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  Mission!! 作者:Rach
6th Stg第77話「Pablo George Granados〜Scoundrels6」
イワンは製鉄工場のどこからか、濃縮された酸素タンクを引っ張ってきた。見るからに重そうなそのタンクを抱き起こし、つぎに窓にテープを貼ると、持っていたガラスカッターで窓に小さな穴をあけた。
そこから見える室内には、飲んだくれたジョルジュの姿と、酒を片手に話をしている二人の男、マシューとモーリスの姿があった。モーリスは上等なスーツを着込みソファにふんぞり返ったまま、これも高級そうな琥珀色の酒が注がれたコップを手にしていた。
「あいつ・・・」イワンはいまにもその男を殺してしまいたかった。こみ上げる感情を抑え、手元の時計を見ると時計は2時30分を指していた。『ホウィが警察に電話をかけているころだ。急がねば・・・』イワンは酸素タンクの吹き出し口にホースをつなげ、その先を窓から室内に入れ込むと、少しづつ濃縮された酸素が噴き出していくのを確認しながら、
ゆっくりタンクコックを開いていった。

そのころ、サラはサイレンサーつきのピストルを構え、隣接する工場内に侵入していた。薄汚い製鉄工場の機械が建ち並ぶその向こうに、どこかで見たアンビが停まっているのを確認すると、その近くに置かれたパイプ椅子に腰掛け、テーブルの上でカードゲームをしている二人の男の姿をとらえた。
ちょうど一人の男が席を立ち、トイレに向かったようだった。チャンスをとらえたサラは、ひとり残ってたばこを吸いだした男のそばに寄って行った。不意に男がサラに気がついた。あわてて銃を取り出したが間に合わず、その銃はサラの蹴りではじかれてしまった。
「!!」この男が叫び声をあげようとした瞬間、サラの左腕が男の顔にのめり込んだ。1,2歩後退した男に、滑るように斜め前進し近づき、その合間を開けさせないかのように、次の連打が男に向かって伸びていった。しかし、そのサラの拳はかわされ反対に腕をとられてしまった。
サラはこの男が拳法の達人であることを悟った、『ならば!!』
捕られた自分の右手首を胸前まで持ってくるべく、体をその手首の位置へ逆に近づけ、左手を添えた。一瞬、男はそこにあるサラの柔らかい胸に戸惑った。しかも女からこの体制に入り込み、俺の手を両手で包みこんでいる。ちょっとした心の隙間が油断を招いた。
サラは包み込んだこの男の手首を固定しそこを支点に、思い切り腕を曲げさせ体を倒していった。男の体はどうすることもできず、そのままどかっと床に倒れこんだ。サラはすかさず、男のみぞおちに蹴りを入れると、男のポケットからアンビのカギを取り出した。その時、トイレに行っていた男が戻ってきたようだった。サラは気絶したその男を椅子に座らせると、男が現れるであろう出入り口のそばに身を隠した。
「あれ?寝ちゃったの?」男はズボンを直しながら、陽気にそう聞いてきた。こんな時狙う場所はただ一つ。サラはドアから入ってきた男の股間に、左足で回し蹴りを食らわせた。
「のおお!!!」股間を抑え、前屈したところへ首の後ろを思い切り殴ったサラだった。
「あんまりこういうことしたくないんだけどね・・。」息を整えながら、二人をアンビの後部に担ぎ込むと、すぐ時計を確認した。そして窓からマシューらのいる建物をのぞいた。

「で、ウラジオストックではどのくらい儲けたんです?」マシューがそこにいる高級スーツ男モーリスに、ニヤニヤしながら質問した。
「億単位よ。あの辺はひそかに日本の影響を受け、結構羽振りのいい輩が多くてね。しかも交通の便利もいい。シベリア鉄道の東方の始発駅である。ヤクは長距離列車で中国のハルビンからラクラク運べるし、こりゃ最高だと思っていたんだが、まさか警察に足がつくとは思っていなかったぜ。」
「どうやって逃げおおせたんですか?」マシューは体を大きく前のめりにし、興味深そうにそう聞いた。
「お前たちにはまだ話してなかったが、結構な黒幕が俺にはついているのさ。ある条件を飲んでくれれば助けてやると耳打ちされた。そこに多額の金を払って俺はロシアから逃れた。」
「その黒幕とは、どこかの国のマフィアとか?」
「いや・・・、かなりの権力者が集う組織で、その実態はまるで雲のようにつかみどころがない。ただ言えるのは、新しい未来への出発を目指している正直者アーネストの集まりらしい。何を持って正直というかわからんがね。」4th Stg「The Sullen Tones」シリーズ参照

マシューはその話の内容が何を具体的に指しているのか、この時にはまだ分からなかった。しかし後に自分とジョルジュがこの組織に雇われ、南欧の島国フォイオンで都合よく殺されることなど、今は思いもしなかったであろう。3rd Stg第40話「Car Chase」参照

「とにかく、金を集めないといかんのだ。カネをな・・・」モーリスはそう言って酒を口に運んだ。

ガラスに集音マイクを付け、その話を聞いていたイワンがチッと舌を鳴らした。それもそのはず、肝心な組織の名前や具体的な大物権力者の名前が出てこなかったからだ。『正直者ってだけじゃ、祖国にリポートをあげられやしねえ…。』

「なんだか頭が痛くなってきた…。」ソファに座ったモーリスが頭を抱えた。それもそのはず、部屋には高濃度の酸素が注ぎ込まれていたのだから。その時、何気に窓から外を見ていたマシューが、大声で叫んだ。
「アンビが出ていくぞ!!」その声に目を覚ましたジョルジュは、大慌てでドアを開けようとしたが、なぜかそのドアは開けられなかった。窓から見えるサラの運転するアンビがゆっくりとその姿を現した。
「おおい!!誰だ!カギなんかかけやがったのは!!」
「だれもそんなことしてねえ!!」そう言ってドアに体をぶつけ、何とか開けようとするマシューだったが、イワンがそのドアにひそかに小細工をし封鎖したのだ。ジョルジュがそこにあった無線機を引っ掴んだ。見張りの男が裏切ったのかと思い、無線機のスイッチを入れた瞬間、建物は爆発し窓ガラスが吹き飛んで行った。

「ありゃ、火をつけるならジョルジュのたばこだと思っていたんだが・・・。」
イワンは外で近くにあった椅子に座って、そのひと騒動を見て楽しんでいた。そこにサラが運転するアンビが近づいてきた。
「まさか、殺したの?」運転席から出てきたサラはイワンに聞いた。
「最初はその予定だったが、ちょっとわがまま言わせてもらうことにした。」
「?」サラは首をかしげた。
「外人部隊の1任期くらいは、君と一緒にいてもいいかなって・・・」サラはこの言葉に、イワンという男がなぜフランス外人部隊に来たのか理由がわかった。この男はやはり今でもロシアの諜報部員だ。外人部隊に来たのは、それを隠れ蓑にして国家の命令を遂行するため。モーリス・ショーロホフという犯罪者を始末、又は情報収集に来たのだ。フランス外人部隊には過去を話したがらない男たちが必ずいる。その理由は人それぞれで、それがScoundrels(ならず者)の集まりといわれるゆえんであろう。
砕けた建物の中から、真黒になったモーリスがふらふらしながら出てきた。サラの隣にいたイワンは、半分炭のようになったその男の近くに寄っていくと、いきなり蹴りつけた。
「このふざけた野郎め!!どれだけ金を儲けた?え!?他人の家族をめちゃめちゃにして、お前は人間なんかじゃない!」もう一度蹴ろうとしたところをサラが止めた。
「それ以上やると、死んでしまうかもよ。」イワンは彼女の声に少し冷静になったのか、静かにこう尋ねた。
「話せ。お前のバックにいるグループに誰が所属している?」イワンはモーリスの胸倉を引っ掴んだ。サラはその場から離れ、小銃を背中に背負いナイフを取り出し周囲を警戒した。死んでいなければ近くにあのマシューとジョルジュもいるはずだ。サラはイワンの尋問に興味を見せず、そのまま付近を捜索し始めた。
サラにとってこの時が初めて、謎の組織「アーネスト」との接点だったとは、思いもしなったであろう。
またコンクリートがめくりあがった。その下から顔を出したのは、マシューとジョルジュだった。近くにいたイワンはその体を翻すと、モーリスを編上靴で踏みつけたまま、そこに現れた二人にむけ銃を向けた。
サラは、にらめっこする3人の向こうで、イワンに静かに首を振った。なぜなら高濃度酸素が充満するその付近での銃撃戦は、互いに命取りだ。イワンは自分の近くで、まだシューッという音とともにあふれ出ている酸素の吹き出す光景を確認した。それでもイワンは銃をしまうことをしなかった。
「マシュー、ジョルジュ。」サラは二人の名を呼んだ。
「お前・・・また俺たちの邪魔を・・・。」マシューは苦しそうな表情を見せながら、そこにいたイワンに近づき、銃を恐れもせず飛びかかった。
「撃てないのは百も承知だ!!」その状況を悟っていたマシューは、イワンが構えた銃を撃つことができないのを知って、思い切りつかみかかってきた。
『そうだった・・・マシューは爆破物のエキスパート。この状況をいち早く知ることができたのも不思議なことではない。』
サラはあわてて、取っ組み合いになったイワンとマシューに駆け寄ろうとした。しかし彼女の目の前に立ちはだかったのはジョルジュだった。彼はサラに向け銃を構えてみせた。

『この軽率男なら、ここで発砲をするかもしれない…』

サラは一瞬、戸惑った。まだイワンとマシューはそこで格闘している。撃ったら最後、また酸素爆発に巻き込まれる可能性がある。しかしジョルジュは無線機に一番近い場所にいたため誰よりも重症だった。この軽率男は、とたんうめき声を発し片膝をつき崩れ苦しそうに咳をした。サラはほっとして言った。
「そろそろ警察が来る。しばらく臭い飯を食って、しっかり反省しろ」サラはそう言って、イワンに目を向けた。
「俺も・・・パブロに格闘技を習わないといかんな!!」イワンは爆発で体力に余裕のないマシューを思い切りぶん殴った。2.3歩大きくよろけたマシューにナイフを抜いた。
「スペツナズナイフ・・・」サラはそう言った瞬間、イワンから飛び出したナイフは、見事にマシューの太ももに突き刺さった。サラは笑った。普通なら確率の高い胴体を狙うのが普通だが、わざと足を狙ったのには、サラの『殺さない』という意向を分かってくれているということだからだ。
再び建物のがれきの上に崩れたマシューとジョルジュ、そして彼らのボス、モーリスに二人は片腕だけ手錠をかけ、その片側をむき出しになった鉄の棒にひっかけた。
「お前ら・・・覚えてろよ…。」小さくマシューがそう言ったのが聞こえた。
そろそろここを立ち去らないと警察がやってくる。そう思った二人は、彼らを置いてアンビに乗りこもうとしたところに、ジョルジュの最後の悪あがきが飛んできた。

「どこかで出会ったら、お前をズタズタになるまでFuckしてやる!!」
この時のジョルジュの罵声が後ほど、サラがフォイオンの国王アンドレとともに王室専用墓地で拉致され、古い病院に閉じ込められたあの時の行動にかかわってくることになろうとは…。
2nd Stg第25話「TSD4」参照

そのひどいセリフに振り向いたサラは、つかつかと二人に寄っていくと、思い切り二人を蹴りあげてしまった。
「おいおい、人には止めたくせに・・・」サラは持っていた蛍光ペイント弾を持ち出し、中のインクでそこにねっ転がった二人の背中に何か書き始めた。
「何しやがる!!」ジョルジュは必死で抵抗した。イワンが不思議そうにそこに近づいていくと、おもわずプッと笑いだし口を両手で押さえこんだ。
「笑わないでよ・・・。生まれて初めて描いた絵なんだから。」二人の背中には日本で有名なHello Kittyの猫の絵。
「フランちゃんのことでパブロを揺さぶっていたお返し。」そういうと、二人はアンビに乗り込み立ち去っていった。

しばらくしてあの場所でまた爆発が起きた。二人は驚いて車を止め来た道を覗き込むと、お互い顔を確認し笑ってしまった。
「そう言えば、酸素ボンベ止め忘れたわね。」
「ジョルジュが煙草にでも火を付けたんだろう。」おっちょこちょいな性格であるジョルジュは、その場でマシューの警告も忘れ、ついつい煙草に火をつけてしまった。
2度の爆発を経験したマシューとジョルジュは、今度ばかりは失神してしまったことは確かだろう。その推測は正しく、実際ジョルジュの右手からライターが地面に滑り落ちていった。
画像満載な「Mission!!」HPにて、アンケート及び感想待っています。
http://anime.geocities.jp/rachsmission/
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