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いつも俺の心に
作:蛇喰奴


ガタンゴトンガタンゴトン

キィーッ!キキッ

ガッシャーンバーンドドドドド

この日最終の電車が車輪を外して横転。脇を流れる川へ転落した。

辺り一面に広がる砂煙と叫び声

この大惨事は20分後には日本全国にニュース速報として伝えられた。

(先程‘中部東鉄道桜が丘駅付近’で電車が脱輪横転し、川に転落しました。死傷者が多数出ている模様です)

「おいー、これってすぐ近くじゃねぇか、危ないなー」

と言っているのは桜井彰。

それから2時間ぐらい経った時、桜井家の電話が鳴った。

「はい桜井」


「池田ですけど彰君?」


「ああー、どうしたの?」


「志穂が…電車事故に巻き込まれて…さっき亡くなったの」


「電車って、さっきニュースで見たぜ…」


突然の出来事に現実に目を向けられない彰

「志穂の婚約者には伝えなきゃって思って…」


悲しみに言葉を詰まらせる志穂の母

「わ…わかりました」


ガチャッ

「なんでだよっ。今朝楽しく電話したばっかじゃねぇか。信じられねぇ信じられねぇ。病院に行くしかない」


無我夢中で走った搬送先の病院は報道陣でいっぱいだった。

「こらっ、カメラなんか持ってくる所じゃねぇ、どけっ!」


人混みをかきわけて着いた霊安室には泣き崩れる家族の姿があった

「志穂っ志穂っ。おまえは俺と結婚するんだよな?なんで…なんで、遠くに行っちゃうんだよ。俺のそばに居ろよ。俺のそばに…」


何気無い毎日の会話や笑顔が今の二人にはもうなくなった。
途方に暮れる毎日に生きる価値観を失い、何も考えずにただボーッと過ごすようになった彰。

───1年後───

彼女の1周忌があり、家族からの誘いで彰も参列した。

ふとろうそくを見上げると片方だけ妙に大きくなったり小さくなったりしていた

「風のせいだな、まぁ気にしない」


彰が遺影に目を向けた時何か白い固まりが遺影から飛び出してきた。

「わぁっわっ、なななななんだっ?」


「彰君なにをしてるの?座ってなさい」


どうやら彰にしか見えていないようだ

「えっ、でも、白い、ほらっ」


「いい加減にしてっ」


「あっでも…はい」


その後も白い物体は彰の周りをグルグル回って、やがて隣で止まった。完全に凍りつく彰の横で今まで丸かった物体が伸び始め、人の形に変わった。

「し、志穂!?」


「彰、喋っちゃダメ。私の声や姿はあなたしかわからないの。あなたの心の中は見えるから、声に出す必要は無いわ」


「何が何だかわからないんだ、一体なぜここに君の姿が?」


「人は死んでから天国で裁判があるの。自殺や悪い事をした人達以外は皆人間の世界へこれるようになって、決められた一人の前で、顔を出す事ができるの。」


「ほぉー、それで俺のとこに来たってわけか。」


「何よ、それ。なんか嫌みたいじゃん」


「あっ、いや、そんな事ないよ。俺は君が好きなんだから、例え君が生きていなくても君が好きだ。」


「……。クスクス」


「……。あはは。生きてても死んでても俺達の会話って変わらないな!」

「彰はいつも好きって言ってくれるね」


「で、いつまでココにいれるんだ?」


「半永久的っていうか…。私がいる事がバレたら帰らなければならない。写真に写ってしまったり、彰が誰かにしゃべったら、帰らなければならないの。」


「そうか、わかったよ。絶対内緒にするから、ずっとそばに居てな」


「ありがとう。」


「トイレには着いてくるなよ」


「言われなくてもあなたのは臭いから行きませんよー」


「はいはい。」


こうしてまた奇妙なカップルが誕生した。

「始めてデートした展望台に上らないか?」


「いいわよ、行きましょう。」


「わわわっ!」


「何よ?」


「手繋げるんだな?」


「当たり前でしょ」


「は、はぁ」


展望台に着く頃辺りはすっかり暗く、月明かりだけが頼りなぐらいだった。

志穂が口を開く

「ねぇ、あの日電車の中で夢を見てたの…」


「あの時君は寝てたのかい?どんな夢を見たんだ?」


「あなたが私を ぎゅっ と抱きしめて、空を飛んでたの。飛べない私を抱いて、大きな羽を羽ばたかせて飛んでたの。怖いよ怖いよって言ってる私を抱いて…でも、目覚めた時にあなたは居なかったわ。私を1年も一人にして……もう、一人にしないで…怖いと言っても。痛いと言っても。あなたは私を ぎゅっ と抱いているの。」


「大丈夫だよっ、ほらっ、泣くな。」


ぎゅっ と抱き寄せ、さらに彰が言う

「志穂。君は俺の羽で、二人で一人なんだよ。絶対離れないし、絶対離れるなよ。」


「うん、ありがとう」


交すキスは冷たいけど、熱いものがあった。

世にも奇妙なカップルは全世界で何組もいるのだが、彼等は決して明かす事はない。
それは、そこに愛があるからだろう。














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