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第二章 戦乱への序曲 第二十二話
「ヒーリー様! ……あれ?」

マクベスは真っすぐ向かってきた彼女の肩を叩くと、その場に立たせて言った。

「おいたが過ぎますよ。イスラ・デ・ピノス公女」

メルキド公国第五公女イスラ・デ・ピノスは飛び込んだ相手がヒーリーでなかったことに腹を立てたようで、そっぽを向いた。

「妻が夫の部屋に入るのが、どうしておいたになりますの? マクベス閣下」

「そのお話は後日……テイラー殿、お願いします」

マクベスがむっとするイスラの言葉を流し、傍らにいた褐色の美女を呼んだ。

「イスラ様。これ以上、フォレスタルの方にご迷惑をかけてはなりません」

「だって、マミー……」

「だめです。わがままをおっしゃるなら、怒りますよ」

イスラ付きの侍女、マミー・テイラーは腰に手を当て、公女をひとにらみした。

「わかりましたわ。自分の部屋に戻ります」

イスラは納得しかねると言った表情をして、しぶしぶヒーリーの部屋を後にした。ヒーリーはずっと引っかかっていたことをマクベスに聞いた。

「兄上、俺の結婚話があるのですか?」

「イスラ公女から聞いたんだね。違うよ。十年前には確かにあった話だけれど、兄上が結婚されたことでフォレスタルとメルキドの関係もがより深まったからね。ヒーリーの結婚話は立ち消えになったんだ。そのことはメルキド側も了解してる。ただ一人を除いてはね……」

「イスラか……」

ヒーリーが腕を組んだ。

「彼女はどうやら君のことが好きみたいだからね。政略結婚とはいえ、彼女にとっては嬉しいことだったのだろう」

「そんな!俺の気持ちはどうなるんです」

「だから断ったんだよ。ヒーリー。でも、君も王族のはしくれだ。そろそろ縁談の話がふってくるようになる。早く身を固めるべきだと思うけどね」

マクベスはポーラを見やった。ポーラはマクベスの言わんとしていることに気づき、少し頬を赤らめた。

「あぁ、いけない。ヒーリー。そろそろ支度を始めないと、間に合わなくなってしまうよ。ポーラ。手伝ってやってくれ」

「はい」

マクベスはあとをポーラに任せると、廊下に消えていった。

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