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  Mission!! 作者:Rach
6th Stg第74話「Pablo George Granados〜Scoundrels3」
昼休みを前に、武器庫から最初に出てきたのはサラだった。そしてその後を追うように、あわてて飛び出してきたのはパブロだった。そんな二人を遠くから見ていたイワンは、一人建物の壁にもたれて、遠い青空を拝んだ。
彼らの遠くに見えるグランドには、今日も教官の罵声が飛び交い、すべてがいつも通りのようだったが、この日のベンジャミン・ゴードン中尉には、いささか日常的ではない何かが起きたことはいうまでもない。
ベンは誰もいなくなった武器庫内で、目の前に置かれたFA-MAS アサルトライフルを見つめ静かに腕組みをし、そして後ろの冷たいコンクリートの壁にもたれかけた。
「あいつ・・俺から視線を一時も離さず、この銃を分解結合しやがった・・・。しかも50秒以内で・・・」
あの時、自分を注視しながらその腕を動かすサラに、自分は極度の緊張感を覚えた。彼女よりも俺のほうがこの銃に携わっている時間は長いはずだ。それなのに、俺は負けた。
この時、ベンは思った。
『100%彼女がパブロをたぶらかしたことはないだろう。だとしたらパブロに何が?』
次の瞬間、マシューの言葉を思い出したベンだった。

武器庫のドアが開いた。武器係を担当している隊員が部屋に戻り、そこにあった武器庫のカギに粘土らしきものが付着していることに気づいた。
「あれ?なんだろうこれ・・・子供の使う粘土のようなものが鍵に付いている。」ベンは彼の言葉を気にする様子もなく、ライフル銃を引っ掴み脚を折りたたむと、武器係にそれを手渡し無言で外に出て行った。

夕方の体育館では、畳のひかれた柔道場で体操服装のサラが柔軟体操をしていると、そこに柔道着を着たパブロが礼をして、畳の上に上がってきた。
「サラ、俺が悪かった・・・」一言そう言うと、サラは普段見せない笑いを返した。
「いいんだ。その分しっかりレクチャーしてくれればそれでいい。」サラはそう言ってゆっくり立ち上がった。パブロが体をほぐし始め、そして二人は互いにつかみかかった。
「おー!やってるやってる!!」しばらくしてそこに現れたのは、情報屋のホウィだった。
「何の用?」サラはパブロと格闘しながら、ホウィにそう聞いた。
「ここで寝技の練習させてくれるって聞いたもんでね。ものすごい噂になってるぜ。サラ・・・一個大隊全員がその気になっているらしい。」パブロは思い切りサラをぶん投げると、彼女の体が畳にたたきつけられた。その瞬間、ホウィが目を背けた。
「体が傷だらけになっちまうぜ!・・俺との次のデートまで、大切にとっておいてくれよ!!」サラは体を起こすと、畳に座ったままホウィに言った。
「女性問題起こして、外には出られないんじゃなかったのか?」
「それがねえ・・・ベンジャミン教官のお願いで、今度の土曜日一緒にお出かけすることになってしまったのさ。待ち合わせ場所はダウンタウンのラ・メルディアンレストラン。どう一緒に?」
サラはこの能天気男とベンジャミン教官が一緒に出かけることに、得体のしれない何か嫌な空気を感じた。ホウィはそんなサラの心境を知ってかどうか、にやりと笑って見せた。
「やばい話になりそうだぜ。マシューとジョルジュが有名な麻薬犯罪者と関係がある。警察もMPも逮捕しようと躍起になっているようだが、どうしっぽをつかもうか会議ばかりに集中して、行動は二の次のようだ。」
ホウィがそう言った瞬間、彼の背後に位置する体育館玄関から、男たちの喚く声が聞こえてきた。何事かと思いきやホウィが振り返ると、マシューとジョルジュが30人ほどの男たちを連れて、こっちに向かってくるではないか。
「やべ!!サラ、マジあいつら来やがったぜ!!」そう叫んだホウィの肩を後ろから誰かがつかんだ。
「民間人は黙ってみてな。」気の早いジョルジュが、そう言ってホウィの肩を引っ張り後ろに追いやった。畳であるにも関わらず、30人近い男たちが運動靴や編上靴のまま上がり込むと、そこにいたサラとパブロを取り囲んだ。
「何の用だ!マシュー、お前との約束は金輪際ごめんだ!もう2度と・・」
そう言ったパブロの言葉など、どうでもいいような雰囲気だった。
「今まで、お前の成績が良かったのは、体を売っていたからだってばれてしまったようだな。サラ・・・。だったらお望みどおり、優秀な成績結果と引き換えに性交渉してやってもいいぞ。野暮用・・・ついでにな。」
マシューがそういいながら、腕時計をにらんだ。時計はあと少しで5時の課業終了時間を迎えるところだ。
「野暮用??悪いが、何の話なのか私にはさっぱりわからん。」
その時、課業終了のラッパが聞こえてきた。通常ならばここにいる全員が、不動の姿勢をしなければいけないところだったが、この状態では誰もそんな行動に出る者はいなかった。ラッパが鳴り終わると仕事を終えた基幹隊員たちが、次々と車に乗り込み帰路につきだした。外人部隊の正面ゲートでは、いつも通り家路に急ぐ車で混雑し始めている。その中にはあのベンジャミン教官が運転するミニクーパーも見えた。
「もう一度言う!サラはそんなことは言っていない!!ただ格闘技の練習をしたいと申し出ただけだ!」
体育館でパブロがそう叫んだ。そのとたん、遠くで爆発音がこだました。
「なんだ??」サラは一瞬、身構えてその爆発音のあった方角に目を向けた。そこに集まった男たちも突然の大音響に驚いたらしく、体育館の窓から顔を出しそして叫んだ。
「武器庫が爆発した!」大きな火災呼集サイレンが鳴りだした。しかしそこにいたサラは、マシューとジョルジュがなんの慌てた様子を見せなかったことに、怪訝そうな顔をしパブロと顔を見合せた。

外に躍り出た男たちの目の前を、部隊に常駐している消防車が走り抜けて行く・・・。
武器庫は一度目の爆発を起こした後、その消防車の到着とともに2度目の爆発を引き起こした。体育館に集まっていた男たちは、血相を変えその武器庫に向かったが、崩壊して灰色の埃がもうもうと立ち込めるその現場の勢いに圧倒され、立ち往生してしまった。その時、突然一人の男がなにか変な匂いを感じ、口元を押さえ地面に崩れてしまう・・・。サラとパブロもあわててその場に急行したが、そこに身を伏している仲間たちの姿を見て、一帯にガスが充満していることに気付いた。
「これではとても近付けない・・・パブロ、どう思う?」サラは、風上にある少し高い崖の上にある建物に移動し、武器庫周辺を見渡した。自分の後に付いてきた柔道着のパブロはこう答えた。
「おかしい・・・なぜここにLPGガスボンベが?それにこの臭い・・・」
武器庫の裏側にあるはずのないLPGガスボンベを指さした。
「Bleve爆発か?だとしたら、車の接近を止めなければ!!」
外人部隊のMPが辺りの交通統制に乗り出していた。現場の保存を第1に2次災害を食い止めようと、赤色灯を鳴らし急きょ警察車両で駆けつけたのが災いした。ガスはその車の影響で3回目の爆発を起こした。緊急車両が駆けつけようとする中、サラは叫んだ。
「近づくな!ガスが充満している!!」部隊内の緊急車両のみならず、市から派遣された救急車(アンビランス:通称アンビ)も駆けつけていた。サラの声を聞いたアンビの運転者は少し離れた場所に車を停車させると、こともあろうにマシューとジョルジュがアンビの後方ハッチから飛び出してきた。

「野暮用とは・・・このことか?」サラは唇をかんだ。『やつら、何か画策している』そうにらんだサラは、準備よく化学兵器防護服をつかんでいるマシューの前に躍り出た。
「何を考えている!!」
「成績優秀なブルックナー軍曹でも、私が被害を最小に食い止めようとしていることくらいわからんのですか?」
そう言ってにやりと笑ったマシューは、アンビの運転手から何かを受け取ると、立ちはだかるサラを右手でどけ、つかつかと武器庫に近づいて行った。サラの横を通り過ぎる時、小さくマシューが握ったそのものが音を出した。

『チャリン』サラは敏感にその音に反応した。『カギ?』

マシューはジュルジュに化学防護服の着用を手伝わせると、そこにいた外人部隊の幹部と話をしているようだった。納得した顔を見せたその幹部は、こともあろうにそこにいる隊員たちに命令し、マシューらが体育館に連れてきた大勢の男たちとともに、武器庫からアンビまでの20メートルという距離を、2列の縦隊で立ち並び始めた。難なく武器庫のカギを開けたマシューは、せっせと武器を手渡搬出し、男たちを作業員に使って次々とアンビに武器を運びこんでいった。
その様子を見てサラはいっそう不安を募らせた。そこにたどり着いたベンとホウィがサラに駆け寄ってきた。
「サラ、大丈夫か?」帰宅途中の私服姿のベンは、そこにいたサラに声をかけた。
「教官、少し様子がおかしい。この武器庫にあるはずのないJPGガスボンベがある。爆発時間は5時ちょうど。帰宅する車がこのあたりの道路を走りすぎる時間よ。それと、マシューが武器庫のカギを勝手に開けて、中の武器を運んでいる。」
サラがそう言いきった瞬間、パブロが口を挟んだ。
「化学兵器用の防護服で風上からLPGボンベに近づき、バルブを閉めるしかない。おそらく急激なガスの噴射で、バルブ周辺は凍結して、ちょっとやそっとでは回せないはずだ。でかいレンチが必要になりそうだ。」
「わかった。パブロに消防小隊をつけよう。」ベンはそう言って携帯電話を取り出した。
「おっと教官、ここでは火花は禁物ですぜ。」パブロはベンが携帯を取り出したその腕を抑えそう言った。
「そうだったな・・・・。」にやっと笑いかえすベンだった。
「サラ・・・このアンビ、偽物だ。」ホウィの声にサラとベンが振り向いた。そこにあったアンビのナンバープレートをじっと見ていたホウィが静かにそう言った。ベンはこの状態をどう納得したらいいのか悩んだ。
「教官、悩んでいる暇はない。いまここでそれを止めることができるのは、私たちだけ。それとも、便乗してマシューとジョルジュの背後にいるBossの首までつかむ?」
「おおっと!サラ、そんなことしたら越権行為だぜ!!」ホウィがその話に驚いてそう言った。たしかにそれは警察の仕事であって、軍の仕事ではない。
「Wait!」サラはホウィの言葉を止めた。
「私はここでは厄病神、面倒な女性を退職させることをお望みなら、ここは私にこの事件をやらせるいいチャンスよ。もちろん、こんな話があったことは誰も知らない。私が勝手にやったこと・・・。武器を勝手に略奪した仲間を放っておけなかっただけ。どう?」
「やる気満々だな。サラ・ブルックナー軍曹。まだそうと決まったわけではない。」ベンはそう言って、自分のすぐ横を次々と運び込まれる武器の数々を見つめた。その中には二人が対決したFA-MASアサルトライフルがあった。
「お前は俺の部下だ。勝手な行動は許さん。」ベンはそう言いきると、そこに消防車が停まり、中から3人の消防特技の隊員が現れた。
「キム!!話がある!!」ベンはそこから舞い降りた中年の東洋系の男の名前を呼んだ。
「パブロがこの事態をよく熟知している。お前にこの軍事オタクを任せる。どうにかしてこの火災の元をとめてくれ。」
キムは黙ってうなづき、パブロとともに走り出すと、そのあとを追うように現場に向かって歩き出したベンだった。

「教官は女性の活躍をよく思っていないようだな。」ホウィはぽつりとそう言い、大きくため息をつくと、胸元のポケットから携帯電話を取り出した。
「知ってる?これに高性能なGPS機能が付いてるってこと?コンピューターからこの携帯がどこにあるのか分かってしまうわけ。ポイッとね。」ホウィはその携帯をアンビの運転席に投げ込んだ。
画像満載な「Mission!!」HPにて、アンケート及び感想待っています。
http://anime.geocities.jp/rachsmission/
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