ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  Mission!! 作者:Rach
6th Stg第75話「Pablo George Granados〜Scoundrels4」
武器を運び終えたマシューとジョルジュは、現場からとっくに遠ざかっていた。汚れた衣服をそのままに、口元に酸素ボンベを当てながら、汚いバラックに戻るところだった。
「これで、一攫千金だな。」ジョルジュがにやりと笑いながらそう言った。
「あとはアンビがうまいこと、Bossの所に運び込んでくれるのを願うだけだ。それと、あの手下ども30人の輩にブツを渡して、とっととこの外人部隊からおさらばだ。」
そう言うと二人はバラックの鉄ドアを開けた。ロッカーの中の私物をかばんに詰め込むと、多額の金をジャケットの裏ポケットにねじ込み、ドアに向かって歩き出した。そこへひとりのGIカットヘアーをした男が勢いよくドアを開け、二人を驚かせた。
「どこに行くんだ??まさか・・・」男は震える手を前に差し出しながらそう言った。
「ちゃんと物は置いていく。」面倒くさそうな顔をしたマシューがぼそっとそう口にした。
「ど・・・どこに?・・早くヤクをくれ・・もう体が持ちそうにもないんだ・・・」男はまるで懇願する乞食のように、マシューに歩み寄って麻薬をせがんだ。
「パブロが次のお前たちのBoss だ。話はつけてある。奴の車の中にたくさん、君たちの大好物が入っているよ。へっへっへ。後はやつに聞きな。じゃ、あばよ!!麻薬常習者ちゃん!」あのアンビがバラックの前に止まった。運転手がバラック内のマシューらを見つけると、にやりと笑って軽く手を振った。
二人はその後部ハッチを開き乗り込むと、アンビはけたたましくサイレンを鳴らし赤色灯を回して、その場を走り去った。難なく外人部隊のゲートを抜けて外へ出ると、後部ではストレッチャーにまたがり大声で笑うマシューとジョルジュの姿があった。
「大成功!!Bossモーリスの大笑いする顔が目に浮かぶぜ!これで、俺達は億万長者だ!」
そうジョルジュが言うと、マシューもそこにあるたくさんの武器を眺め、笑いながら寝ころんだ。
「この武器の行き先は北朝鮮だとさ。今頃、多額の金と麻薬が西海岸に運ばれているはず・・・。で、俺達は次にどこに行く?」
「そうだな、しばらく海のきれいな地中海の島国なんてのよくないか?」
「悪くないな。」二人はアンビの中に埋め尽くされた武器の数々を眺めながら、すっかりリラックスムードだった。ジョルジュはそんな陽気な雰囲気から気が緩んだのか、携帯電話を取り出し電話をかけ始めた。
「Honey!パスポート持ってる?オレオレ!!ちがうって!!オレオレ詐欺じゃないってば!!金ならたくさんあるんだ。明日迎えに行くから待っててよ。」
マシューはその電話の相手が誰なのかわかっていた。廃れたバーの裏で働く体を売る女性たち・・・。マシューはジョルジュのこういう態度が嫌いだった。ちょっと成功するととんでもなく大喜びし、余裕の態度をとる。まだここにあるブツはBossであるモーリスのところにたどり着いちゃいないのに・・・。その嫌な予感は、後に的中してしまうことを彼らはまだ知らなかった。

その夜、フランス外人部隊の司令庁舎では、武器が盗まれたことを知るまで、そう時間がかからなかった。ベンは司令官室に他の幹部たちと同様に呼ばれ、ながなが会議をしている様子だった。もちろん、あのきゃしゃな司令官は、机から顔だけ出し憤慨していることは間違いないだろう。廊下を歩くサラとホウィがそう思ったとおり、司令官室から大きな罵声が飛んできた。
「ゴードン中尉!!なんでそこまで知りながら!そのアンビを止めなかった!!!!」
猫アレルギーのことなど忘れたかのような、クリヤーな発声だった。
「我々外人部隊には、市の救急車を取り締まる権限はありません。ただ武器の盗難については、現場で起きた限り現行犯逮捕は可能ですが、その行為をしたのはわが隊のマシュー・ロドリゲス軍曹とジョルジュ・トウェイン軍曹です。しかも、その行動を許可したのは、この教官です。」
そこまでベンが言うと、あの時マシューの説明を聞いて納得した教官が、大きくうなづいて説明し出した。
「私は現場でマシュー・ロドリゲス軍曹と直接話をしました。あの時、彼は爆発に武器が巻き込まれることを恐れ、一番の優先順位は武器の搬出だと、化学防護服片手にそう言ったのです。」
司令官は広いおでこに手掌をかぶせながら、困った表情のままだ。
「確かに高価な武器の搬出は一番の優先順位プライオリティ。しかし、それを詰め込んだ場所が所属不明のアンビだったことが問題だ!!ああ・・・上層部になんて説明したら…」司令官は隠すこともなく部下の前で困った表情をさらけ出した。
「猫がカギを盗んで、マシューに渡したことにしたらどうか?」誰かがふざけたことを口にした。そのとたん、司令官がまた激怒したことは言うまでもない。

そんなころ、パーティションで区切られたホウィのオフィスでは、パソコンにインジケートされた、カステルノダリの地図を覗き込むホウィとサラの姿があった。
「携帯GPS機能ってのは、この辺りってところまでわかるが、ドンピシャでこの建物ってところまでは出ないんだ。でも、この地域にはほとんど目立った建物はなく、ベッセマー製鉄所という工場があるだけだ。ここがあやしい。」
「あの二人には散々な目にあったから、一発殴らせてもらうまで腹の虫がおさまらない。」サラはコンピューターの横で、ひとつため息をついた。
「しかも、あの二人のロッカーはもぬけのから・・・。脱走兵になっちゃったわけね。」
そこにサラの携帯が鳴った。
「はい・・・」
「Bonsoir!(こんばんは) 俺だ。オスカー・ラビンドラナード。元気にしてるか?」サラの携帯にかかってきたのは、イギリスにいるはずのコンピューターオタクのオスカーだった。
「オスカー・・・、どうだった?」ホウィはサラが携帯を持っていたことに驚いた。とたんホウィは、目つきが変わりそこにあった用紙に殴り書きをした。
『Me dire votre nombre de telephone portable.(携帯の電話番号教えて!)』
サラは、ホウィが目の前に差し出したその用紙から目を背けると、話の内容に集中した。
「ハッキングっていう言葉は使いたくないが、夕方1815(ヒトハチイチゴ:夕方6時15分)に、走行中の救急車付近から携帯の発信があった。衛星からとらえたその時間のカステルノダリ、レ・ジャルダンドストリートを走るアンビの画像を確認したから、やつらの発信に間違いない。」
「なるほど・・・」納得したサラの目の前に、またホウィが紙を持って現れた。
『Me dire votre nombre de telephone portable s'il vous plait.』
今度はs'il vous plait(お願いします=please)を書き足して見せた。サラはあきれた。
「サラ、聞いてる?」オスカーの言葉が続いた。
「え・・ええ、ごめん。」
「その30分後、同じ番号からまた発信されている。場所はプレスティッジ・サントル、ベッセマー製鉄工場。君のお友達の携帯GPSとも位置は一致している。今から情報を送ろう。アドレスを教えてくれ。」そこまで聞くとサラはホウィに携帯を手渡そうとした。
「彼が情報を送ってくれるから、メルアド教えてあげて。」ホウィはちょっと嫌そうな顔をして携帯電話に出た。開口一発目のホウィの質問はこうだった。
「Etes-vous lami de Sara ?(君、サラのボーイフレンド?)」サラは近くにあった本を、思い切りホウィの頭に真上から投げ落とした。
「Aie !(痛て!)」

その時、廊下を走る基幹隊員の慌ただしい靴音が聞こえてきた。司令官室のドアを、荒々しくノックしている様子に何事かと驚いたサラは、こっそり廊下に顔を出しそのドアに近づいて行った。ホウィはまだオスカーといろいろ話をしているその間、司令官室の扉の向こうから、ベンの声が聞こえてきた。
「なんだって!!パブロがグランドで暴れている!?」サラはその声を聞くや否や、走ってグランドに向かった。
夜になってサーチライトが照らされた運動場では、ひとりパブロが手にナイフを持ったまま、近づく他の隊員たちを振り払っている様子だった。
「パブロ!!」サラは叫んだ。パブロがおかしい・・というよりも彼の周りにいる男たちのほうがどことなく異様だ。それもそのはず、麻薬に染まった犠牲者たちは、次のBossはパブロであるといわれ、切れそうになった麻薬をねだっているのだった。
「俺は違う!!お前たちのBossなんかではない!!」
「何を言ってるんだ・・・パブロ。厳しい訓練で頭がおかしくなっちまったのか??」
「お前、ライフルの部品盗んだだろ?いいのかい?エリート軍人がそんなことをして・・母国の父上様がそれを知ったら、泣いて喚くぜ。・・・」
「脅す気か?!」そう言ったのもつかの間、パブロの所持品である父からの手紙を取り出す仲間だった。きっとパブロのロッカーを勝手に開け、ブツを探した時に見つけたのだろう。そこに駆けつけたイワンは、周りにいた隊員たちを見て静かに言った。
「やはりな・・・。俺が睨んだ通りだ。」サラは彼のセリフを聞き振り向いた。
「この連中、マシューとジョルジュから麻薬を買っていたんだ。ここでの訓練に耐えられなくなり、ついついこいつらはそれに手を出した。ある日、仲間が俺に言った。金を貸してくれとね。」
誰かが通報したのか、銃を持ったMPが周辺を取り囲み、あたりは騒然とした雰囲気になっていった。担当教官のベンも駆け付けると、彼はその状況に『今日はなんて一日だ』とでも言いたげな顔だった。
それもそのはず、武器庫の爆発、マシューとジョルジュの脱走、パブロの暴走もすべて今日起こったことだ。それともうひとつ・・・サラとの武器分解結合で負けたこともだ。
いまにもパブロを取り囲んでいる周りの男たち全員が、彼に飛びかかりそうな雰囲気だった。
「Boss!車の中に入っているアレをくれ!!」
その声が耳に届いたパブロは、全面的にそれを否定しようと、大きく首を振った。
「何の話だ!!俺は何も持っていない!!」一人の男がパブロの車に向け走り出した。その男はまさにあの時、マシューとジョルジュがここを立ち去る寸前に会話をした、あのGIカットヘアー男だ。パブロはあわてた。とっさにそこにいるMPを倒し、その銃と手りゅう弾をもぎ取ろうとした。
「やめろ!パブロ!!」サラはパブロの前に躍り出てそれを止めようとしたが、格闘技のプロであるこの大男は、瞬時にそこに近づいたサラを捕らえ、首にその左腕をまわし締め付けた。
「ぐっ・・・」サラは苦しそうに体をばたつかせた。そしてパブロがMPから奪ったライフルの威嚇射撃がグランド上空に鳴り響いた。そこにいた全員の足が止まった。もちろん、パブロの車に向かったあのGIヘアー男も同様だった。
「車に行くな!!行ったら本当に撃つぞ!!俺はお前たちの言うブツなど持っていない!!」
突如、ベンの隣にいた男が半狂乱になって、教官にすがりついてきた。
「もうだめだ!!苦しい!!」ベンが、その行動に異常を感じたのはこの時だった。その隊員のみぞおちを思い切り殴り気絶させると、その瞬間にズボンの後ろにあった銃を抜いた。
「お前たち、これ以上の騒動は俺が許さん。パブロ、お前の言うことが正しいのなら、車の中をMPに見せろ。それですべてカタがつく!」サラはそのとき、パブロが一番恐れていることを思い出した。あの猫のことだ。捕らえられていたサラは、パブロにこっそり言った。
「大丈夫だ、パブロ・・・。私が猫を車の中に置いてほしいと頼んだことにしろ。そうすれば・・・」
「お前にこれ以上借りを作りたくない。それに、このことが父上に知れたら・・俺は・・・・俺は一流軍人だ!!早々にここを立ち去れ!!でないと、こいつを殺す!!」そう言って持っていた手りゅう弾のピンを抜いた。その瞬間、ベンの持つ銃口がパブロの足をロックオンした。周りのMPも銃を向けると、じりじりとその距離を詰めていく・・。
サラはベンに「撃つな」と何度も首を振った。しかし耐えきれなくなったひとりの麻薬常習者が、まるで幽霊のようにパブロの前に躍り出てしまった。パブロの銃がこの男に向け火を噴いた。それが威嚇射撃だったかどうかは今になっては分からない。
いち早く、そばにいたイワンがその幽霊と化した麻薬常習者を地面に押し倒し、サラは思い切りその銃を蹴りとばすと、連射されたままの彼のブレットは空を切っていった。
先に人に向け射撃をしたパブロに、正当防衛が成り立ったと判断したのか、MPが一発の弾丸を発射しパブロの右肩を貫通した。
『よりによって小銃を構えた右肩に・・・』サラは思い切り叫んだ。
「No!!!!!」
パブロの右腕が支えていた自動小銃がその勢いでバウンドすると、行方の定まらない弾が地面を撃ち、周りにいた隊員たちを地面に伏せさせた…。ふとサラが気付くと、パブロが左手に持っていたはずの手りゅう弾がない・・・・。
目の前にいたベンがダッシュして自分のほうに向かってきた。彼の狙いはレバーが外れた手りゅう弾だ。ピンを外しレバーを放した段階から、3・5秒の時間の猶予・・。
撃たれた右肩から、血を流しながらのけぞるパブロのその右手人差し指は、まだ自動小銃の引き金から抜けてはいなかった。引き攣った筋肉がトリガーを引き込み、連射で送りだされたいくつものブレット(弾丸)が、ベンの右足に直撃した。ベンは手りゅう弾を目の前にその場に叫び声とともに崩れた。
サラは一瞬のスキをつきパブロの左腕から抜け、わきの下から潜り込み、左手で彼の右手手首を掴むと、彼より背の低い彼女の体が、まるでそこから消えたように沈み込み、パブロの体は一気に地面へと倒れこんだ・・・。
「手りゅう弾は!?」サラは、自分がその上に覆いかぶさることで被害を最小限にしようと、見つけた手りゅう弾に何の躊躇もなく飛び込んだ。
しかし、間一髪それを見事に拾い上げ、誰もいないグランドに投げ捨てたのは、右足から血を流し伏せていた教官ベンだった。
画像満載な「Mission!!」HPにて、アンケート及び感想待っています。
http://anime.geocities.jp/rachsmission/
面白かったらクリックしてね。↓ 
面白かったらここをクリック♪


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。