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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第65話「Hostage-6」
あれから数日が経過した。スペイン大使館を占領され、国王を人質に取ったメンバーたちからは、まだ何の要求も出ていなかった。しかも犯行声明でさえ出されてはいない状況だ。
ICCトラックに缶詰めになっているベンジャミン・ゴードン中尉は、その状況こそが大使館内に人質になってしまった国王とだけ、例のものを巡って交渉が続いているのだと確信していた。
すべてのこちらからのコンタクトは、完全にシャットアウトされている。どんな話にも乗ってはこない。夏に近づく太陽の光が、余計にイライラを募らせていた。
5キロほど離れた道路には、警察や軍が道路をふさぎ駆けつけたマスコミを追い払っている姿があった。時折遠くからヘリコプターが飛来する音が聞こえてくる。
「私たちフォイオン軍は、絶対に救出をあきらめません!!必ず助け出して見せます!!」ヘリに取り付けられたスピーカーから聞こえてくる励ましの声を聞いて、マスコミは話が違うとそこにいる警察に取り入っているようだった。 
「誰が大使館内にいるのですか!?」
「これは不発弾処理なんかではない!あのヘリは救出をあきらめないと言っているぞ!誰が人質になってるんですか!?」騒然としている周囲の状況とは裏腹に、大使館内では幾分か落ち着いた様子ではあった。

大使館内の温度の上昇は、そこに捕まった大使館職員及びサラたちの不快指数を増していっているようだった。サラはあれから姿を見ないアンドレのことを心配していた。
「せめて武器さえこちらにあれば…。」サラは別荘セイレンで、人質になった時のレクチャーをアンドレにしたことを思い出していた。彼女が彼に示した内容は、家族の話をすること…。
いま彼はどうしているだろうか…。それを見事にやっているとしたら、彼とテロリストたちの間に、少しはいい人間関係が形成できている可能性がある。
「父上殿、しっかりしてください!」パブロのセリフが聞こえてきた。大佐が壁に飾られている絵に向かってブツブツ話していた。彼は昨日からこんな調子だ。
そんな息子の声も無視して、次は暖炉に向かってぶつぶつ話しかける大佐だった。
「気がおかしくなってしまったのか?あの父上殿が・・・」いつもの父上の姿とはかけ離れたその行動に、さすがのパブロも落胆した様子だった。
その瞬間、ばたばたと走るテロリストの足音が聞こえた。廊下に続く大きなドアが開けられ、その向こうでは大使館員の一人がテロリストに捕えられ、銃を突きつけられているのが見えた。乱暴にその大使館職員をサラたちのいる部屋に連れてくると、荒々しい男はこう言い放った。
「脱出を試みようとしたこの男を処刑する!!いい見せしめだ!今から起こることをよくみておくんだ!!」その言葉に、大使館職員は身を震わせて命乞いをし出した。サラはあわてて立ち上がり叫んだ。
「落ち着け!!殺そうと思えばいつでも殺せる!!今は待て!」必死のサラの声を聞くや否や、グラナドス大佐は開かれたままのドアに向かってふらふらと歩み出ていくと、廊下にある調度品にもブツブツと何かを語り始めた。
「おい!部屋にもどれ!!」軽機関銃をもった男が大佐に向かってそう言ったが、何も聞こえていないようなそぶりで、呆然としたまま、ただブツブツとうわごとを調度品に向かって語りかけるだけだった。
「ほうっておけ!そいつはもはや廃人だ。」そういった瞬間、何のためらいもなく銃の引き金を引き、脱出を試みた大使館員の心臓を撃ち抜いた。大きな音をたて床に倒れた。
「くそ・・・あいつら、絶対に許さない・・」パブロは唇を噛んで小さくつぶやいた。
「今はまだ我慢だ。パブロ・・・もう少ししたら彼らも、このこう着状態に慣れっこになってくる。少しずつこちらに有利になるよう語りかけよう」サラの言葉に黙ってうなずくパブロだった。

別室では、ホセがアンドレ王の座っている椅子の近くを、イライラした様子で歩いていた。この部屋だけは大使館の予備発電機が作動し、電気とエアコンが作動している様子だった。そのためか涼しいこの場所に、壁を背にして大勢のテロリストが手に銃を持って立っているのが見えた。
「そろそろ、3Xのありかを教えてはくれませんかね?できれば、譲渡していただきたい・・・これができないのなら、少し手荒にしなければいけないようです。」
「ですから何度も申しているように、私にもその場所はわかりませんし、まだお渡しできる段階ではないと聞いております。」
落ち着き払った丁寧な言葉でそう返したアンドレだった。
「その言葉は聞き飽きたんだよ!お前がその場所を知らないというのなら、知っている奴の名前を言え!」
アンドレは少し瞳を伏せがちに、うつむいて見せた。
「でないと、あんたのフィアンセをここに連れてくるぞ・・・。」
そのセリフを聞いた途端、周りにいた男たちが急に顔つきを変え、にやにや笑い出した。
「ここにいる男たちも、どうやらあの女に興味があるらしいな。いいのかい?あのミニスカート女があんたの目の前で、ひどい目にあっても…」
「・・・・ベンジャミン ゴードン中尉」アンドレが小さな声でそういうと、オルテガとホセは互いに顔を見合せた。
「ベンジャミン?」それもそのはず、きっとこの国の政治家の名前が出てくるだろうと思っていたからだ。ひょんな名前の登場に、後ろにいた女性テロリストが口を開いた。サラのスカートを破ったあの女性だ。
「あの傭兵上がりの婚約者が、フランス外人部隊に所属していた時の教官だ。」アンドレはいつも通りの屈託のない笑顔で彼女を見た。
「カーサ、よくご存知ですね。あなたはサラのこともよく知っていた。それに、スペイン人独特の訛りもない。どこかに留学でも?」
カーサは無言だった。
「ベンジャミン・ゴードン・・・フランス国籍・・そんな外人にしか情報を託せないなんて、お前それでもこの国の王なのか!?」オルテガがカーサが持っていた資料を片手にアンドレに詰め寄った。
「一応そうみたいです。皆さんには家族はいないのですか?」そういってカーサをじっと見つめるアンドレだった。
「・・・・・弟がいる。お前と同じくらいの年齢だ」
「そうなんですか・・・ご両親は?」
「・・・・ずいぶん昔に死んだ」
「私と一緒ですね・・。私も不運なのか、天涯孤独の身になってしまいました。今はサラだけが私の家族のようなものです。ホセ、それにオルテガ・・・ベンと連絡を取らせていただけるなら、この件について相談もできましょう。彼に至急連絡を・・・」
「・・・わかった。そろそろ食料も尽きる頃だ。奴を配送人に指名しよう。あんた、サラとか言うあの女と結婚するつもりか?」
「気になりますか?」ホセはにやりと笑って、部下に向かって言った。
「あの女を連れてこい。」数人の男が部屋を出て行くのを確認すると、ホセは紙を一枚、アンドレの机の前に差し出した。
「ここに3Xを譲渡すると一筆書いてサインしな・・・。婚約者がかわいそうな姿になる前に・・・」ホセの要求に、ごくりと喉を鳴らしたアンドレだった。

あいかわらず、グラナドス大佐はあっちこっちの家具や絵などに、ブツブツと何かつぶやいていた。窓の外から聞こえてくるヘリの応援スピーチも、だんだんと聞きあきてきた感があった。
「大佐だというのに、気が滅入ってしまったんだな」
「情けねえな・・・・」そんな見張り役テロリストたちの会話の後、別室に閉じ込められていた大使館員の数人が、サラたちと同じ部屋に運び込まれてきた。乱暴なテロリストの一人が床に座っていたサラの腕を引っ張りあげ、彼女を立たせた。
「いとしのアンドレ王がお呼びだ」
「ついに、私の出番だな・・」サラはパブロと顔を見合せた。
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