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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第66話「Hostage-7」
現場から少し離れた場所に停車したICCトラック内では、不眠不休のオスカーが画面を見ながら叫んだ。
「ベン、ジャミングが解除されました。どうやら大使館内の発電機の燃料が切れたようです。通信システム復帰します。」
「彼らとの交信はできるか?」
「・・・・だめですね・・・おそらく取り上げられ壊されているかと・・・」通信機からは何の返答も来ないのを確認したオスカーだった。とたん、ベンの携帯が鳴った。
「はい・・・え?・・・その情報は確かなのですか?」オスカーとホウィは顔を見合わせた。新しい展開に直面したようだ・・そう悟った二人はベンの会話に耳を傾けた。
静かに電話を切ったベンの第一声は、なんとも不敵な笑い声だった。
「フフフ・・・面白い展開になってきた。空軍チョッパー(ヘリの別名)のありがたみのないアナウンスはやめさせる。かわりに今、スペインで流行のポップミュージックでも流してやれ。」
「ポップミュージック?あ・・・・了解、そう連絡します。」オスカーは首をかしげながらもそう返答した。
「陸軍の102部隊にはいつでも突入できるよう待機命令。私はこれからピザの配達だ。」
「え?まさか・・・・中にですか?なぜ、ベンがそんなことを?」話のプロットが見えないことに、またもや疑問を投げかけたオスカーは、椅子をぐるっと回してベンに説明を要求した。
「御指名なんだそうだ。」ベンは上半身に取り付けてあった銃のホルスターごと、ガチャガチャ外しだし、それをテーブルの上に置いた。
「今から話すことをよく聞いてくれ。・・・・・」彼はそう言いながら、右足のひざ辺りを両手で触り何かを確認したようだった。

急に何かをひらめいたように、すっくと立ちあがったグラナドス大佐は、数人の大使館員が新しく仲間入りした夕食会のその場所で、じっとカーテンにさえぎられた窓の外を見つめていた。
「父上殿?」隣にいたパブロは、父の様子を気にしてそう聞いてみたが、彼は何も語ることはなく、ひたすら窓を注視して外の様子を探っているようだった。そのガラスの向こうから大きなヘリコプターの音とともに、大音響で流れるスペインのはやりのポップミュージックが流れている。
「パブロ、この曲はなんていう曲だ?」
「え?これは・・・すみません、私にはよくわかりません。・・・」突如出たグラナドス大佐の質問にパブロは躊躇した。流行りの若者の聞く音楽なんて、軍事オタクのパブロにわかるわけがなかった。その時新しくこの部屋に連れてこられたスペイン大使館職員の若者がこう答えた。
「この曲は、今故郷で大ブレークした若者グループのヒット曲ですよ!なかなかいいでしょう?・・にしても、フォイオンも粋なことをしてくれますね。」その答えにグラナドス大佐は笑った。
「フフフ、本当だな。」

夕方になると、大使館の玄関前に中型のトラックがゆっくりと侵入してきた。止まるや否や、数人の武装したテロリストが大使館から現れ、荷台の荷物を次々と館内に運び込んでいった。助手席のドアがゆっくり開くと、そこから白いワイシャツと黒いスラックスだけを着たベンが、両手を上げながらゆっくり下車してきた。銃武装した3人の男たちが、緊張した面持ちで薄着の彼のボディチェックを済ませると、無言のまま彼を銃でつついて大使館内に押し込めるように誘導していった。
そんなベンのすぐ脇を、山積みされた段ボール箱の山が、カートに乗せられ通り過ぎて行った。その行方はパブロとグラナドス大佐のいる人質が押し込まれている部屋のようだ…。

「また武器が?」部屋の中に突如運び込まれた段ボールにパブロは小さくそう呟いた。その中から食パンや飲み物が現れると、そこにいた人質たちは喜びの唸り声を上げた。
「・・・聖書はないか・・」グラナドス大佐の小さなセリフに、武装集団の一人が箱の中から一冊の聖書を見つけてそれを手渡した。大佐はそれからまた、聖書のページに向かって小さくブツブツ何かを唱えるという異常な行動をしだした・・・・・。

アンドレのいる別室では、エアコンが切れたのも手伝い、武装集団がいっそうイライラしているようだった。ホセは、机を目の前にして椅子に座らされているアンドレの髪をつかみ、激しく彼の頭を揺さぶると、目の前に出された用紙にサインをせがみ、ペンを目の前に突きつけた。そんなアンドレの前には、パブロ達から引き離されたサラが、両手を縛られた状態で壁から出た杭に吊るされていた。しかも、彼女の体にオルテガの太い両腕がウェスト辺りをまさぐっていた。
「・・・・こういうことはしないほうが・・・・」そんなオルテガに、女性テロリストであるカーサが歩み寄った。
「お前は黙ってろ!!」そう突き放したオルテガはナイフを取り出し、サラの喉元付近に近付けた。その瞬間、アンドレも椅子から立ち上がり身を乗り出した。
「・・・・無駄だ。私は雇われた傭兵でもある。とっくに死ぬ覚悟はできている。」サラは静かにそう言って見せた。
「こいつが国王のたったひとりの家族なら、…余計にやりがいがあるってもんだ。死ぬ前に、いい夢見させてやろうか・・・」卑劣な言葉を吐くと同時に、彼女の破れて短くなったドレスから見える太ももをさすり出した。
「サラ・・・。」アンドレは立ち上がって、彼女に近づこうとしたが、ホセがペンをとってアンドレに見せ、にやりと笑って見せた。
「もうやめなよ!こんなこと!彼にとって彼女は家族なんだよ!」カーサは急にそう叫んだ。しかしホセがカーサを指さして叫んだ。
「その家族のために、俺たちの祖国を独立させるんだ!いまさら何をためらっている!!」
「最初はそう思ってた。でも・・他国のあの妙な軍事援助を得て独立なんかしても、少しもうれしくなんかない!・・・。あいつらはあの石が欲しいだけなんだ!そのために私たちを利用しているだけなんだ!」オルテガがその言葉を聞いて振り返って言った。
「そうかもしれないが、・・・ほかにどんな手があるっていうんだ・・。資金も凍結され、国からも監視されっぱなし・・何もできない俺たちは、ただ独立を願うだけのしょうもない組織であっていいのか!?」
アンドレはその言葉を聞き逃さなかった。
「軍事・・・援助?」
サラは自分の喉元につきたてられたナイフと、オルテガの体をまさぐるその手をまるで気にしていないかのように、低めの声でゆっくり言葉を発した。
「・・・オルテガ・・・この方法はあんまり利口だとはいえないな・・。なぜなら仮にエネルギー鉱石がお前たちの手に渡ったとしても、・・・その軍事援助をしている国・・・いやメンバーが、本当にお前たちの望みをかなえてくれる保証はどこにもない・・・」
サラはクールにそう言ってみせた。オルテガの彼女を触る手が、サラの表情に何の反応も見せていないことに男としてムカついたのか、急にナイフを彼女の肩ひもに向けそれを切り落とした。
「け!人質の分際で説教たれるな!!」彼女の肩ひもがゆっくり胸元まで垂れてきた。アンドレはそんなサラの様子を見て、深く深呼吸をしてみせた。
「・・・・サラの言う通りです。私たちも彼らの調査をしていますが、とても約束を守るような人たちではないと思います。・・・」
「やつらを知っているのか?」アンドレの隣にいたホセが尋ねると同時にカーサが叫んだ。
「オルテガ!!やっぱりこの計画はやめるべきよ!」
そこにいた全員が、今後の行く末を考え息を飲んだ瞬間だった…。
ドアがノックされ、男が一人顔を出した。
「ホセ!ベンジャミンという男が来ました!」その言葉を聞いたアンドレとサラは顔を見合せた。大きくドアが開くと、ベンが靴音を響かせながら入ってきた。開口一番の彼のセリフはこうだった。
「軍曹、これはまた珍しい展開だな。そんな姿を見るのは、パブロがお前を羽交い締めにしたあの時以来じゃないか?」サラは笑った。
「お前がベンジャミンか・・可愛い部下が辱めを受けないうちに、3Xのありかをしゃべってもらおう」ホセがベンに詰め寄った瞬間、急にベンはその場にしゃがみこんでこう言った。
「おっと・・・靴の紐がほどけてしまった・・・」その行動に何かを悟ったサラは、アンドレにクチパクを送った。
『Close your eyes』 目をつぶれと・・・・。

次の瞬間、ベンは右足についていた義足をはずし、思い切りホセに向けて投げた。眩しい閃光が放たれ、そこにいた無防備なテロリストたちは視力を奪われ、右往左往しだした。 
同時に、ICCトラックからオスカーの声が無線機に飛び込んだ。
「閃光確認!102部隊突入せよ!!」
夕食会場だった部屋で、読んでいた聖書をぱたんと閉じたグラナドス大佐は、ふらふらと近くのテロリストに近づいていったかと思えば、突如、彼らの銃を奪い一気に2人を床にたたきのめして見せた。
「息子よ!!今だ!!」その声を聞いて、パブロは慌てて近くのテロリストに体当たりをし、小銃を奪ったかと思えば、男を床に倒し踏みつけて、弾帯におさまっていたAmmo(アーモ:弾薬のこと。Ammunitionの略語)を奪い去った。二人の親子の行動はすばやく、そこにいた他の大使館員は、ただ唖然としてその光景を見ているだけだった。パブロは窓から隠れるように窓の外を覗きこんだ。フォイオン陸軍102部隊が突撃してくる様子が見えた。全員が相当の武装をしているようだ。
「移動を開始する!!ピックアップポイントで落ち合おう!!」大佐は聖書に向かって叫んだ。パブロはその瞬間、すべてを悟った。『そうか・・・父上は・・・』
そう言いかけたところで、窓から銃撃戦の音が聞こえてきた。あわててそこにいた大使館職員を誘導するパブロだった。
「こっちだ!急げ!!」自分が腕に傷を負っていることも忘れて、負傷した大使館員を抱えあげるパブロは、先手を誘導する父上の後を追った。

そんなころ、アンドレとサラのいる部屋では、ベンが投げた閃光弾に視力を奪われたテロリストの一人が、パニックになり銃を乱射しだした。アンドレは、そこにナイフを持ったオルテガがうずくまっていることに気付くと、彼の手からナイフを奪い、サラの両腕に巻かれたロープを切った。
その瞬間アンドレの上にかぶさるように落ちたサラは、不安定になりよろけてしまうとアンドレに寄りかかるように倒れこんでしまった。
「大丈夫ですか?」その瞬間、サラの右肩の胸元のドレスが落ちてしまい、アンドレは思わず目を背けてしまった。そんな二人を我にかえしたのは、義足を失ったベンの放つ射撃音だった。
「続きは別荘に帰ってからやってくれ!!今はここを出ることが先決だ!!」
テロリストの銃を奪ったベンが、そう言ってせかせると、サラはまるで自分の格好のことなど気にしないような素振りで静かにこう言った。
「ウィル、ベンを担いでくれる?」ロープから解放された手をさすりながら、つぎに右肩のドレスの肩ひもを応急処置的に縛りなおすと、だんだんと視力が回復してきたオルテガの顔面めがけて回し蹴りを食らわせ、持っていたナイフを思い切り彼の腹に突き刺した。
「うぎゃー!!」大声をあげるオルテガだったが、サラの表情はその悲鳴にも何一つ表情が変わることはなかった。
アンドレは沈着冷静な彼女の行動に驚きながらも、右足のないベンに肩を貸し出口に向かって走り出した。しかしそこにいたホセが、薄ぼんやりと見えるアンドレの姿を確認すると、持っていた拳銃の銃口をアンドレとベンに向けさせた。
一瞬立ち往生する二人だったが、サラが放ったブレットがホセの体に命中し、ドアにかぶるように倒れていった。
サラはそんな彼の遺体を、荒々しく足でどけ、ドアから外に出ようとすると、そこにカーサが近づき、ホセの体をどけるのを手伝った。ベンとサラはその行動に驚いた。
「カーサ…。私たちと一緒に逃げましょう!!」アンドレはそう言って彼女を誘った。
「頼みがある・・・私の弟はやつらに捕まっている・・・助けてほしい・・・。この作戦が成功しなかったら、きっとあの子は殺される。私のたった一人の家族なんだ。」
そう呟いた瞬間、最後の力を振り絞ったオルテガが、自分の体に刺さったナイフを抜き、カーサに向かって投げた。鈍い音とともに、カーサの体に刺さるナイフだった・・・・。
「カーサ!!」アンドレは彼女の名前を呼んだが、彼女の体は力なく床に崩れていった。その瞬間、サラはオルテガに容赦ないとどめを刺した。『最初からこうしておくべきだった…』彼女は唇をかんだ。
「今は脱出することが優先だ!」ベンがそう言い放つと、サラはドアから顔を出し、安全を確認するとアンドレたちとともに一気に大使館から脱出を図った。そんな彼女たちの背後では、フォイオン軍が一気に攻め込んだのか、時折大きな銃声がこだましていた。

すっかり日が暮れた大使館の近くにある小さな公園に、数台のストライカーに警備されながら停車しているICCトラックの姿があった。後ろのハッチが開くと、中からひょっこり顔を出したのはホウィだった。
「成功・・・・したのか?それとも・・・」彼はじっと大使館のある方向を見つめた。この場所が非常時のピックアップポイント(LZ)になっていたのだ。うまく逃げおおせれば、国王たちはここに姿を現すはず・・・。暗闇から誰かが走ってくる姿を確認した。
アンドレがベンを抱えてゆっくり走ってくるのが見える。その後を走ってくるのは、パブロとグラナドス大佐だ・・・。ホウィの顔がほころんだ。
「やったぜ!!成功だ!!!おーい!こっちだ!おひょー、サラってば、ものすごいセクシー!!」
オスカーも顔を出し、そこに駆けつけてきた大使館職員やサラたちとの再会を喜んだ。
同時に救急車や警察車両等が駆けつけ、怪我を負った大使館職員たちの手当てが始まった。
公園の地面にひかれたマットの上で、逃げおおせたベンたち全員がそこで救急隊員の処置を受けていた。特にパブロの腕に突き刺さった傷は、ドクターの処置が最初に施された。
「・・・参った・・・今回ばかりはだめかと思ったわ・・」サラはほっとしたのか、多くの警察官や救急隊員が取り囲むアンドレの横で、ぼそっと本心を吐き出してしまった。そんな彼女の腕にまだ付いているロープの後をさすりながら、アンドレはやさしく微笑んで見せた。
「サラー!もしかしてミニスカート作戦したの?」そこへ陽気なホウィが手を振って近づいてきた。
「やっぱりミニスカートは最低だわ…。」アンドレの隣に座りこんでいたベンが、急に笑い出した。
「ははは!!・・・シナリオとは幾分違う展開だったが、細かいところでは打ち合わせどおりだったな!!」シナリオというセリフにサラはきょとんとした表情を見せた。
「いつも言われていたんです。こんな状況になったら、ベンを呼んで欲しいと。」アンドレはサラにそう言って見せた。
「俺の義足内に閃光弾など仕込むことができる。世界中探しても俺にしかできない特別作戦だ。」ベンはそう言ってにんまり笑って見せたが、隣にいるパブロは少々困惑気味だった。なぜなら、彼をこんな足にしてしまったのは、何を隠そう過去、外人部隊にいた頃のパブロのせいでもあったからだ。サラはそんなパブロに声をかけた。
「でもパブロもよくタイミングをあわせて脱出できたわね」パブロは腕に包帯を巻かれながら、そこにいたグラナドス大佐に目をやった。
「こんなことは朝飯前だ。大使館ならどこかに盗聴器が取り付けられているのは常識。この私の声が届いたら、ヘリから聞こえるアナウンスを曲に変えて欲しいと言ったんだよ。そしたら見事に的中した。頼んでおいた聖書が届き、その中には・・・・」
聖書を開くとあるページの張り合わせ部分に小型の無線機が取り付けられていた。
「父上殿・・・」また深く感動したパブロだった。
「この無線機によって、軍の一斉突入を知ることができた。もしこれがなかったら、それと同時に我々は殺されていたに違いない。」
「さすが・・・わが父・・・私はてっきり・・・」大佐はにんまりと笑って見せた。
大空から王室警護のアパッチヘリとMH-60が降下してきたのが見えた。離れているとはいえ、ヘリから吹いてくる風が、サラの短くなったスカートを揺らすと、彼女ははっとして恥ずかしそうにスカートを手で押さえた。
「サラ、家に・・・帰りましょうか。」アンドレは自分の上着のスーツをサラにそうっとかけると、二人はそのままMH-60に向け歩き出した。
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