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第二章 戦乱への序曲 第十一話
「ヒーリー。私もヒーリーには軍の要職について欲しいと考えているんだ。君ほどの戦術家が私を支えてくれると、これほど心強いことはないよ」

次兄マクベスは長兄に続いて言った。買いかぶりだとヒーリーは思った。今回の戦いは予想以上の戦果をあげた。しかし、これ以上の戦果をこれからもあげられるかどうかヒーリーには自信がなかった。しかし、兄二人の懇請を突っぱねる訳にも、ヒーリーはいかなかった。兄二人がヒーリーを頼りにしてくれている以上に、彼らはヒーリーを様々なことから守り続けていた。そのことをヒーリー自身はよくわかっていたので、兄達の恩に報いるためにも、彼らを支えるためにも、ヒーリーは第五軍団長就任を了承することにした。

「わかりました。陛下、兄上、第五軍団長に就任させていただきます」

「ありがとう。ヒーリー」

王太子エリクはヒーリーの決断に礼を言った。

その後、各隊長の戦果報告のあと、つつがなく式典は終了した。

「あぁ、いやだいやだ」

王城の広い廊下を歩きながらヒーリーは言った。

「その割には、いつもあの二人に頼まれると、引き受けてしまうんだよねぇ。君は」

ヒーリーの隣でラグは言った。ラグ自身もヒーリーには軍にとどまって欲しいようで、ヒーリーの第五軍団長就任を歓迎していた。

「仕方ないだろう。二人にはわがままも色々聞いてもらっているし、役に立ちたいと思っているんだ。特にエリク兄さんにはね」

ヒーリーの兄、エリクシルはこの年二九歳になる。メルキドとの平和条約上、生後すぐに人質に出され、親元から離れた生活を余儀なくされた。立太子のため帰国してからは、父王ジェイムズ、政治顧問リードマンのもとで政治を学び、次期国王として現在は政務の大部分を行なっていた。
また、その実直な人柄は人々の人気を集め、”フォレスタル史上もっとも人徳ある人物”として讃えられていた。

生まれてすぐ人質に出されたこと、その過酷な幼少期と常に国家の重責を担わなければならない立場、だがそれに対して弱音を吐くこともなく、つねに周囲に気遣いを見せる兄に、ヒーリーは並々ならぬ尊敬の念を抱いていた。
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