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ワールドネイション  作者: 雷帝
第二章:草原編
32/39

草原の戦塵

ようやっと上がりました

長らくお待たせしました


※近々最初のプロローグを差し換え予定です

 大森林地帯から北方に見える巨大な山脈を越えると一気に視界が広がる。

 広大な草原地帯。

 南方からの湿った空気が大山脈に阻まれ、大気に含まれる水分が山脈に豊かな雨をもたらし、流れ下った水分は大森林地帯を潤す。

 反面、その更に北には乾燥した大気が流れ込み、雨が一気に少なくなる。

 更に、冬には北方から寒気が流れ込む為に、年間の温度差が激しいものとなる。いわゆるステップ気候だ。

 この結果、この地は通常の過程、荒地から草原へ、草原から雑木林、更に通常の森へ、という段階を超える事が出来ず、長らく草原地帯のままだった。

 このような土地柄では農耕は難しい。土地に滋養がない為に、農耕を行ってもすぐに土地が痩せてしまって、作物が育たなくなるのだ。野焼き、という手段で一時的に草を燃やして肥料とする事は出来てもその後が続かない。この世界ではまだまだ堆肥などの肥料を積極的に用いた土壌改良は行われてないという事もある。

 結果として、この地に生きる獣人族は牧畜を主体とした遊牧民としての生活を営んでいる。

 

 無論、人族とてこの地への進出を考えなかった訳ではない。

 だが、農耕民としてやって来た人族がいきなり牧畜主体の遊牧民としてやっていけと言われても無理だ。生活スタイルが全く異なる上に、そこには厳然たる長年積み重ねてきたノウハウの差がある。

 かといって、これまでのように農耕を行い、田畑を切り開く事で実質的な支配地を広げようにも数年もすればまともに作物が育たなくなる。結果として、開拓民がやって来たまでは良かったものの、草原の端っこをちょいと開発した段階で離散する者が相次いだ。

 人族側がこの草原を開拓するよりも、この地に生きる獣人族と交易による共存を図った方が得だと理解するにはそう時間はかからなかった。

 かといって、この地の者達は人族の国家の支配を受けてもいない。

 元より身体能力に関しては人族を上回る獣人族、そこへ遊牧民ならでは、というべきか、優れた騎馬の腕が加わるのだ。おまけに彼らは確かに普段はばらけていても、力で押さえつけようという外部の、人族の勢力が加わると一致団結して立ち向かい、おまけに彼らは本拠地というものを持たない。

 結果として、強欲な人族も「割に合わない」と理解するのに時間はかからなかった。お陰でこの地の獣人族と人族はある程度の交易以外は相互不干渉、という形で推移しており、エルフ族と比べれば人族との衝突は少なくて済んでいる。とはいえ、獣人を見下し、騙そうとする者などもいるし、そうした行為が判明した場合の人族側の処罰が同じ人族を騙した場合に比べて甘い、或いは逆に獣人族の掟に則った処罰が人族との間に騒動を起こすケースもあり、あくまで比較の問題だが……。

 

 「ってのが今の所把握出来た情報か……」


 ティグレが獣の顔ながら天幕の中で書付を睨みながら呟く。

 彼が常盤から借り受けた部隊は幸いな事にある程度の農作物と水を生産可能な種が混じっており、無論、湧水樹程の大量の水の生成は不可能にせよ、彼の現在の小規模な集団を養うには十分な量だった。今後、規模が拡大すれば早晩追いつかなくなるだろうが。

 そう、現在ティグレは既に小規模ながら部族を支配下におさめている。

 外部に対しては一致団結して立ち向かう、とはいえそれはあくまで外部の敵に対してのもの。同じ獣人族の、遊牧生活を選んだ者にはその暗黙の了承は適用されない。

 そもそも、ティグレが今こうして長的な立場に納まっているのもちゃんとした事情がある。

 その時の事を少し過去へと遡り記すとしよう……。 

 

 

 ◆◆◆


 

 「おいおい、こりゃあ一体何があったんだ?」


 こちらの世界へと来てからティグレの感覚は一気に研ぎ澄まされたものへと変わった。

 まあ、相対的なものだろう、とはティグレ自身も理解している。

 これまで人という枠にあった彼の感覚が動物のそれに置き換わっただけではなく、高レベルであった故の修正まで入っているようだ。そこにスキルや装備、更にはこちらは推測混じりとなるがゲーム世界での歴戦の指揮官という経験による直感までフィードバックされているらしいのだから当然と言えば当然の話だ。

 その彼の鼻に、こちらの世界へ来てから嗅ぎ慣れる事になった匂い……血の匂いを感知したのは少し前の事だった。


 (何事だ?)


 そう思ったティグレはそちらへと率いる部隊の進路を変えた。

 大森林地帯からここまでの道程で率いる部隊の総数は減少していた。出発時は騎兵相当の高機動型五十に移動型の湧水樹とでも呼ぶべき(その分出せる量は減少しているが)水補充役が三、栄養満点の果実を生成する食料生産型が五に偵察役の飛翔型が二、合計六十+ティグレで出発したのが山脈を越える間に偵察型が一、高機動型が実に十八失われていた。最もこれは補給を行う八体を重点的に守った結果でもあるし、山脈超えがエルフ達からの警告も受けていたが極めて危険である事を考慮するとかなり少ない損失で超えられたとも言える。何しろ、熟知した案内人なしでは全滅もありえる、と称される危険な地域なのだ。

 まあ、そのせいで山脈のこちらと向こう、エルフと獣人の交流もろくに為されていないという現実がある。

 そこをスキルも用い、危険な魔物をティグレ自身が打ち倒し、乗り越えてやっと一息ついたと思いきや漂ってきたのが血の匂い、それも一人二人ではないとくれば今度は一体何だという気がしないでもないが、放置するのもアレだ。獣に襲われていて、怪我をしている、といった可能性もある。

 

 (……怪我の治療がなあ。一応スキルはあるが)


 山脈を越える際に気付いた事だが、回復手段が非常に限られていた。

 もちろん、常盤からは別れる際に多数の回復薬を貰っている。けれど、使えばなくなるそれらはある種の切り札。何せ常盤に会えばまた貰えるだろうが、それには再び山脈を越えねばならず、かといってティグレなしでの山脈踏破は相当に困難。すなわち、薬を安易に用いていると山脈を越えた、薬がなくなりそうなのでまた山脈を越えて戻るという馬鹿馬鹿しい事になってしまう。

 かといって、ティグレは僧侶系のクラスではない。

 最低限の回復魔術ぐらいは習得しているが……。


 (まあ、ゲームなら回復専門の部隊編成すりゃ良かったからなあ……)


 こっちの世界へ来てからは常盤がそれこそ生きた回復薬みたいなものだから不便を感じなかった。

 最初も不便を感じなかった。

 実感したのは山脈に入って最初の戦闘があった後だ。軽い怪我をして治す段になって、はじめて気がついた。

 まあ、それでも瀕死の重傷とでも言うのでなければ大丈夫だろうと向かったティグレが間もなく見つけたのは小さな集団であった。

 パオ、と元の世界では呼称される移動式のテントのような家屋、それが全部で四つ。一つ一家族としても四家族程度、周囲の家畜が多いのか少ないのかはティグレには見当がつかないが……。


 (……まあ、少ないんだろうな)


 パオは一部に焦げた、或いは斬られたと思われる破損の痕跡があり、外に立っている若者も包帯を巻いているとなれば襲撃を受けた事は容易に想像がつく。

 例えそれを撃破したとしても、全ての家畜が逃げなくて、殺されたりもしなかったと考えるのはさすがに甘い考えだろう。

 状況を確認しようとは思ったものの、さすがにあのような見るからにピリピリした雰囲気を漂わせる相手の所へ集団で押し寄せるのは拙い事ぐらいは一目瞭然だ。こちらがやられる心配はないが、矢張り余計な騒動は起こさないに限る。そう判断したティグレは引き連れるゴーレム達に一時待機の命令を下すと一人彼らの方へと馬の歩を進めた。

 敢えてゆっくりゆっくりと目立つように近づいたが、案の定相当に警戒していた相手に誰何の声が掛けられた。


 「誰だ!!そこで止まれ!!」


 まだ矢をこちらへと向けてこそいないが、何時でも弓矢を構えられるように準備している。通常の、これまで出会った集団はここまでの警戒を見せず、むしろ旅人となれば歓迎してくれるのが常だった。それを考えると矢張り襲撃を受けた後と考えるのが良さそうだった。


 「怪しいもんじゃない、旅の傭兵だ」

 「……旅の?」


 まだ警戒はしているようだが、疑っている様子はない。というのも獣人族は種族全体が傭兵部隊とその里みたいな魔人族程ではないが傭兵が多い種族でもあり、その割合は他の三種族、人にエルフ、ドワーフにおける傭兵の比率を大きく上回る。もっともここら辺は他の主だった種族が定住を基本とする種族である事も関係しているだろうが……。

 それだけに、獣人族の旅の傭兵というのは珍しくはない。警戒しつつも若者が否定したりしないのはそこら辺の事情がある。


 「……一人で、か?」

 「んなわきゃねえだろ。ただ、どうにも刺激するのは拙い気がしたんで俺が先行して来ただけの事だ。……いるんだろ、怪我人」

 「………ああ」

 

 一瞬ティグレの言葉に顔が強張りかけたが、すぐに頷いた。 

 隠しても仕方がないと言うのもあったであろうし、それに感づいているなら襲う気があるならとっくに襲撃をかけていただろう、と予測出来たという事もある。

 それに……。


 「なあ、あんた……どっかに雇われてるのか?」

 「いんや?……安くしとくぜ?」


 若者の言いたい事を理解してのティグレの笑みと共に告げられた言葉に若者はどこかほっとした顔で「少し待っててくれ」、そう告げてパオの中へと入っていった。

 ……一発で信じたのを疑念に思うかもしれないが、こうした傭兵契約に関しては嘘は言わない文化が根底にある。もし、下手に嘘を言うと傭兵自体の雇用に関わってくるので傭兵ギルドを全面的に敵に回す事になる覚悟が必要になる。何しろ、これに関して嘘を言われると武器を持った集団を自軍内部に引き入れた上で裏切りを行われる危険が発生する事になり、そんな信用が置けない相手を雇用出来る訳がない。

 必然的に雇用が激減し、それで生活している者が路頭に迷う事になる。

 だから、どこかの国家の不正規部隊であっても、傭兵を騙って敵国への潜入を行うといった行為は行われないのが普通だ。こちらは傭兵を雇えなくなるという形で国にとって不都合が発生するからという事もあるし、一説には傭兵ギルドの抱える暗部によって始末されるからだとも言う。後者に関しては都市伝説レベルではあるが、根強く信じられている話でもある。 

 

 ……そして、案の定。

 僅かな時間の後、ティグレはこの小集団のまとめ役を仮に務めているという男性獣人と会っていた。

 通常は長が会うものなのだが……。


 「……対立していた部族からの奇襲で長は殺された、と」


 遊牧民とて好き勝手に歩き回っている訳ではない。それぞれに縄張りに相当する巡回地域が存在している。これは現実の遊牧民と同じだ。彼らは家畜がその地の草を根まで食べつくさないよう定期的にコースを巡回している。根まで食べてしまえば草は生えず、やがては乾燥した大地では砂漠化してゆく。

 この為、それぞれの部族は自分達の巡回地域を持っている訳だが……今回は彼らのそこへと他部族が侵入してきたという。

 事情は分かる。

 別段彼らとて好き好んで入り込んできた訳ではなく、落雷に起因する草原火災によって広範囲に渡り草が焼けてしまい、家畜を養う為の草が不足した事が原因だという。確かにそれでは困るだろう。生活の為に何とかしようとする、その気持ちは分かる。

 だが、だからといって他部族の巡回地に入り込んでいい訳ではない。入り込まれる方の部族にとっても死活問題。一つの巡回地を二つの部族が共有した所で待っているのは共倒れだ。

 故に双方は話し合いの場を持った。

 ……とはいえ、それを話し合いと言っていいのかは分からない。

 元からいたこの部族側は自分達の巡回地から出て行って欲しい、出て行くまでの道程で食べる分は見過ごそうというものであり、相手側は自分達の巡回地がある程度回復するまでこちらの一部を使わせろというもの。

 後者の要求は欲張りや傲慢に思えるかもしれないが、彼らとて必死なのだ。知られている真っ当な巡回路は既にいずこも抑えられている。

 無論、この草原はまだまだ広い、探せば既存の地の向こうに幾らでも新たな草原が広がっている事だろう……そこまで行くまでの苦労を無視すれば。

 新たな地の開拓。

 それはそう簡単な話ではない。

 草原ならどこでも同じではないか、草ならどこでもあるではないか、そう思うかもしれないがそんな簡単なら誰だって新しい地を開拓し、勢力を広げている。

 危険な魔獣の縄張りに知らず入り込んでしまうかもしれない、良い地だと思っていたら他の草食獣と気付かぬ内に競合していて何時もの感覚で向かった先に一片の草もない、という状況になっているかもしれない。水は手に入るのか、塩の確保は?と数え上げればきりがない。

 結果、どこか他の部族の地を奪うか、借りる。もしくは小規模な部族程度なら追加で入っても問題のない大規模部族の一員となる、といった手が考えられる。

 だが、いずれも難しい。

 奪おうとすれば当然他の部族と争いになるし、確実に勝てたとしても場合によっては部族の維持が困難になる程死傷者が出るかもしれない。

 借りるにしても、相手もそこまで余裕がなければ代価が大変だ。

 大規模部族にした所で「入れてください」「いいよ」という訳にはいかない。

 なので実際には幸運が微笑む事でもなければ部族がそのまま残れる事は稀で、大抵はバラバラになりあっちの部族に一家族、こっちの部族に一家族、といった形で引き受けてもらう形で部族としては解散してゆく、という形となる。彼らの部族が抑えていた巡回地は引き受けた部族がそれぞれの地域に近い範囲で話し合いの後に貰いうけ、その地が回復した後はその部族の抱える予備として現れる事になる。部族としては崩壊するが、生きるという意味では最も効率の良いやり方。互いの助け合いという意味合いでもあり、無闇やたらな争いを行わないという意味合いもあり余程余裕がないのならともかく、普通は将来への投資という意味合いで新たな巡回地と引き換えに誰かを引き受ける。。

 この部族もそれを想定し、一家族の引き受けは了承するつもりだった。

 交渉は最初の一回は成立しなかったが、そこら辺は暗黙の了承という奴だ。二日後を約した次の話し合いでは引き受けるべき家族が告げられるだろう……。  

 

 そう思っていた。


 まさか、交渉が行われたその晩に彼らが奇襲を仕掛けてくるとは誰も思っていなかった。

 何故彼らがそのような事をしたのか分からない。

 だが、はっきりしている事が幾つかある。それはこちらの部族が奇襲を予想だにしていなかった、という事実と彼らがいきなり殺しにかかってきたという現実だ。

 予想していなかった上に真っ先に族長のパオが攻撃を受けた。

 族長が殺されると小さな部族故に次に誰に従うかが分からない。彼らはあくまで軍ではない。通常なら戦闘など狩りの時ぐらいで族長が死ねば一旦引いて次の族長を決めてからまた戦いに赴く、そんな悠長な所が草原の獣人達にはあった。

 だが、一瞬一瞬の判断が事を分ける戦場では話は異なる。

 混乱する部族を的確に彼らは分断し、葬っていく。

 この小集団がその襲撃から逃れられたのは幸運にも彼らの家族に病人が出ていたからだ。

 幼子の風邪程度であったが、風邪とはいえ一定以上の者が風邪で熱を出して倒れたりしたら小規模な集団では大変な事になる。だから、部族としては一緒に動くし、治療の為の手伝いもする(一時的に他の者が家畜の世話の代行を行うなど)が、治癒までは多少の距離を置き、部族全体への感染を防ぐ。その為にやや離れた場所にパオを張っていた。 

 結果としてそれが幸運だった。

 夜の闇の中だ。幾ら獣人族が人族以上に夜目が効くとはいえある程度離れていれば、そしてそこの間に小さいとはいえ丘が挟まっていれば逃げる時間程度は稼ぐ事が出来る。

 一部の逃れてきた者達もまとめ、彼らはこっそりと逃げ出したのだ。だが……。


 「……このままでは我らの先祖伝来の地は奪われ、我らの部族は解散するしかないでしょう」


 悔しげな様子で仮長という立場を務めているという老人、山羊の獣人が言った。

 周囲にいる他の大人達も悔しげだ。

 ……尚、獣人達というのは山羊から山羊が生まれるという事はなく、山羊同士の夫婦から獅子の子が生まれたり、獅子と牛の間から象が生まれる事もある。遺伝子はどうなってるんだ!と思うかもしれないがそこら辺は長い年月の間に異なる種の獣人同士が婚姻によって入り混じり、どこにどの獣人の血が混ざっているか分からない、それらが結果としてこのような形で現れるのだ、といった所で納得して欲しい。

 だから、ここには色んな動物の顔がある。普通の人なら幾ら表情豊富でも動物の顔の感情は分かりにくいかもしれないが、今のティグレにははっきりと彼らの悔しさが読み取れた。

 気持ちは分からないでもない。

 何故、自分達のものなのに強引な手段で奪われ、黙って逃げなければならないのか!

 それも、仲間を、家族を、友人を、恋人を殺されて……!

 騙され、欺かれ、隠され……真実をそれと知らされず、誤った真実を事実と思い込まされ、自らが悪いのだとそう信じ込んでいたならば誤った事実を事実のように主張し、金を、物を、誇りを奪おうとする相手に対しても或いは屈してしまうかもしれない。金を、物を差し出してしまうかもしれない。そも、詐欺とはそういうものだ。

 だが、真実を知っているならば相手に対して怒りを感じるのは当然の話だ。

 

 「成る程な……で」


 俺に何をして欲しい?

 そう、ティグレは話しかける。

 非情なようだが、無償でこちらから何でも手助けをするとは言わない、相手も要求しない。

 傭兵は金を物を貰い、戦う存在だ。

 彼らが家畜を養い、それを育て、潰して生活するのと形が変われど戦いをもって生きる術としている。

 世の中には情に訴え、或いはそれを盾として金を支払うのを渋る者もいるし、酷い者となれば権力を持って圧力をかけたりする者もいる事を知っているティグレとしてはこうした割り切った態度は好感を持てる。

  

 「我らの部族の仇を、責を負うべき者に然るべき裁きを」

 

 そして、自分達の巡回地を取り戻して欲しい。

 そう仮長は告げる。

 細かな点を確認すれば、別に彼らは相手の殲滅を要求しているのではない。責任者たる相手の……長か、或いはその周囲か分からないがあのような卑劣な真似を仕出かした者達を率いていた者に相応の処罰、まあ、ここでは殺して欲しいという事になる。

 従った戦士達に責がない訳ではないが、殲滅してしまえばあの殺戮に参加していなかった子や女はどうやって生きるのか、という問題が生じてしまう。

 彼ら自身の小さな部族は更に小さくなってしまったので逆に彼らを吸収しても良い、という事もある。……無論、彼らが反省し、悔いればの話だが。


 「納得出来るのか?それで」

 「納得しなければなりませぬ」


 ティグレの問いに目を伏せた仮長は答えた。

 納得?誰が?……無論、仮長を含めた彼ら自身が、だ。

 例え命令に従っただけでも、家族を恋人を殺した相手を許せるのか、という事だったが、彼らがそれで自分達を納得させられる、というならティグレとしては構わない。問題は。


 「で……?あんた達は」

   

 俺達にどんな報酬を支払えるんだ?

 そう問いかける。

 タダ働きがありえない以上、報酬が必要となる。それが払えないのならば依頼を受ける事は出来ないし、払える範囲で動かせる戦力で依頼が無理と判断したなら断らねばならない。もっとも、ティグレ本人は口実として傭兵という言葉を用いているので傭兵の報酬の一般的な相場など知らないし、そもそも実質的にはあの部隊は自分一人の部隊だけだ。

 金では手に入らない、この地の風習とでも言うべき事、それが手に入るならティグレは依頼を受けるつもりであった。ただし……。


 「報酬として……我らの部族の新たなる長の座を提供したい」


 彼が想定していたより過分な報酬であったが。 

疲労たまると何する気力もなくなりますね……

何とか今月末までに上げられました

次はなるだけ早く上げられるよう頑張ります


前書きで書きましたが、改めて見ても詰め込みすぎだ、と思ったプロローグという名の設定を近々差し換えます

それと、近い内に飛竜になりました、のオリジナル展開版も上げたいと思ってます

……何とか周辺落ち着いてきたので

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