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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第68話「Love and Music-2」
この日もホウィはメリッサを家に送り届けるため、バー「ルナ」の電飾サインが消えるのを、駐車場で待っていた。夜2時を過ぎたころ、マスターとメリッサが疲れた様子でドアから出てくると、ホウィはプレゼントであるクマのぬいぐるみを片手に、にこやかに笑ってメリッサを迎えた。しかし当の本人はどこか顔色がさえない様子だ。マスターは車のキーを出し、小さく彼女に別れをつけると、いつもなら彼女を家に送り届ける仕事があるのだが、ここはホウィに任せてさっさとどこかへ消えていってしまった。

海岸沿いのハイウェイを快適に走る白い車が見えた。その助手席に座っているメリッサは、まだ不機嫌そうな雰囲気だ。
「娘さんがいるんだって?」ホウィはそんな彼女に話しかけた。
「まあね・・・」
「ちょっとプライベートな話だけど、ダンナは?」
「昔々、別れたよ。」
「国会議員で医者らしいじゃない?」このセリフにメリッサの不快度数はマキシマムになり、化粧が少しはがれかけたその顔つきが怒りに変わった。
「あんたも、このあばずれ女のメリッサが、金目当てに金持ち男との子供を作ったって言いたいのかい!!?」
怒ったメリッサにあわてるホウィだった。
「そんなことない!君は魅力的だ、君に夢中になっている男が大勢いるじゃないか!」
「ふん…、あの飲んだくれのレアリーやトムだろ?仕事もしないで飲んでばかりいて、ろくな人間じゃないよ。」
「近じか、娘さんが結婚するって聞いたよ。彼女のお父さんは式には来てくれるんだろ?」
「たぶんね・・・・」

寝静まっている閑静な住宅街のある家の前で、ホウィは白い高級車のエンジンをカットした。助手席に乗ったメリッサがハンドバッグを身に寄せ言った。 
「久しぶりに高級車というものに乗ったよ。ありがとう。送ってくれて。」
「結婚式、よかったら俺がカメラマンになってやろうか?」
「赤の他人の結婚式に来て、写真を撮ってくれるなんて話はじめて聞いたよ。たいしたおせっかい男だね。あんた、なにか腹に一物ありそうだ。まさか、誰かに頼まれてあの2人の結婚を邪魔しようとか?」
ホウィは少し、鼻先を指でこすると笑ってこう言った。
「全然。じゃ、単刀直入に言おう。君の元ダンナ、エリック・グレイソンに会いたいだけなのさ。迷惑はかけないよ、まったく関係のない仕事の話でね。」急に展開を見せたその話に、メリッサが拍子ぬけた様子でホウィの顔をじっと見つめた。
「あんた、ロビースト?」
「そう思ってくれて結構!よかったら式の日取りを教えてよ。」
メリッサは考え込んだ。昔別れたダンナ、エリックは今ではこのフォイオンの国会議員だ。たまたまあのバーに飲みに来ていた当時の彼と知り合って、お互い恋に落ちたわけだが、かたやエリートの富裕層で、自分はプアな貧困層。子供はできたがとても結婚などできるわけがないと勝手に自分から別れを切り出したのだった。
そんな彼にこのホウィという男は会いたがっている。仕事の話なんか、私には関係ないことだし、どうなったって知ったこっちゃない・・。今、この高級車を乗り回す男を利用して私ができることと言えば…。メリッサは急ににこやかに笑った。
「じゃ、あさっての夜、仲間をいっぱい連れて飲みに来てよ。店の売り上げに貢献してくれたら教えてやる。結婚式で金が要るんだ。」
この男には無理な話かもしれないが、彼女は高飛車にそう出てみた。しかし栗色の髪をしたなんとも母性本能をくすぐるこのフランス男は、眼を輝かせてこう返事した。
「了解!80人くらいでいいかな?」
「は?・・」
「店のキャパシティ、80人だろ?カウンターの上の壁にあったサインを確認済みだ。OK!それと、これ僕からのプレゼント!」
ホウィはクマのぬいぐるみを手渡した。
「じゃ、あさってね!」メリッサは驚きながら車を降り、唖然とした表情のままその場に立ち尽くした。確かに自分はクマのぬいぐるみばかり集めているコレクターだが、なんでそれをこの男は知っているのか??それに、店の壁に掛けられたサインを覚えていた。その表示内容は、店の初開店前に国のお偉いさんが来て決めた、客の最大人数の表示だ。そんな細かいところまで何で知ってるの??ため息がおもわず次のセリフに変わった。
「Unbelievable!It is supposed to be impossible!(信じられない!そんなこと無理に決まってるじゃない!)」

翌日の朝は、夏に近づく太陽がサンサンと輝く青天の青空が広がった。久しぶりに宮殿の自室で目を覚ましたアンドレは、まだ隣で寝ているサラを起こさないように、彼女の近くに置かれたハローキティの目覚まし時計を止めると、そうっとベッドから抜け出てクローゼットに向かった。そこで体操服に着替え、朝のジョギングにいそいそと出かけて行ってしまった。

しばらくしてサラは朝の光に照らされて、もぞもぞとシーツから顔を出すと、隣にいるはずのアンドレがそこにはいないことを知る。ベンからもらったハローキティの時計を確認するサラだった。時計を見ると8時を指している。
『おかしいな・・・7時に目覚ましかけておいたのに。また止められてる・・・』
そう思ってはみたものの、またごそごそとシーツに潜り込むサラだった。
そこへジョギングから帰ってきたアンドレが、まだ寝ているサラの寝顔を覗き込むと微笑んで、そのまま浴室へと姿を消していった。
ベランダでは鳥のさえずる声が聞こえてくる。のどかな平和なひと時だった・・・。サラは夢心地の中で、ふとアンドレが敵に捕まっていくスペイン大使館のシーンを思い出した。
「いかん・・ベンに怒られる。今は、平時ではないのだから・・・」サラはベッドのシーツを跳ね飛ばしてベッドから這いずり出ると、髪をくしゃくしゃと手櫛で整え、ふらふらしながら浴室へ向かっていった。
いつもながら豪勢なバスルームが彼女を迎えた。別荘セイレンのバスルームもそれなりに豪勢だったが、宮殿のそれは全面ガラス張りで、窓から見えるはるか彼方には、フォイオンを取り囲む地中海の青い海が見える。シャワーブースを備え、ジャグジーバスやバラの花の浮かんだバスタブが豪華に輝いて見えた。
サラはその手前で衣服を脱ぎ、軽くシャワーを浴びると真っ先にジャグジーバスに飛び込んだ。サラの体のあちこちには、戦場で負傷した傷跡がついていた。そのひとつを指でなぞりながら、泡だったお湯の中につかり、大きく伸びをする彼女だった。 
そこへ奥のシャワーブースからアンドレが全裸で現れた。まさか、ここにいようとは思ってもみなかったサラは、心臓が飛びだしそうなくらい驚いて、後ろに目をそむけた。
「!!」アンドレもその状況には慌てた様子だ。慌ててタオルを持ち出した。広いバスルームにサラの声が反響した。
「ごめんなさい!!」
「いえ・・こちらこそ・・・・。」そのままアンドレは浴室から出ようとしたが、ふと足を止めた・・・。
サラはまだ振り返ることもせず、まだ後ろを向いたままドキドキしていた。
「まともに・・・みちゃった・・・」なぜか彼にだけは、サラらしいいつもどおりの行動ができないようだった…。
その時、自分の入っているジャグジーバスのお湯が、ぐっと増える感触を感じたサラだった。驚いたサラは、恐る恐る振り返ってみた。湯けむりの向こうでアンドレが、自分と同じバスタブに入ってきているではないか・・・・。
「え!!あの!!!・・・」心臓が口から飛び出しそうだった。
「迷惑でしたか?」二人の間に一瞬の沈黙が流れた。『迷惑??迷惑なのか??』
サラは緊張にあまり意識を失いそうだった。
「確かにその・・・一緒のベッドで寝てて・・その・・今まで何もないのは不思議でしょうけど・・。」
「じゃ、いいのですか?」
「あ・・いや・・その・・・」
「大丈夫ですよ。サラ・・・泡で見えないジャグジーバスくらいは許してくれますか?」
「あ、Affirmative・・・」
「よかった」屈託のないいつも通りの笑顔を見せるアンドレだった。
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