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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第70話「Love and Music-4」
メリッサの家の前に一台の作業車が止まっていた。車の荷台にはパソコン修理と書かれた、どこかの業者の車のようだった。どこからともなくスージーの声が聞こえてくる。
「大変!!結婚式の招待客リストがハードドライブにぜーんぶ入っているのに!」
コンピューターの前であわてているスージーは、ひとりパニックになっているようだ。
2人の業者らしき男たちは、そんなスージーのセリフをやり過ごしながら、冷やかに笑って作業を続けていた。
「結婚するのですか?」一人の作業員が彼女にそう聞いた。
「ええ、来週の日曜日に。・・・・」そう聞かれると幸せそうにほほ笑んだ彼女だった。
「では何としてでもパソコン直さないといけませんね。そのほか、家族の思い出の写真とかあるのでしょう?」
何気なくそう尋ねた男は、持ってきたメモリースティックをUSBコネクターに差し込んだ。
「あ、そうよ・・・。それ絶対直してね。お母さんと撮った思い出の写真、古いのも全部スキャンしてパソコンに入っているの。それ全部だめになったらすごく困る…」
急にスージーは深刻な顔になってしまった。
「任せてください。ぼくたちはプロですから!知ってます?うちの会社のボスはIT関係のエキスパート!!かの有名なイギリスSASからもハッキング調査を依頼され、フランス外人部隊でも臨時に教官として雇われ、今はどこぞの国の王室安全対策までやっているほどの凄腕なんですから!!」
「そうそう!まさに世界最高峰のコンピューターリテラシーを持つ男とまで言われているんですよ!!安心してコーヒーでも飲んでいてください。」
「うわ〜〜!助かる〜〜!あ、じゃ、二人の分のコーヒーも入れてきます!!」
スージーはそう言ってキッチンに向かった。彼女が姿を消すと同時に、この二人の男が耳に入れて持っていた小型無線機に連絡が入る。
「お前たち、ベラベラしゃべりすぎだ。ゴホン!ま・・・悪い気はしないが・・・」その声は紛れもないオスカーの声だった。大きく咳ばらいをし少し照れているようだった。
「すみません、ちょっと自慢したくなってしまいました。」一人の作業員男がそう返した。
「じゃ予定通り、ウイルスを駆除してパソコンを元通りに。目標をゲットして退散せよ。」
「了解」そう、この二人はオスカーのいるICCトラック内でともに仕事をしている仲間だった。

日曜日の空は、どこまでも青く透き通っていた。フォイオンの小高い丘にある教会には、大勢の富裕層の男女が美しいドレスを着飾り、スージーとピートの結婚式に集まってきていた。教会内には真っ白なウェディングドレスに身を包んだスージーと、その傍らで優しく微笑んでいる新郎のピートの姿があった。
そんなころ、教会の前にたどり着いた高級車から、二人の男がSPらしき男たちに誘導されながら教会に入ってきた。この男こそ、スージーの父親であるエリック・グレイソン国会議員、ホウィが追っている男だった。
二人は建物内に入るや否や、まるで獲物をとらえるような眼で、そこにいた参列者をじろりと見渡した。彼の横にいる『か細い体格』の秘書らしい男が、サイドのオールバックの髪をなでながら、書類を片手に何かを確認すると、エリックの耳元でそうっと呟いた。
「グレイソン先生。彼女がこのたびセレブに仲間入りされた、あなたのお嬢様です。・・・」
その声にやっと自分の娘の顔を思い出した…そう言われてもおかしくない様子だった。秘書の言葉は続いた。
「そして、あれが新郎のピート君・・・。彼の父上は・・・・」いち早く、教会の隅にいた新郎新婦をロックオンした秘書はその男にそう伝えるや、エリックは早足でウェディングドレスを着たスージーのほうへと足を向けた。
「君の言いたいことは分かっているよ。セレブならば・・・これを機会にわが組織・・の一員に・・・」
「はい・・・よろしくお願いします。」周りにいた参列者たちは、この男の到着に驚きを隠すことはできなかった。それほどエリック・グレイソン国会議員は有名であったからだ。 
「ステキなドレスだ、スージー」エリックは、そこにいたスージーに表情を一変しそう声をかけた。
「父さん、ありがとう!」彼の言葉にスージーは明るく笑顔を見せた。
「さすが、私の娘だ。世界で一番かわいらしい花嫁だよ・・。」二人はお互いにハグをした。その傍らにいたピートは緊張した面持ちで口を開き挨拶をした。
「初めまして、私がピートです。このたびスージーの親権を得られたということで、ご挨拶に行く時間もなく申し訳ありませんでした。」
「いや、いいんだ。スージーはまだ19歳だからね。正式には21歳になるまではこの国では誰かが親代わりをしなければならないと決められている。メリッサがそれを放棄したいと申し出てきた…。急な話だ。まったく彼女はいつも破天荒なことをする・・。」
「ええ・・まあ・・。あ、すみません、私の両親は今、神父様とお話し中でして、すぐこちらに来ると思います。」
ピートは両親を紹介しようと慌てた。
「大丈夫だよ。あわてなくても…これから長い付き合いになるんだから。」
「あの・・母さんは来てる?」スージーは恐る恐る、父親のエリックにそう聞いてみた。
「何回か電話をしてみたが・・・・」そういってポケットから携帯を取り出すと、そこにはMP3がチラッと見えた。その瞬間を逃さない男がいた。カメラを片手にいかなる動向も逃さないホウィだった。
『この男の心の中では、もはやメリッサのことなどどうでもいいと思っているだろうな・・・。エリックの今回のターゲットはこの新郎ピートの両親・・・。金持ちだけを何かに誘惑したがっている・・・。』そばでその様子を見ていたホウィは、カメラのファインダーをのぞくと、そんな彼らの写真を撮り続けた。

「気にしてるのかな・・・」スージーはうつむきながら母親が来てくれることだけを願っていた。悲しそうな顔をしたスージーにピートが声をかけた。
「きっと来てくれるよ。そんな顔をしないでスージー」
「ええ・・ありがとう」
「ところで、君はスージーと同じ医学部で、ご両親もこの国では一番の心臓外科医だそうだが・・・今度ぜひ我が家のガーデンパーティに招待したいと思っているんだ。」
エリックはピートと話をしだした。何か思惑があるようなそんな雰囲気だったが、そこにいた花嫁のスージーはそんなことも気にせず、しきりに参列者の顔を確認し、そこに母親の姿を探していた。

そんなころ、スージーの家の前にバー「ルナ」のマスターが車で駆けつけていた。彼は自分の汚い車を停車させ外へ躍り出ると、マスターは自分の車に追従してきたセダンに歩み寄っていった。
そのセダンを運転していた黒髪眼鏡男は、少し離れた場所にある木の陰に車を停め、そんなマスターと話をしようと運転席の窓をおろした。マスターはこわごわ、その窓に顔を寄せると、彼の視線の向こうから、助手席でふんぞり返っている軍事オタクの大男が、ギロっと自分を睨めつけ見ているのを知ると、か細いその体を震え上がらせた。マスターは恐る恐る黒髪のオスカーに尋ねた。
「ほ・・・本当に?」オスカーはメガネをかけなおしながら、にんまりと笑って見せた。
「本当だ。店が強盗に入った…だから警察が呼んでいる・・。そう言えばきっと彼女は嫌でも家から出てくるさ。」
「し・・・信じるかな??」マスターは慣れていないせいか、おどおどしてなかなか彼女の家に向かおうとはしなかった。
「じゃ、仕方がない。この前のバーでの請求額・・・ちょっと水増しただろ?客がビッグショットだったら、あなたのお店はそういうことをするって、ネット2チャンネルに流そうか。」
そうオスカーが言った途端、隣にいたパブロが、ぐいっとでかい体を前のめりにさせ、マスターの顔を覗き込むように囁いた。
「いまどき、噂はネットであっという間に広がってしまう時代だなあ・・・。今夜から誰も客は来なくなるだろうね・・・。」
マスターはひややかに笑った。
「そんな・・お金持ちだらけだったんですから〜〜〜。少しくらいサービス料金頂戴してもいいのじゃないかと・・。」
そのとたん、パブロの顔つきが変わった。
「やるのかやらないのか!!早くしろ!!」胸元から拳銃を取り出したパブロだった。
「わかりました!!!!わかりました!!!」マスターはあわてて車から飛び出した。メリッサの家の玄関まで猛ダッシュで走っていくと、ドアベルを鳴らし息を切らした様子で事情を説明し出したのを、オスカーとパブロは笑ってみていた。
「やっぱり本当だったんだ。水増しの話・・」

メリッサを乗せたマスターの車は、お店とは違い小高い丘の中腹にある教会の前で、その動きを停めた。
「どういうことだい!!お店に行くんじゃなかったのかい!?」
「これにはちと・・事情が・・・」メリッサはその教会の前で、マスターの襟をつかみ、車を家に戻すように叫び出した。その様子は取っ組み合いの喧嘩のようで、そこにいた警護官たちが何事かとマスターの車に近づいてきた。それもそのはず、国会議員が出席している結婚式ならば、2,3人のSPがいてもおかしくはない。今にも殴られそうなマスターに近づいてきたSPだったが、ふとそこに歩み寄る一人の男がいた。
「遅かったじゃないですか。マドモアゼル、メリッサ。」その声に、メリッサはあわてて窓ガラスをおろしてその男の顔を覗き込んだ。
「ホウィ?」紺のスーツをびしっと着こみ、カメラを持ったホウィが、ちょっと長めの前髪を揺らしながら車の外から声をかけたのだった。そんなホウィの登場にSPは足を止めた。
「さあ、早く行きましょう。」ホウィは勝手に車のドアをあけ、中にいるメリッサの手を取って外へ引きずり出すと、マスターの車はいそいそとその場から走り去ってしまった。
この時驚いたのはそこに集まったSPだった。SPはメリッサの普段着を見てホウィに説明を求めた。
「失礼ですが、身分証明証の提示をお願いします。」その声に戸惑うメリッサだったが、ホウィは彼らに正対すると、いつもと違う口調で・・・メリッサに言わせれば気取った口調でこう言った。
「この方はアンドレ国王のご友人であります。無礼なことは許しません。」
ホウィは胸元のポケットから宮内庁のID身分証明書を見せた。
「すみません!」SPは驚いた様子で2,3歩後ろにのけぞった。何が何だか分からない様子のメリッサは、ホウィに誘われ教会に向け歩き出したが、途中何かに気づいたように足を止め、振り返りそしてホウィに言った。
「家に帰るよ。私はもう・・・あの子の親でも何でもないんだ・・。ホウィ、気を利かせてくれたのはありがたいんだけどね・・。私がここに来てはいけないんだ。」
メリッサは踵を返し教会に背を向けた。
「君こそがスージーの母親じゃないか。」ホウィの言葉にメリッサは黙ってうつむき、もと来た道を戻ろうとしたとき、大きなサイレンとともに警察車両がメリッサの目前に現れ、教会前の道路に停車した。
幾台ものオートバイが黒塗り高級車を先導し、その車はぴたりと教会前に停まると、ものものしい警護官たちがあたりに散らばり、一気に騒然とした空気に包まれた。ふとみると、教会内からも驚いた参列者が、何人も窓から顔を出してその様子を見ていた。
「いったい・・何事・・・」

メリッサは、自分の目の前に急に現れたその光景に、ただ立ちすくんでしまった。
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rachsmission@yahoo.co.jp

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