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  Mission!! 作者:Rach
7th Stg第80話「Fly High2」
中東諸国で起きた臨戦態勢は、この南欧の島国フォイオンまで影響を及ぼしていた。つい3時間前にはイラタ国の首相インサダ・ムフセが『今から48時間後に、イラソ国の上空を飛ぶ全ての飛行機を撃ち落とす』と発表。民間飛行機が飛べなくなる前に、イラソ国に滞在しているフォイオン人を、急きょ救出しなければならなかった。よってフォイオン防衛省では、急ピッチで空軍C-130輸送機での国民救出に向けて体制を整えていた。

すっかり夜が更け、アンドレの部屋からそうっとテラスに出ていくサラの姿があった。いつも二人で使っているその部屋が、アンドレがそこにいないというだけで、なぜか閑散としているように感じたサラは、星がきらめくテラスに出て大きく息を吸って見せた。ふと気付くと、ベンがあわただしく重厚な白いドアを開け、アンドレの執務室に何か取りに来たようだった。この2,3日この光景を何度見たことか…。
「どうした?一人で物思いにふけって・・」不意に忙しそうなベンから声を掛けられた。
「ああ、ベン。ウィルは?」ベンはテラスに続くドア越しに立っていた。
「まだ会議室で外務大臣と一緒だ。あの国がヘランテ空港までのフォイオン空軍輸送機のフライトプランを受け付けないんでな・・・。直接交渉中だ。」
「受け付けない?なぜ?」サラは政治に関しては全くと言って興味はなかったが、国民を救出するべく向かう輸送機のフライトプランを受け付けないのはおかしいと思った。
「細かい理由はわからんが、イラソ国はどうも3Xエネルギー鉱石合同研究のラブコールを、フォイオンが受け取らなかったことにヘソを曲げているようだ。」
「なんてこと・・・」
「イギリスもドイツも明日には輸送機が到着し、自国民を救出できるというのに、例の石っころのせいで、こんなところにも問題が出てくるとはな。国王は相当お疲れの様子だ、少しは優しい言葉でもかけてやってくれ」
ベンはそれだけ言うと、アンドレの執務室にあった書類を掲げて急ぎ足で部屋から去っていっってしまった。

サラはまた一人になって、何かさびしさを感じ始めていた。この広い部屋に自分だけ…。今までずっと孤独な生活をしてきて、淋しさなんて感じたことなどなかったのに。

「優しい言葉か・・。例えば・・ご苦労・・とか。よくやった?・・それはないわね・・。やっぱり、ゆっくり休め。これかな・・・」
ひとりボソボソ独り言を言うサラだった。ふとテラスから見える下の噴水に、携帯を持ったホウィの姿が目に入った。
「やあ、久しぶりパティ、どうしたの?眠れないの?」その声を聞いて、あきれた表情をしたサラだった。
「・・・・また女か・・・」サラは部屋に戻ろうとしたが、ふと足を止めその会話を聞きいってしまった。ホウィの電話の会話はサラの耳にしっかり届いていた。
「仕事がうまくいかなかったって?パティらしくないな・・大丈夫さ。君はいつだって笑顔で頑張ってきたじゃないか。いつも君が、友人を助けてあげていることはみんな知っているんだよ。明日にはきっと君の友達が助けてくれる。もちろん僕もだ。大丈夫。全部背負い込まないで。」
ホウィは携帯を切ると宮殿に戻っていったようだった。彼はサラから見えない場所に来ると、少し笑って鼻先を指でかすめ、上機嫌になって2階へと続く豪勢な階段を上って行った。ホウィはサラの独り言を聞いて、わざとそんな電話をしているフリをしたことは言うまでもない。

サラしかいないアンドレの部屋の時計は、夜23時を回っていた。廊下から続く白いドアの内側には、これも豪華なリビングがありそこに置かれたソファに座って、何やらたくさんの本を読みふけっていたサラだった。思えば、このソファはサラがはじめてフォイオンに来た日の夜、このソファをベッド代わりに夜を明かした。ボディガードとして入り口付近やテラス辺りを警戒するのは当然だ。しかしテラスの前には国王アンドレの寝室がある。彼女にしてみれば、そこに一緒に寝て警戒するか、白いドアのある入口付近で警戒するか、どちらかにひとつの選択肢。当然、男性である彼のベッドでは・・・。
『でも今は・・・・』今は二人は同じベッドで寝ている。『確かに護衛するには好都合かもしれないが・・・。』 
しばらくしてその白いドアがノックとともに開いた。メイドの女性がドアを開けたその向こうから、アンドレが少々疲れた様子で部屋に入ってきた。サラは急に立ち上がって心配そうにアンドレを見つめた。
「あ、まだ寝ていなかったのですか?すみません、遅くなってしまって」疲れているはずのアンドレは小さな微笑みとともにサラにそう声をかけた。
「お・・お疲れ・・」サラがぎこちなくそう言うと、アンドレは笑って答えた。
「はい」アンドレが続きになっている隣の執務室へ入っていくと、サラも後を追った。
「・・・輸送機は飛べそう?」
「いえ・・ちょっとあの国に冷たくしすぎましたかね・・例の鉱石の件で、少々強固な態度で拒み続けましたから。外交上の失敗というやつかもしれません。」
そこでも机の上の書類を裁きだしたアンドレだった。
「・・・それじゃ、ある意味フォイオン国民を人質にとっているのと同じだ。国際世論が許さないはず。」
「ええ、サラの言うとおりです。外務省の中にもそう主張する者もいました。極論ですがもしかしたらあの2国の臨戦状態は単なるパフォーマンスで、真の狙いは3Xかもしれないとまで言っている者もいます。」
背広を脱ぎハンガーにかけるとネクタイをギュッと緩ませ、そこにあった椅子にどかっと座り込んだ。いつもの彼だったら、決してそんなことしない。いつも優雅に気品あふれる動作を見せてくれるはず…。アンドレが大きくため息をついて、机の上にあった書類に目を通り始めた。
そこへサラが近づいていくと、そうっとアンドレの肩に手を当てた。
「サラ?」
「あ・・・あなたらしくないわ・・・大丈夫。フォイオンは世界中から、政府開発援助(ODA)という国際貢献をしているすばらしい国だと言われているのよ。・・・それはウィルの提案なんですってね。・・・・だからきっと他国から助けがあるはず。今回の件・・全部、自分のせいだと背負い込まないで。」
「・・・ありがとう。」アンドレは微笑んだ。
「あ、私・・ちょっと食堂に忘れ物があった!」急にあわてた様子で部屋から出て行くサラだった。そのあわてようにアンドレは声をかける暇もなく、唖然としてしまった。ふと見ると、サラの座っていたソファにフォイオン国の歴史や資料が載った本が置かれていた。アンドレはそれを見て微笑むと、ネクタイをはずし浴室へと消えていった。
食堂のドアを開け中に飛び込んでいったサラは、胸の鼓動を必死に抑えるかのように、手を胸前で添えて見せた。誰もいないガランとした空間に、薄暗いランプの明かりだけがほんのり灯っていた。
「私、ちゃんと言えたかな・・・変じゃなかったかしら・・・」サラはランプ台に置かれたレミーの本を手に取り、そして少し頬を赤くした彼女だった。
 
翌日の朝の外務省は、この緊急事態にまるで火災でも起きているかのような大騒ぎが続いていた。大きな机上に置かれた外務大臣のプレート。その男が電話に向かって大声で叫んだ。
「馬鹿な!それはあまりにも我々の足元を見ていやしませんか?3Xの共同開発研究を一緒にやるかわりに、ヘランテ空港までの空軍機乗り入れを許可するだと!!」その電話内容に相当憤慨している様子で、いまにも受話器が壊れんばかりの大声だった。それに対し、受話器の向こうから落ち着いた男の声が聞こえてきた。
「悪い話とは思えませんが。たかが研究ですよ?我々がそれを奪取するとか、データーを盗むとか、そういうことはまったくありません。」
「申し訳ないが、このことはマスコミにも流させてもらう。EUや米国がどのような態度に出るか楽しみだな。国際社会から孤立することになるぞ。」
「かまいませんよ。ああ、あと40時間ほどで時間切れです。よくお考えになってください。」電話が切れた。
「くそ、これじゃ人質だ!!」

翌日の宮殿内アンドレの執務室には、オスカーも参戦していた。そこでオスカーはパソコンにつなげた資料を覗き込みながら、アンドレに説明をし出した。
「今のところ、3Xの開発を任せてもいいかと思うプランを出してきたのは、ドイツと日本です。少ないデーターからここまで想像力を広げるとは、なかなかおもしろいと思います。」
オスカーがそう言いながら、少し不敵に笑って見せた。
「科学技術大臣とぜひその話を進めて下さい。でないといつまでも3Xの共同開発を持ち込んでくる国や会社が後を絶ちませんから。ただ、彼らとアーネストと名乗る組織との関係は十分洗って下さい。」
「その件ですが、アメリカからリクエストがありました。我々のこのアーネストの一件を報告したところ、向こうでもそれと同じような事件が起こったとのこと。さすがアメリカ。情報ネットワークに関しては手が早い。」
ベンがアンドレの隣でそう話をした。
「リクエストというのは具体的になんですか?」
オスカーはさすがに話の中核を逃さなかった。
「情報を共有したいと・・。しかしそんな彼らを信用していいかどうか、それが心配なんです。」
そう言ってアンドレはうつむいて見せた。そのあとをベンが言葉を続けた。
「CIAも動き出し国を挙げてアーネストを調べあげているらしい。その矛先は自国の高官らだ。CIAや各軍情報局など、すべてが互い同士を調べ始め、特に海兵隊では相当の情報を得ていると聞きました。」
「・・・わかりました。早急に日程を調整して安全保障理事会を開催しましょう。ひとつは3Xの開発事業計画の立案。もうひとつはアメリカとの情報の共有を進めるかどうか…。今は、まず優先順位としてわが国民の救出プランの作成がトップです。」
画像満載な「Mission!!」HPにて、アンケート及び感想待っています。
http://anime.geocities.jp/rachsmission/
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