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第四章 決戦前夜 第八話
「なぁ、ポーラ……」

ヒーリーは意を決した。

「なぁに? ヒーリー」

「……」

ヒーリーが一生で最大の勇気を振り絞った告白はいたずらな風によってかき消された。辛うじて音だけを聴き取れたポーラがヒーリーに尋ねた。

「え? 何……? 聞こえな……きゃぁぁぁぁぁ!」

「ポーラ!」

再び急な風が二人を襲い、ポーラがヴェルから振り落とされた。ヒーリーはすぐさま急降下してポーラを追いかけた。

「ポーラ!」

地面へと真っ逆さまにおちていくポーラに追いつくと、ヒーリーはポーラを抱きしめた。

「……ヴェル!」

ヒーリーの声に応え、ヴェルは落下と急降下の衝撃を最小限に食い止めて滑空した。

「はぁ、はぁ……」

ヴェルが速度を緩め、安定した飛行に移ったとき、二人は荒い息を吐いた。ポーラはヒーリーの胸の中で大好きな人の心臓が脈打つ音を感じていた。

「ポーラ、大丈夫か?」

ヒーリーは心配そうに胸に抱くポーラを見つめて言った。ポーラは少し顔を青ざめながらもヒーリーの服をぐっとつかんで返した。

「うん。大丈夫。ヒーリーが助けてくれたから」

「そうか……そろそろ、帰ろう。もう夜になってしまうからね」

ヒーリーはヴェルに王城に帰るように言った。エメラルド色の翼竜はゆっくりと、そして大きく旋回すると二人の家に向けて進路をとった。

「ヒーリー……」

「うん?」

「生きて帰ってきてね。負けても、いいから」

ポーラはそう言うと、再びヒーリーの胸に顔をうずめた。

「あぁ、帰ってくるさ。……必ず」

なぜ、「必ず」と言えたかはヒーリー自身にもわからなかった。ただ、自分の帰りを望むポーラの気持ちに応えたい。それだけをヒーリーは考えていた。

空を飛ぶ二人の前に慣れ親しんだ街の明かりがぼんやりと輝いていた。
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