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Heroine Life  作者: ころ太
2/22

愛すべき日常へ

ピピピピピ…と耳障りな目覚まし時計の音が鳴っている。

聞き慣れた音だけど、いつ聞いても不快だ。目覚ましとして役には立つんだけど。


「む…時間か」


重たい頭を動かして時間を確かめると、無情にも時計の針はもう起きなければいけない数字を指していた。

まだ眠いけど、早く起きないとバスの時間に間に合わなくなってしまう。

睡眠を欲する身体に鞭打って、うっかり二度寝しないよう上半身をゆっくりと起こした。


「よっと……」


目覚ましのアラームを止め、布団から抜け出してあくびをしながら大きく背伸びをする。

カーテンを開けて窓越しに外を眺めると、綺麗な青空が広がっていてとてもいい天気だった。

こんなに天気がいいと清々しい気分になる。


(さてと……)


早く着替えて学校に行く準備をしないといけないから、のんびりしてる時間はない。

制服に着替えようと寝巻き代わりのTシャツを脱ごうとしたその瞬間、控えめに扉をノックする音が聞こえた。

返事をする前に扉が開いて誰かが入ってくるので、慌てて脱ぎかけのシャツを元に戻した。


「あ、もう起きてたんですね」

「……………」

「おはようございます」

「……おはよう」


にこにこと気持ちの良い笑顔で挨拶をしてくれる新しい同居人。

彼女は…ええと、そう、大須賀柚葉。

顔を見るまですっかり彼女の存在を忘れていたけれど、思い出してしまったので先程までの清々しい気分は綺麗さっぱり吹き飛んでしまった。

私にとって彼女は非常に厄介で、面倒な存在なのである。



―――そう、昨日の晩。


納得がいかない私は晩御飯を食べた後、自称婚約者と名乗る彼女と話をしたのだ。


色々聞いて解かったことなのだが、どうやら彼女はつい先日まで海外で暮らしていたらしい。

元々は日本で育ったらしいのだけれど、父親の仕事の関係で外国に住んでいたという。

けれど今度は日本で仕事をすることになったので数年ぶりに日本に帰ってきたそうだ。

彼女は日本を離れる前、両親に『日本に帰ってきたら婚約者の元に行く』と約束していたそうで、その言葉通り私のところに来たらしい。

どうして私が彼女と婚約することになったのかと尋ねたら、上手く話を逸らされてしまった。

双方合意の上でのことらしいけど、私はそんなこと全く覚えていない。


とにかく私は婚約なんて認めないし、他人と一緒に住むなんて嫌だと自分の意見を2人に言った。

けれど言葉巧みに私の意見はかわされて、結局私の願いは叶わず彼女はしばらくこの家に住むことになった。

百歩譲って同居はいいだろう。まだ我慢できる。……でも婚約者というのは絶対に認めない。

だって、普通に考えておかしいと思う。女同士ということもあるけど、何より私は彼女のことを好きでも何でもないんだから。


まあ、昨日はその辺りでお開きになって、うやむやのまま話し合いは終わったんだけど。


「朝ご飯できてますよ」

「着替えるから、先に行ってて」


自然と冷たい声が出た。

婚約者だの同居だの言われなければ、もうちょっと好意的な態度も出来たのかもしれない。

それと私の了承なく部屋に入ってきたことも不機嫌になった原因のひとつだ。

自分のテリトリーに勝手に入られると、気分が悪くなる。


「わかりました、すぐ来てくださいね」

「………」


パタン、と部屋の扉が静かに閉まる。

私の無愛想な態度を気にもせず、彼女は素直に部屋を出て行った。

……ちょっとだけ、胸が痛む。

いくら気に食わないとはいえ、もう少し愛想良くすればよかったかなと今更ながら後悔した。

気にしてないように見えたけど、それは表面だけで、内心は傷ついていたかもしれない。

もっとこう、違う言い方ってやつがあったのに。

ああもう、これだから人付き合いって面倒で苦手だ。


深く考えないようにして、着替えの続きを再開する。

ぐずぐずしてると遅刻してしまうので、さっさと制服に袖を通し、髪型を整えてから部屋を出た。

居間へ続く廊下を歩きながら、さっきの自分の態度を思い出す。


(やっぱり……さっきの態度は良くないよなぁ)


婚約者云々の話はひとまず置いておくとして、彼女は別に何も悪いことをしていないのだ。

それに昨日はあまり話を出来なかったし、今日改めてもう一度話をしてみたほうがいいかもしれない。

彼女に対する態度を決めるのは、もっと彼女を知ってからでもいいだろう。


恐る恐る居間に入ると、大須賀さんがテーブルに朝食を並べていた。

どうして彼女が朝ごはんを作っているのかというと、居候させてもらう身なのだからお手伝いをさせて欲しいと自ら申し出てきたのだ。

あまり馴染まれるのも困るので最初はもちろん遠慮した。しかし彼女は意外と頑固で譲らなかった。

しかたなくお願いすることにしたけれど、正直に言えば家事の苦手な私にとってそれは有難いことだった。

それに質素なエプロンを身に着けて配膳している姿はなかなか様になっていて、まるで新妻のよう。

――っていやいやいや、何考えてるんだ私は。寝ぼけてるのか。


「あ」


彼女は入り口に立っていた私に気づいて、こちらを振り向いた。

ついさっき冷たい態度をとってしまったのでなんとなく彼女と顔を合わせ辛い。


「千晴さん。ご飯よそってきますから、座っててください」

「う、うん」


言われた通り、いつも自分が座っている定位置に座った。

目の前にはいつもと違う朝食らしい朝食が綺麗に並べられている。

いい匂いのする味噌汁、綺麗に巻かれた卵焼き、絶妙な焼き加減の鮭…どれもこれも、凄く美味しそうだ。

これ、もしかして彼女が全部作ったんだろうか。

外国に住んでいたとは思えないほど、立派な日本食だ。


「はい、どうぞ」

「…ありがとう」


豪華な朝食に目を奪われていると、大須賀さんが来てご飯を渡してくれた。

炊き立ての艶々しているお米が食欲を掻き立てる。というか…ウチの古い炊飯器、まだ使えたんだなぁ。


朝食の準備を終えた彼女は、エプロンを脱いで私の正面に座った。


「おばあ様は少し遅れるみたいですから、先に食べててほしいそうです」

「じゃあ……いただきます」

「いただきます」


彼女と2人きりの空間に気まずさを感じながら、箸を握り躊躇いがちに卵焼きを口に入れる。

噛めばふわっとした感触と、ちょうどいい濃さの味付けと、控えめな甘みが口いっぱいに広がった。え、何コレ…超おいしい。

他の料理にも箸をつけてみると、どれもこれも美味しくて驚いた。

どう表現すればいいのか解からないけど、とにかくこんな美味しい料理、初めて食べた。


「あの、お味はどうですか?」


夢中になって食べていると大須賀さんは箸を止めて私の方をじっと見つめていた。

どうやら私の評価が気になっているみたい。


「美味しい。こんなに美味しい料理、初めて食べた」


ぶっきらぼうに素直な感想を口にすると、大須賀さんはそれはそれは嬉しそうに顔をほころばせた。

お、美味しいといっただけなのに、そんなに喜ばなくてもいいと思うんだよね。そんな態度をとられるとなんだかこっちが照れる。

恥ずかしいのを誤魔化すように朝食を次々と口の中へ入れていく……うーん、やっぱり美味しい。

私もばあちゃんもまともな料理を作れないので、食事はいつもスーパーの惣菜かコンビニ弁当か、酷い時はカップ麺ばかりだった。

朝食なんて面倒だから毎朝トーストをただ焼いて食べてたぐらいだし。

こんなに豪華な食事がうちの食卓に並ぶなんて信じられない。しかも朝から。


「お口に合ったのなら、良かったです」

「……う」


彼女にそんなつもりはないんだろうけど、美味しいご飯で懐柔されてる気分になる。

そりゃ居候の件や料理の腕は認めるけどだからといって婚約まで認めるつもりはない。断じてない。

自分の好きな相手くらい自分で決める。それに彼女だったら、私よりも他にいい相手が沢山いるはずだ。


「おかわりもありますから」

「ん」


まあでも、美味しいご飯が毎日食べられるってのは悪くない。

余計なことは考えず今は目の前のご飯を食べることに集中しよう。


黙々と2人きりで朝食をとっていると、ようやくばあちゃんが部屋に入ってきた。

じーっと値踏みするように私たちを見てからニヤリと笑う。


「おやまぁ、そうしてるとまるで新婚のようじゃないか」

「どこが!?」

「すっかり仲が深まったみたいで嬉しいねぇ」

「ないない!絶対そんなことない!」


ばあちゃんはケラケラと笑いながらいつもの場所に座る。

いつの間にか台所に行っていた大須賀さんが、ばあちゃんの目の前のテーブルにご飯を置いた。


「すまないね」

「いえ、お口に合うかどうかわかりませんが、どうぞ召し上がってください」

「千晴はこんなにいいお嫁さんを貰って幸せ者だ」

「ちょっと待って。私がいつお嫁さんを貰ったって?」


さりげなく話を進めないでほしいんだけど。

この調子だといつの間にか大須賀さんが私の嫁に確定してそうで恐ろしい。

私は今もこれからも彼女をお嫁さんにする気なんてさらさらないんだから。


「全く頑固だねぇ。こんな器量よしで美人な子はそうそう居ないっていうのに」

「あのね、私は……」

「すまないね柚葉。この子は照れ屋なんだよ」

「違うっつーの!!」

「いいんですよ、無理に婚約者だと認めて貰おうとは思っていません。千晴さんは自分の気持ちに正直でいいんです。」

「……」

「でも、私は私で諦めません。千晴さんの事が好きっていうのは、本当のことですから」

「……勝手にすれば」

「はい」


本気なのか、何か裏があるのか、計りかねてしまう。

けど、冗談で言ってるようには見えなかった。彼女の目は本気で、強い意思をはっきり感じ取れる。

好きだと言われて悪い気はしないけれど……彼女の想いが真剣なものであるなら、尚更受け入れることは出来ない。

しばらく一緒に暮らしていれば、どうせ向こうが勝手に幻滅して離れてくれるだろう。それまでの辛抱だ。


「ごちそうさま」


溜息を吐いて席を立つ。

時計を見ればそろそろ家を出ないとバスに乗り遅れてしまう時間だった。


「学校行ってくる」

「ああ、気をつけて行ってきな。あんまり女の子襲うんじゃないよ」

「…好きでやってる訳じゃないってのに」

「千晴さん、これを」

「?」


小さめのバックを手渡されたので、中を覗き込んでみる。

あれ……これってもしかして。


「お弁当です」

「オベントウ」

「良かったらお昼に食べてください」

「あっ、ありがとう」


おお、これが噂に聞く手作り弁当かぁ。

いつもお昼は購買のパンか学食で済ませてるから、お弁当を学校に持っていくのは初めてだった。

なんだろう…こういうのって、なんかムズムズしてくすぐったいかもしれない。


「いってらっしゃい」

「…いってきます」

「朝からお熱いねぇ…いってらっしゃいのチュウは?」

「しないっ!!」

「……あの、私は構いませんけど」

「いや、私が構うから」


顔を赤くしてモジモジするのはやめてください。

どうリアクションすればいいのか困るから。


これ以上余計なことを言われないように、私は慌てて家を出た。






教室に着いてからまず自分の席に荷物を置き、その後まっすぐ彼女の席へと向かう。


「おはよう美空」

「あら、おはよう千晴。今日も幸薄そうな顔してるわね」


机の上にファッション雑誌を広げて気だるそうに読んでいた友人に声を掛けると、ゆっくりと顔を上げて私の方を向いた。

彼女は家から学校までの距離が近いということもあり、いつも私より早く登校している。

家が近いのならぎりぎりまで寝ていられるだろうに、律儀に朝早く登校してくるなんて美空はほんとに真面目だと思う。


おっといけない。真面目な彼女に用件を伝えるのを忘れてた。


「美空さん、世界史の宿題見せて」

「……それは朝の挨拶のつもりかしら」


彼女の顔が、みるみる呆れ顔に変わっていく。


「毎朝毎朝おはようの次は宿題みせろって貴女ねぇ…たまにはちゃんと自分でやりなさい」

「失礼な。そんな毎日言ってない…はず…うん、週に3・4回ぐらい…だよ」


「それでも十分多いわよ!あのね、千晴。私は宿題を見せたくないわけじゃなくて貴女の為を思って言ってるの。

いつも言ってるけど自分でやらないと自分の為にならないでしょう?ただでさえ毎回テスト危ないくせに」


正論なだけに何も言い返せない。


「ちゃんとわかってるつもりだけど、だって面倒だし…」

「千~晴~?」


彼女の顔が、どんどん真っ黒な笑顔に変わっていく。

これ以上彼女を怒らせるとマズイ……そう本能が告げていたので、こくこくと頷いておく。


「わ、わかりました。頑張ります。でも、昨日は宿題なんてやってる余裕はなかったんだよ」

「? 何かあったの?」


聞き返されたけれど、答えに詰まってしまう。

『実は昨日、私の婚約者と名乗る金髪の美少女がうちに来て同居することになったんだよね』――なんて正直に言えるわけがない。

話したら爆笑されるか信じて貰えないかのどちらかだろうけど……後者ならまだいい。美空なら間違いなく前者だろう。

美空にあの子のことがバレると相当面倒なことになるので隠しておいたほうがいいかもしれない。


「いや、テレビが面白くて気がついたら寝る時間になってた」

「ふふふ、もう千晴ったら」


むにっ


「なにひゅんのー」


両手で両頬を摘まれてぐにぐにと引っ張られた。

今の私の顔はきっと誰にも見せられないような間抜け顔をしているに違いない。なんという羞恥プレイ。

思う存分に私の頬を引っ張って楽しんだ美空は、飽きたのかようやく頬を放してくれた。

まったく、頬が伸びて弛んだらどうしてくれる。


「まあ、見せてあげたいのは山々なんだけど。私、世界史じゃなくて歴史を選択してるのよね。忘れてたでしょ?」

「うげっ」


そ、そういえばそうだった。社会の授業は選択で、美空と違う授業をとってたんだった……。

歴史の授業を選択している美空が世界史の宿題をやってるわけがない。忘れてた。すっかり忘れてた!


「潔く諦めなさいな」

「うぅ…」


こればかりはどうしようもないので、潔く世界史のじいさんに怒られるしかない。

今から宿題をやっても間に合わないだろうし。


諦めて自分の席に帰ろうとすると、美空に制服の袖を引っ張られた。


「ね、これのなかでどれがいいと思う?」

「?」


いきなり雑誌を押し付けてきたので、開いてあったページを覗き込んでみる。

ピンクや紫の派手な色使いと無駄にキラキラした装飾や文字ばかりのページは、見てるだけで目が疲れそうだ。

目を凝らしてよく読んでみると、どうやらリングやピアスといったアクセの通販雑誌らしい。

この中からどれを買おうか迷っているので、私の意見が欲しいようだ。でも、私に聞くのは間違ってるんじゃないかな。

自慢じゃないけど、アクセのことについて知識なんてないし興味もないのだ。

でも真面目に選ばないと怒りそうだし、できるだけ真剣に考えてみよう。


私はしばらく眩しいページを凝視して品定めをし、これは良さそうだなと思うモノを指差した。


「これとか」

「どう見ても数珠にしか見えないモノをチョイスしたわねっ!?」

「なんか魔除けの効果ありそうでよくない?」

「効能とかどうでもいいから。重視して欲しいのは見た目なのよ、見・た・目」

「じゃあ自分で選んで自分の好きなアクセ買えば良いじゃん。私がセンスないの知ってるでしょうに」

「まあそうよねぇ」


じゃあ最初から聞かないでよ――と言おうとした所で、誰かが私の隣に割り込んできて美空の雑誌を覗き込んだ。

このクラスで躊躇わず私の傍に寄ってくるのは、美空ともう一人しかいない。

ちらりと横目で隣に立っている人を見ると、予想通り上原さんだった。

私の視線に気づいたのか、上原さんも私の方に視線を向けてきたのでお互いの目が合ってしまう。

けれどすぐ慌てたように視線をそらされて、再び雑誌を食い入るように見ていた。


「上原ちゃんはどれがいいと思う?」

「私はこのピンキーリングが可愛いと思うな」

「……………」

「あ、私もそれいいと思ってたのよ。変にゴテゴテしてないし、シンプルだけど綺麗なのよね」

「こっちも派手だけど形が……」

「うんうん、珍しいわよね……」


実に女の子らしい会話をして盛り上がっている美空と上原さん。

興味のない私が話に加わっても邪魔だろうし、面倒なことにならないうちに自分の席に帰っちゃおうかな。


「天吹さんはどのアクセが好き、かな?」


どうしようか迷ってるうちに、上原さんに話しかけられて逃げるタイミングを失ってしまった。

はぁ、私の好みのアクセね…。さっき見た時に気になっていたものがあったのでそのページを開き指差す。


「これかな」

「わ、わぁー」

「またこの子は微妙なものを……ってそれアクセと言うより健康グッズじゃない!?」


私が選んだのは身体の健康を促すと書いてある磁気ネックレスだった。

シンプルで邪魔にならなさそうだし、健康にも良さそうだし、値段もお手頃でいいと思ったんだけど。

あ、ほら、健康部門で第一位って書いてある。


「もう、千晴は今度私と一緒に雑貨屋に行くわよ。そのセンスを徹底的に矯正してあげる」

「いいよ別に。面倒だし」


「あ、わ、私もっ………!」


「菜月ー!!!」


上原さんが何か言おうとした時、その言葉を遮るようにクラスの女子が彼女を大声で呼んだ。

どうやら上原さんがいつも一緒にいるグループの子みたい。

彼女は困ったような顔をして、呼んでいる友人と私達を交互に何度も見ている。

いつまでたっても来ない彼女に痺れを切らしたのか、上原さんの友人はこっちに来て無言で彼女を連行していった。


「あらま、上原ちゃん連れてかれちゃった」

「上原さんはみんなの人気者だしね。嫌われ者の私の傍に置いとくのは我慢ならないんでしょ」

「ふふ、彼女がいなくなって寂しい?」

「はぁ?なんで」


意味が解からなくて顔を顰めると、美空は楽しそうな笑顔でよしよしと子供の機嫌をとるように私の頭を撫でた。

撫でられるのは嫌じゃないけど、子ども扱いされてるような気がして複雑な気分になる。

確かに美空は面倒見が良くて頼れるお姉さんのようだけど、私にとっては“お母さん”って感じかもしれない。

勉強しなさいとか真面目にやれとか何かと小言が多いし。


「千晴、席に戻ったほうがいいわよ。先生きたみたい」

「わ、本当だ。じゃあまた後で」

「ええ」


慌てて自分の席に戻り、椅子を引いて座る。


担任は全員が座ったのを確認してから点呼を取り始めた。

その後、いつもどおり代わり映えのしないホームルームを始める。

担任の声を聞き流しつつ今日の一時間目は何だったか考えていると、突然ガラッと教室の扉が開いた。

誰かが遅刻してきたのかもしれない。そう軽く思いながらなんとなく出入り口の方を見てみる。


「……っ!?」


思わず噴出しそうになった口を片手で塞ぎ、立ち上がりそうになった身体を机に押さえつける。

クラスの皆は入ってきた人物に目を奪われていたので、私の怪しい挙動を見られずに済んだのは良かったのだが。


さっき見たものが幻でありますようにと願いながら、前の人の背中に隠れるように身を潜め、もう一度前を見る。


(ああ、やっぱり……)


私のささやかな願いは叶いそうもない。


「えー、突然だが転校生だ」


担任の言葉に教室がざわめく。


教室に入ってきた『彼女』は、教壇の上にいる担任の隣に並んで教室の中を見渡していた。

目が合いそうになったので慌てて顔を伏せる。


(何でここに彼女がいるんだろ……)


あの金髪と青い瞳は間違いない。

信じたくないけど、信じざるを得ない。


「大須賀、自己紹介を頼む」

「はい。……今日からこのクラスに転入することになりました大須賀柚葉と言います。これからよろしくお願いします」


転校生らしい普通の挨拶をして、大須賀さんは少し引き攣り気味に微笑んだ。

クラスメイト達の視線を一斉に浴びているせいか、どこか緊張しているように見える。

昨日は頭が痛くなるような発言を堂々としていたので、こんなことで緊張しないタイプだと勝手に思っていた。

しかし彼女が普通の女の子のように縮こまっているので、凄く意外だった。いや、普通の女の子なんだろうけど。ちょっと言動に問題があるだけで。


周りから「金髪だ…碧眼だ……」「かわいー」「モデルみたーい」など、クラスメイト達の彼女に対する評価が聞こえてくる。

転校生であることに加え彼女の目立つ容姿のこともあり、教室中が色めき立っていた。


楽しそうなクラスメイトとは反対に、私は痛くなった頭を抱えこむ。

だってこの学校に転入してくるなんて一言も聞いてないんだよ。しかも同じクラスって何の偶然だこれ。

偶然と言うより裏で何らかの取引が行われているんじゃないかと想像してしまい、背筋がぞっとした。


「それじゃ、そこの空いてる席に座ってくれ」

「はい」


彼女は担任の示す席へ歩いていき、隣接した席の子に軽く挨拶をしてから座った。

大須賀さんの席はちょうど教室の真ん中辺りで、隣の席には美空が座っている。

ちなみに私の席は、外に面した窓側の一番後ろという私的ベストプレイスだったりする。

夏は日差しが眩しくて暑いけれど、今の季節は温かくて気持ちがいいのでこの場所は気に入っていた。

何より居眠りしても見つかりにくいってのが良い。


「これでHRは終わりだ。次は俺の授業だから、そのまま始めるぞー」


タイミングよくチャイムが鳴り、授業が始まる。

教科書を机の中から取り出して今日は真面目に授業を受けようと思ったけれど、内容は全然頭に入ってきてくれなかった。

それが『彼女のせい』なのか、ただいつものように『やる気が沸かないだけ』なのか、どっちなのかは解からない。

担任が紡ぐ呪文のような言葉を聞きながら、私はただ窓の外をぼんやりと眺めていた。



休み時間になるとさっそく彼女はクラスの女子に取り囲まれていた。

クラスのほとんどの女子が集まっているのか、凄い人数だ。

女子は目を輝かせて興味津々に大須賀さんを質問攻めしている。

男子もその輪に加わりたそうにしているが、女子の壁に阻まれて仕方なく遠くから見ているだけのようだ。

何人かの男子は固まって、ひそひそと彼女のことについて語り合っている。


話を聞くつもりはなかったけれど、女子たちの熱のこもった話し声がこっちまで聞こえてきた。


「ねえねえ、大須賀さんってもしかして日本の人じゃないの?」

「半分は日本人ですよ。フランスと日本のハーフなんです」


ふーん、そうだったんだ。金髪だから外国の人だろうと思ってたけど、ハーフだったわけね。

昨日は同居と婚約の方ばかりが気になってて歳とかその辺りのことは何も聞いてなかったな、そういえば。


それから色々な質問にも、彼女は嫌な顔ひとつせず丁寧に答えていた。

時に笑ったり、声を上げたり、楽しそうに話している。

まあ、上手くやれてるようで何よりだ。


「ちーはーるっ」


ぷにっ、と頬を人差し指で突いてきたのは、言うまでもなく美空だ。

いつも楽しそうな顔をしている彼女がたまに羨ましいと思う。

もっと彼女のように気楽に生きることが出来たら、人生楽しくなりそうだ。


「さっきから転校生の方を気にしてるみたいだけど……珍しいわね、千晴が誰かに興味を持つなんて」

「そんなんじゃないよ」

「そう?でも彼女、授業中チラチラ貴女のほう見てたわよ?もしかして知り合い?」

「キノセイダヨ」

「怪しいわねぇ」


どうせ美空にはすぐバレるんだろうけど、なるべくギリギリまで黙っていたい。

今日はクラスの人たちに囲まれて放して貰えないだろうから、向こうが私の所に来ることはないだろう。

家に帰ったら余計なことを言わないよう念入りに釘を刺しておいたほうがいいかもしれない。


これから色々と面倒なことになりそうな予感がして、憂鬱な気分になった。





あっという間に午前の授業が終わり、昼休み。

いつもなら購買か学食に行くところだけど、今日は彼女が作ってくれた弁当がある。

教室の中で弁当を食べるのは普通のことなんだろうけど、何となく気恥ずかしいので別の場所で食べることにした。

さて、どこで食べようかと考えながら弁当の入った袋を掴んで教室を出ようとした時、美空に腕を掴まれた。


「千晴、今日は学食に行くの?」

「弁当があるから校庭で食べようかなーと」

「弁当?買ってきたの?」

「いや、作ってもら……」


(はっ!)


しまった。

余計なことを言ってしまった。

ほら案の定、美空は怪訝な目で私を見ている。


「作って貰ったって、誰に?千晴もおばあさんも料理できないじゃない」

「いや…その…………………妖精?」


恐る恐る美空の方を見ると、これまた楽しそうな顔を浮かべていらっしゃいました。

これはアレだ。面白いモノを見つけた時の顔だ。こんな顔をしている時の彼女は、ある意味とても恐ろしく手に負えないのである。

逃げようと思っても、腕を掴まれていて身動きができない。


「ふふ、千晴ったら。いつからそんなメルヘンな子になったのかしら」

「朝起きたらお弁当が置いてあったから、妖精さんが作ってくれたのかなぁ…なんて、アハ、アハハ」


子供みたいな言い訳を並べている自分が恥ずかしくて、もう泣きたい気分だった。

……せめてもう少しまともな言い訳を言えれば良かったんだけど。私のアホ。


「今日の千晴は様子がおかしいと思ってたけれど……一体何を隠してるのかしら?」

「ベツニナニモ」


にっこりと笑っている彼女から目を逸らして、どう言い訳しようか必死に考えていた。

素直に言うべきか、それとも気合で取り繕うか、頭の中でぐるぐると選択肢が回っている。

私が何も言わないので痺れを切らしたのか、美空は私の腕を引っ張って歩き出した。


「美空?」

「お腹すいたし、ひとまず昼食をとりましょうか。校庭でいいのよね?」

「う、うん」


なんとかその場を凌げてホッと息を吐く。

どうせ後から根掘り葉掘り聞かれるだろうけど、それまでに上手い言い訳を考えておくとしよう。


教室を出てから自販機でお茶を買い、2人で校庭にやってきた。

陽のあたっているベンチが空いていたのでそこに座り、袋からお弁当を取り出してひざの上に乗せる。

隣を盗み見ると、美空も私と同じようにお弁当をひざの上に乗せていた。

すでに蓋を開けていて、色とりどりのおかずが敷き詰められた中身が見える。


「相変わらず美味しそうだね、美空のお弁当」

「ふふ、でしょう?」


まるで自分が作ったものを褒められたかのように喜んでいるが、美空のお弁当は彼女の母親が作ったものだ。

彼女は両親のことが大好きなので、親を褒められると、とても嬉しいらしい。

彼女の家に遊びに行くようになってから美空の両親と話すようになったけど、確かに自慢したくなるような優しくて素敵な人たちだった。


「お弁当食べないの?」

「あ、うん、食べるけど」


さて。

親が作ってくれたわけじゃないけれど、私の手元には手作りのお弁当がある。

朝食で彼女の料理の腕は確認済みだから不安はないはずなのに、何故かどきどきしながらお弁当の蓋を開けた。


「……………なん、だこれ」


――お弁当の中身を見て、固まる。

目に飛び込んできたのは美味しそうなおかずの数々。それは何の問題もない。どれも美味しそうだ。

しかし問題があるのはご飯。どこから見ても普通のご飯なのだが、その上に桜でんぶが乗っているのが問題だった。

普通に乗っているのなら別に驚きはしない。でも、桜でんぶで大きく『ハート』の形を書いてあったら、どう思う?


「なにそれ愛妻弁当?」

「ですよねぇ!?」


うう、不覚。美空に見られてしまったじゃないか……。

驚いて放心していたので、蓋を閉じるのが遅くなってしまった。

ていうかこの弁当のハートは嫌がらせだろうか?


「ちーはーるー?」

「………何でしょう?」


にこにこにこにこ。

彼女の目が『正直に話せ』と言っている。

ど、どうしよう。包み隠さず正直に話すか、それともこの場から逃走するべきか。

どれが一番最善の行動なのかまったく見当がつかない。


「千晴さん」

「え」


名前を呼ばれたので声がした方を向くと、そこには大須賀さんが一人で立っていた。

教室でクラスの女子に囲まれていたはずなのに、どうして彼女がここにいるのだろう。

彼女は私に微笑んでから、隣に座っている美空の方に視線を向けた。

なんだろう、すごく嫌な予感がするんだけど。


「ええと、そちらの方は確かお隣の席の……」

「私は円堂美空。美空でいいわよ、大須賀ちゃん」

「はい、よろしくお願いします美空さん」

「よろしくね」


お互いに自己紹介を済ませ、2人の間に和やかな空気が流れている。ごく普通のやりとりだ。

このまま何も起こらずに終わると思われたのだが。


「ところで大須賀さんって千晴の知り合いなの?」

「はい。私は千晴さんの婚約者なので、帰国を機に昨日から一つ屋根の下に住んでるんです」

「ぎゃああぁ!!!」


さらりと言ったああああぁ!?

さすがの美空もドン引きですよ!!


「こ、婚約者?ええと、言葉通りだと千晴と大須賀ちゃんが婚約してるってことなの?」


「はい。でも法律上は結婚できませんから、正確には生涯ずっと一緒に居るという『約束』みたいなものです。

 それに千晴さんはそのことを覚えてませんし認めてくれませんから、本当は婚約者だなんて名乗れないんですけどね」


じゃあ最初から余計なことを言わないでくれれば良かったのに!

ま、まあでも、こんな冗談みたいなことを美空が信じるわけがない。冗談で片付けられて終わりだ。


「もう、駄目じゃない千晴。そんな大事なことを忘れた挙句、無かった事にして彼女を拒絶するなんて……酷すぎるわ」


ほーら信じた…………って、信じた!?

しかも私が責められている不思議。


「み、美空!なんで素直に信じてるの!?ねえっ!?どう考えてもおかしいじゃんっ」

「ふふ、だって信じたほうが面白いし。それに大須賀ちゃんが嘘を言ってるようには見えないもの」

「美空さん……」

「頑張ってね大須賀ちゃん。この子、ちょっと捻くれててやる気がなくて面倒臭がりで変態だけど、根は良い子だから。見捨てないであげて」

「さり気なく私のこと貶してるよね美空。あと大須賀さんを焚き付けるのやめて」


私が睨みつけても美空はどこ吹く風で気にしていない様子。

おいこら、あんたはどっちの味方だ。


「じゃあこの愛妻弁当も大須賀ちゃんが作ったの?」

「はい。料理は得意ですが、お弁当を作るのは初めてだったので頑張りました」

「そうだったんだ。なんて甲斐甲斐しい子………愛されてるわね、千晴♪」

「人事だと思って…」

「だから楽しいんじゃない」


あんた、鬼だよ。


「はぁ…だいたい大須賀さんはどうして余計なこと言うの。そんな可笑しいこと言えば学校で普通に過ごせなくなる。

変態扱いされてる私に関われば大須賀さんだって同類だって思われる。クラスの子に聞いたでしょ?私のことは。

私のことなんて放っておけばいい。無視してくれていい。その事で責めたりなんてしない。だから学校では―――」


「…普通ってなんでしょうか?」


「は?」


彼女はにっこりと笑ってから、私をじっと見つめる。


「千晴さんは優しいですね」

「なんっ……」

「私は千晴さんが思ってるような普通の学校生活なんて欲しくありません」

「………………」

「私が欲しいのは、貴女と一緒に過ごす生活です」


とてつもなく恥ずかしい台詞を言いおった。鳥肌たったよ、悪い意味で。


「だから私は………きゃっ!?」

「大須賀さんっ…!?」


こちらに歩み寄ってくる際、段差に足をとられたらしい。

私はお弁当を素早く横に置いて、ベンチから離れ彼女の元に駆け寄る。


「ちょ、2人とも!」

「「!!」」


お約束の展開に心の中で泣き叫びつつ、私は無我夢中で彼女を受け止める――はずだったのだが。


「げっ」


同じく私も違う段差に引っかかってしまい、簡単に体勢を崩してしまう。

どうにか持ちこたえようと踏ん張り気合で彼女を受け止めようと手を伸ばす。

ギリギリのところで彼女の身体に触れ、思いっきり引き寄せた。


「…………ぁ」


掻き消えるような声。

結果的には彼女を受け止めることに成功したのだが、まあ、どうなったのかは察してほしい。

私の予想通り『いつもの展開』になってしまったのだ。


私の腕の中には大須賀さんが納まっている。

片手で彼女を抱きしめて、もう片方の手で地面を押さえ、膝をついて体を支えていた。非力なので、腕がぷるぷると震える。

彼女が地面に倒れないように強く抱きしめた為、密着度が半端ない。

彼女の体の柔らかさとか、いい匂いとかを感じてしまい、微妙な気持ちになる。


彼女は押し黙り、体を固くして動かない。

さりげなく捲れ上がったスカートを下ろして整え、体を解放して座らせてあげる。

積極的にアプローチしてくるくせに、彼女はこういうことに免疫がないらしい。なんかホッとした。


「あ、ありがとうございます」

「いや…べつに…」


真っ赤になって恥ずかしそうに私を見つめる大須賀さんに、私は言う。


「きっと、私の近くにいれば、こんなことばっかりだよ」

「それは…私の望むところです。まだその、ちょっと恥かしいですけど」

「あ、そう」


表情は隠しているが、私も恥ずかしい。

何度も何度も女性にセクハラ行為を繰り返しているが、どうしても慣れない。一応弁解しておくが、嬉しくもない。


先に立ち上がって彼女に手を差し出すと、彼女は大事そうに私の手を握り、ゆっくりと立ち上がった。


「無理してるんじゃない?」


彼女は大きく首を横に振る。


「私を、貴女の傍に居させてください。それだけで、いいんです」

「…………」


私には何の取り柄もない。

勉強はできないし、運動だって出来るわけじゃない。

子供のような残念スタイルで料理や掃除といった家事全般も苦手なので、女の子としての魅力もない。

不真面目だし、面倒なことは大嫌いだし、セクハラ紛いのことをやらかすし、いつだって他人に迷惑ばかりかけてる。

性格は良いか悪いかの2択だったら即決で悪いと言われるタイプの人間だ。

私は、好かれるような奴じゃない。現に沢山の人間に嫌われてる。


「大須賀さんは物好きだね」

「…柚葉でいいです。私も千晴さんって呼んでますから」

「む…」


なんなんだろうね、いったい彼女は。

変態か。それとも変わった嗜好の持ち主か。

…何か、秘めた目的があるのか。


(まあ―――そんなん、どうでもいいか)


彼女が私と関わってどうなろうが、知ったことじゃない。面倒なんて見きれない。


でも。


「昼ごはん、食べようか…………柚葉」

「はいっ、千晴さん」


好意を向けられるのは厄介だけど、無理に邪険にする必要もない。難しく考えないで普通に接すれば楽に違いない。


嬉しそうに柚葉は私の隣に座る。広いベンチなので、余裕で3人座れるのだ。

でもまあ、ようやくお昼にありつけるよ。


「いや~、熱々じゃないの2人とも。見てて恥ずかしかったわ」

「は?どこが?」

「…でも、大須賀ちゃんのこと気に入っちゃったな、私」

「無視か」

「あ、ありがとうございます」


なんだろう、妙に美空の機嫌がいい。

これはこれで不気味で恐いな。


「あのっ千晴さん、私、『あーん』って食べさせるアレをやってみたいんですが」

「却下」


笑顔で即答する。

ほどほどに距離を保たないと……やっぱり危険だ大須賀柚葉。



トサッ



「?」


軽い音がしたので音がしたほうを向くと、近くの芝生の上にジュースの缶が転がっていた。

そのすぐ近くに何故か上原さんが呆然と立っていたので、もしかしたら缶を落としたのは彼女なのかもしれない。

けど、どうしてそんな驚いた顔をしているんだろう?


とりあえずベンチから立ち上がり、ジュースの缶を拾い上げて上原さんに渡してあげる。


「これ、上原さんのだよね?」

「え、あ、え……う、うん」


目に見えて挙動不審な彼女は、おずおずと缶を受け取った。

うーん、やっぱりなんだか様子がおかしい。顔色も少し悪いみたいだし。


「上原さん、どうかした?」

「あの…天吹さん……」

「え、なに?」



「大須賀さんが婚約者って、本当……なの?」

「違います」



後ろでは美空が口を押さえて噴出しそうになるのを必死で我慢していた。

柚葉は良く解かっていない顔で呑気に微笑んでいる。

ああもう、どいつもこいつも。


……平穏という二文字が手を振りながらどんどん遠のいていく気がする。


「はぁ」


―――色々と疲れたので、溜息を漏らす。


とりあえず真面目に上原さんの誤解を解いておこう。

彼女が誰かに話すとは思えないけど、これ以上変な噂が広まるのも遠慮したいし念のため。




「ふふ、これから毎日楽しくなりそうねぇ」





……いやほんと、楽しそうで羨ましいよ、美空。




 

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