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第二章 戦乱への序曲 第三話
「その通り。今回の敗戦の要因の一つが敵の対空戦術にあったということだ」

ハンスはそう言うと、ジークムント配下の龍騎兵が次々と撃墜されていく映像を表示させた。自分の部下が炎に巻かれ、地面に叩き付けられていく様子を見ることが出来ず、ジークムントは映像から目をそらした。

「弓兵による弾幕射撃と魔術散弾か……。確かにこれでは避けきれまい。俺の軍団も餌食になっていたかもしれん」

隆々とした腕を組んで、第五軍団長のヴァルター・フォン・ブッフバルトは口を一文字に結んで椅子にもたれた。ジークムントと並び、十二軍団の中でも指折りの剛の者として知られるヴァルターは敵の新戦法の犠牲者であるジークムントにわずかながら同情していた。

「それにしても無様に過ぎる戦いをし、我が帝国の名を辱めたのは事実。ネルトリンゲン軍団長を即刻処断すべきでしょうな。父上」

皇太子ジギスムントは傍らの玉座に座る皇帝アレクサンデルに話しかけた。

「待て。諸将の話を聞くのだ。お前はことを急ぎすぎる」

息子の目を見ずに、アレクサンデルは威厳に満ちあふれた声で言った。ジギスムントは舌打ちすると円卓に視線を戻した。

皇帝アレクサンデルは現在五五歳。一代でワイバニアを世界の半分を支配する大国にまで育て上げた人物である。政治手腕は他国の王を凌ぎ、軍事においてもワイバニアの歴代皇帝に比類ない武功をあげた英雄であった。

皇太子時代、弱冠二五歳でフォレスタル侵攻作戦の実戦指揮をとり、当時のフォレスタル軍を壊滅に追い込みワイバニア帝国の領土を拡大させる武勲を立てている。

その目は鷹のように鋭く、遠くを見渡し、その思慮は海よりも深いというのは皇帝の側近であったカール・フォン・フクステフーデの言葉である。優れた才覚と年月と共に磨き上げられた経験と判断力によってアルマダ最大の領土を誇るこの帝国を維持し続けていた。
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