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従軍記者の日記 10
「それはどうも。それと失礼ですが許中尉。失礼ですがずいぶんお若く見えますが……」 
 明らかにクリスのその言葉にさらに不機嫌な顔になる明華。
「私に会うと皆さん同じ事を言うんですね。十六ですよ。これでも一応は、私、ちゃんと遼北人民軍事大学校工業技術専攻科を出てるんですけど」 
「天才少女って奴だねえ……」 
 嵯峨の添えた言葉にキッと目を見開いてにらみつける明華。嵯峨は机に置かれた扇子を取り出して仰ぎながら目を反らした。
「そうですか」 
 そう言いながら二人の女性士官とはかなげな印象が残る女性下士官を観察するクリス。
 遼北に多い中華系遼州人の女性将校。遼北で進む軍内粛清運動から逃れて来たと考えれば、彼女の存在はそれほど珍しいものではない。
「隊長、私の紹介はしていただけないのですか?」 
 柔らかい声で彼女は嵯峨に声を掛けた。いかにも待っていたと言うように笑う嵯峨。
「そうだな、じゃあこいつがセニア・ブリフィス大尉、当部隊最強のペッタン娘だ」 
「隊長!セニアをからかうのはいい加減止めなさいよ!」 
 嵯峨の声が終わるや否やきつい口調で食って掛かる明華。
「おっかないねえうちの技官殿は。ただな、日常に潤いを、生活に笑いを求めてだな……」 
 わけの分からない言い訳をしながら扇子で顔を扇ぐ嵯峨。ハワードが笑いを漏らそうとして、明華ににらみつけられてクリスに目をやってくる。
「私は?」 
 銀色の髪のつなぎを来た下士官が挑戦的な瞳で嵯峨を見つめている。嵯峨はどこか含むところがあるように大きく咳払いをしてから口を開いた。
「こいつがキーラ・ジャコビン曹長。二式の整備責任者と言うことで」 
「二式。アサルト・モジュールの型番ですね」 
 クリスは場に流されまいと、そう切り出した。あからさまに面倒そうな顔をする嵯峨。
「隊長、よろしいのですか?」 
 クリスの言葉に、明華は静かに嵯峨を見つめた。嵯峨はそれを聞くと背もたれに寄りかかって大きく伸びをする。
「どうせ明日からの作戦には出すつもりだからな。知っといてもらってもいいんじゃないの?明華、キーラ。案内してあげてよ。俺はこれからセニアとパイロットの指導について話があるんでね」 
 嵯峨は投げやりにそう言うと再びタバコに火をつけた。
「それではお二人ともよろしいですか?」 
 すでにドアを開いてきつい視線でクリスを見つめる明華と静かな物腰でクリス達を待つキーラ。
「写真は撮らせてもらえるんだね」 
 ハワードはカメラを掲げる。明華は嵯峨の方を一瞥する。セニアに机の上のモニターに映ったデータの説明を始めようとしていた嵯峨が大きく頷く。
「隠し事するほどのこともねえだろ?アメリカさんの最新鋭機に比べたらあんなの子供だましだよ」 
 嵯峨のその言葉で、明華は大きく頷いた。
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