第四章 決戦前夜 第四十七話
「こちとら、可愛い甥っ子に会いに来たと言うのにのぉ。苦手と言われると、悲しいもんじゃき」
ウォルターは腕を大げさに振り上げて涙を拭く仕草をした。
「よしてください、叔父上!大人げない」
ヒーリーは立ち上がると泣きまねをする叔父に駆け寄った。
ウォルター・エル・フォレスタルは45歳、フォレスタル国王ジェイムズの実弟である。14歳のときに船上の盟約にともない、3年間の人質生活を余儀なくされたが、王太子エリクシルの誕生と共に、フォレスタル王国に帰還した。その際船上から見たガスパール川の美しさに魅了され、水軍に入隊。以後頭角を現したウォルターは数々の実戦を経験し、30歳で水軍提督に昇格した。また、剣の達人としても知られ、ピット、ジェイムズというアルマダ屈指の剣豪と互角に渡り合えるほどの腕の持ち主だった。
ヒーリーはメアリ以上に、このアルマダ唯一の提督を苦手としていた。メアリは数々の体罰から来るトラウマから苦手であったし、ウォルターはその芝居がかった行動そのものが苦手だった。もともと、何事にも無関心であったヒーリーには、何事にも暑苦しく自分にからんでくるウォルターが嫌だったのである。
「わかった、わかった。ところで、仕事の話にもどるがのぉ、ヒーリー。水軍の船総数600隻、メルキド増援軍輸送の任、確かに承ったぜよ。あとはお前らをのせるだけじゃき」
船乗り特有の焼けた肌に白い歯をまぶしくきらめかせて、ウォルターは笑った。
「ありがとうございます。提督。つきましては提督にもう一つお願いがございます」
「なんじゃ?いきなりかしこまって。気持ち悪いのぉ。わしとお前の仲ぜよ。なんでも言うてみぃ」
「ミュセドーラス平野まで、我々増援軍の補給部隊の護衛をお願いしたいのです」
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