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第二章 戦乱への序曲 第七話
「なれなれしい口を聞くな。私とお前とは恋人でもなんでもないのだからな。」

アンジェラは自分の名を呼ばれたことに不機嫌さを隠さなかったが、ヨハネスは気にしない感じでアンジェラに言った。

「恋人同士ではないが、同じ十二軍団長じゃないか。それなりの親愛の情はもって然るべきだと僕は思うけどね。」

「それで、ヨハネス。私を呼んだのは単にあの右元帥から逃れるためではなかろう?」

アンジェラはあえてヨハネスをファーストネームで呼ぶと、ヨハネスに尋ねた。

「話は早いな。君と話がしたくてね・・・あの右元帥に気をつけろ。」

ヨハネスは人懐っこい笑顔から一転、真剣な顔つきになると、小さくアンジェラに言った。

「いきなりどうしたんだ?めったなことを口に出すものではないぞ。」

アンジェラはヨハネスの顔を見上げると小さく言った。

「確証はない。だが、何か良からぬことを考えているようだ。」

「だが、あまり動くなよ。ヨハネス。お前の立場も危うくなるぞ。」

「・・・」

「どうした?」

アンジェラはヨハネスがあっけにとられた表情をしているのを見て、思わず尋ねた。

「君が僕のことを自然にファーストネームで呼んだからね。驚いたよ。」

「な!」

仮面の下でアンジェラが赤面しているのをヨハネスは見逃さなかった。

「そ、それはお前が私のことを・・・」

冷静な第七軍団長が取り乱すのを見て、ヨハネスは楽しそうに笑った。

「わかっているよ。アンジェラ。ついでにその仮面をとると、なおいいんだがなぁ。せっかくの美人が台無しだ。」

ヨハネスはおどけて言うと、アンジェラは仮面の下からため息を吐いて、あきれ気味に言った。

「わかった。考えておくとしよう。良い休暇をおくれよ。ヨハネス。」

長い髪とマントを翻し、アンジェラは廊下に消えていった。

「さて、と・・・どうするかな。」

翼将宮の廊下の窓からヨハネスは空を見やった。澄み渡る青空を眺め、対フォレスタル戦略、そして本国の陰謀、ヨハネスはこれから起こりうる事象に思いを巡らせた。そのどれもが国を巻き込む大事になるだろう。34歳のワイバニア屈指の知略家はワイバニア帝国に吹き荒れる嵐の予感を感じずにはいられなかった。
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