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第二章 戦乱への序曲 第二十八話
ワイバニア帝都ベリリヒンゲンその中心部にある皇帝の居宮”白晶宮”に隣接する皇太子居宮臨星宮にある皇太子執務室に三人の将帥の姿があった。一人は皇太子ジギスムント。もう一人は右元帥シモーヌ。そして第一軍団長ハイネ・フォン・クライネヴァルトであった。

「私をお呼びとはいったいいかなるご用向きか」

ワイバニアの至玉と讃えられる若き軍団長は抑揚を押さえた声で言った。本来ならば、ハイネは臨星宮に赴きたくはなかった。ハイネ自身は、この皇太子と右元帥のことを嫌っており、臨星宮に入り、立っていることですら、この上ない屈辱感を感じていた。

皇太子ジギスムントはハイネに背を向け、執務室の大きな窓から空を見ながら言った。

「クライネヴァルト軍団長、貴公の龍騎兵隊は我がワイバニアでも最高の練度と精強さを誇ると聞くが?」

「はい」

いきなり何を尋ねるのか。不快感を表に出さぬよう、細心の注意を払いながら、ハイネは返事をした。

「貴公の龍騎兵隊、一時私に貸して欲しい」

外を眺めながら、ジギスムントは言った。

「失礼ながら、皇太子殿下の真意が小官にははかりかねます」

注意を払いつつも、語気の端々に強い怒気が表れた。

「クライネヴァルト軍団長、殿下はフォレスタルへの奇襲を考えていらっしゃるの。少数精鋭で、シンベリンの王城に突入して、フォレスタルの中枢を叩くおつもりなのよ」

シモーヌがジギスムントの策をハイネに明かした。売女め。ハイネは内心、シモーヌをののしった。

「つまり、小官に暗殺の片棒をかつげ……と?」

ジギスムントは振り返った。

「そういうことになる」

「お断りさせていただく」

強い口調でハイネは言った。

「誇り高きワイバニア第一軍団の勇名を汚す行為。断じて承服する訳には参らぬ」

「私の命令でもか……」

さっきとは違い、ジギスムントは冷酷な表情でハイネを睨みつけた。ハイネはジギスムントを気にせずに言い放った。
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