら出来ると言った、ずっと傍にいると言った、約束すると言った。
だから俺も約束を守る。いつまでも、悲しんでなんていられない。俺には守らなきゃいけねー奴がいる。
志保の分もそいつと生きて行くんだ。
俺はそう思い、頬に残る涙を拭った。
――それから数年後。
「おとうさん、なにしてるの?」
「愛美…。ちょっと、お母さんの事を思い出してた」
家のリビングの大きなソファーで、俺と赤ん坊を抱えている志保の写真を見ていた。
「ふうん。おとうさん、そのシャシンすきね」
いつも見てるね、と言われて愛美を膝の上に乗せた。
俺と志保の子が5歳になった。どんどん成長して、どんどん志保に似てくる。
名前は灰原哀のアイと明美さんのミをとって愛美にした。
未だ探偵をしている俺は家を空ける事が多い。仕事の時は愛美を博士に預けている。
この娘には寂しい想いをさせていると思う。
「おとうさん、きょう、おかあさんのトコにいこう」
「そうだな…。お母さんも愛美に会いたがってるよ」
「あいみ、きのうおかあさんに、あったもん」
「そうなのか?ズルイなァ…父さんも会いたいのに」
「おかあさんね、ごめんねって、なんかいもいってたよ」
ごめんね、か…。アイツらしいよな…。
「よし、今日は天気もいいしお弁当持って母さんの所行こうな、三人でご飯食べよう」
「やったあ!…でも、おとうさん、おべんとうつくれるの?」
そう言ってジト目で見上げる顔は志保にそっくりで、生意気な言い方も同じだ。
「父さんだって料理くらいできるんだぞ」
「ホントかしら」
ホント、そっくりだよ。おかしくてククク…と笑った。何が面白いの?と不思議そうな愛美の頭を撫でて、俺はキッチンへ行った。
数時間後。車に乗り、晴れ渡る空の下をスピードをあげて向かった。
志保が眠る静かな場所まで――。
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