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作:さくら猫


「あぁ、なんと嘆かわしいことなのだ」
神は手近に居た一人の天使を呼び寄せると、時間ときを問う。
「今は人間世界では××××年で御座います。」
天使は短く主の問いに答えた。
「そうか、私はそれほど長き時間ときを眠ってしまっていたのか。」
そして、神は地上を見下ろし切なげに呟いた。
「長き時間ときの間に、あの者達は変わってしまったのだな。自分たちのチカラで何かを生み出すことを忘れてしまい、ただ消耗するだけの存在になってしまったのか。」
神が知っていた頃のヒトは違っていた。
全てのヒトがたった一つの林檎からも、無限の世界を生み出す想像力ツバサを持っていた。

だが、今のヒトは違う。
林檎は林檎でしかない。
常識や固定観念という鎖が彼等のツバサを縛ってしまったのだ。
彼等は、もう飛ぶことすら忘れてしまったのか。
この大地で唯一、ツバサを持つ存在でありながら、私がもっとも嫌う、機械のような存在に一番近づいてしまったというのか。
もう、あの美しきツバサで紡ぎ出されたセカイを見ることは出来ぬのか。

「神様、それだけではございません。」
大地と共に生まれた、最年長の天使が言った。
「ヒトは生み出すことを止めてしまったかわりに、奪い取ることを覚えてしまいました。
その結果、この大地をも巻き込み、近い未来には滅んでしまうでしょう。
神様、今はお苦しくても決断の時なのです。」

なんて事だ!
私が眠っている間に、そんなことにまでなっていたとは。
私には、あの愚かで、しかし愛おしい者達を滅ぼすという選択しか残っていないのか。
「神様、お答えを出されるのは少しお待ちください。
多くのヒトは確かにツバサを失いました。
ですが、全ての者が失ったわけではありません。
どうか、よくご覧になってください。」
最年少の天使が言う。
その言葉にいざなわれて、私は地上を覗いてみた。
「あれが、ツバサの輝きだというのか。
あのように、微かな光が。」
あまりにも、か細い光。
だが、確かに輝きはそこにあった。

「はい。ですが希望の光はまだ消えていません。
今でも、チカラを忘れていない者もいるのです。そして、その者のツバサに惹かれる者もいます。
いつの日か全てのヒトがきっと思い出しくれると、私は信じています。
そして、ヒトが何かを生み出せることを、与えられるチカラがあることに気づいてくれると。
だから、神様。ヒトにもう一度だけチャンスをお与えください。」
ヒトと同じ時に生まれた天使は、私の前に跪き、願った。
「わかった。
お前の願いをきこう。
私とて、ヒトを愛しているのだ。
だが、私は神。この世界も守らなければならない。」
「それなら、神様にお願いがございます。」
天使が願った事、それは―――
「私を地上に。ヒトにしてください。」
確かに、天使はヒトに干渉することを許されていない。
「だが、二度と戻れなくなるぞ。それでも良いのか?」
私の問いに天使は笑って、こう答えた。
構いません。私はヒトと共に生まれたもの。ヒトと共に生き、未来を作りますと。

そして、一人の天使は私の下から姿を消した。

今日も大地に降り立った一人の天使が、ヒトとして生きている。
ツバサから無限のセカイを紡ぎ出し続けながら。
この世界が終わらないようにと、祈りを込めて。
 
 
 
 
 
―あなたの下にも、天使が紡ぎだした物語セカイは届いていますか?―


お読みいただきありがとうございました。













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