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  Mission!! 作者:Rach
5th Stg第62話「Hostage-3」
フォイオンのビジネス街を歩いている一人の男がいた。どことなくふてぶてしく、服装もラフな格好で、顔には無精ひげが生えたままだった。その男は喫茶店に入ると一番奥の席に陣取り、近づいてきたウェイトレスに何か飲み物を注文している様子が見えた。
おもむろに持っていた新聞を広げ、まるで自分の顔を隠そうとでもするかのように、窓ガラス側にそれを向けた。
そこへ、また同じような格好の野球帽男が来て、そのテーブルに着席した。
「ホセか?」新聞を広げた無精ひげの男が、広げた新聞をそのままにぽつりとそう尋ねた。
「準備は上場だ。招待客もうまい具合に箱に入ってくれそうだし、宅急便の配達も完璧だ。」
その男は野球帽をかぶりなおしながらそう答えた。
「宅急便はともかく、招待客はよく仕向けられたな。」
「オルテガ・・・忘れたのか?あいつらの組織の力は甚大だ。我が国の海軍情報部にも、例のものに虜になっている奴が何人かいるってことだ。」
「フフフ。まさか、俺たちもその虜になっていないことを望むぜ。では予定通り・・・」
「Yes sir」二人はそれ以来、一切何も語ることはなかった。

今日の別荘セイレンは、普段とは違う雰囲気だった。『ETAが動いている・・・』その緊張感からというわけではなさそうだ。特にこの男にとっては・・・。
アンドレの執務室で机の前に立ち、大声を張りあげて叫んでいるパブロがいた。椅子に座った目の前の国王に戦闘レクチャーの授業をしているらしいが、いつものパブロらしからぬ行動だった。
「だからして!!こういう事態に陥ったときには!!まず落ち着いて行動することが一番であり!!」
ペンとノートを机に広げて戦闘レクチャーを受けるアンドレが、困った様子でパブロにこう言った。
「あの・・・・パブロ教官。そんなに大きな声を出さなくても聞こえていますから・・」
「おっと・・・これは失礼。では、・・・えっと・・。人質になってしまったときの処置として、まず敵がどのような言語を使っているのか。おおよそ何人くらいのメンバー構成であるとか、所持している武器の種類などを押さえておくことが適切です!!よって!!こういった特徴を抑えておくことによって、イザというときに何かの役に立つこともあるのです!!!」いつしかまた大声になってしまうパブロだった。
「あはは・・・・」苦笑するアンドレは突如、自分の部屋のドアが開く音を聞いた。そのドアから、しかめっ面をしたホウィが入室しアンドレとパブロのいる執務室まで、ツカツカと歩いてくると、携帯を手に文句を言いだした。
「おい!パブロ!!少し声、小さくしてくれよ!電話の声も聞こえやしない!」
そこへサラがあきれた様子で、続きになっている隣の部屋から入ってきた。
「パブロ?父親が来るからといって、張り切りすぎなんじゃない?」
「いえ。そんなことはありません!!」
「ここは、王室の別荘セイレン、父親の前でもないんだから、そんなに緊張しないで」
サラのその一言に図星だったのか、パブロは息を大きく吸って深呼吸した。
「お父上は、厳格な方だと聞きましたが」アンドレが笑いながらそう尋ねてみた。
「はい!わが父上殿は海軍魂の入った気骨あるスペイン軍人であります!!私も幼いころから、父上殿の勇敢なそのお姿に魅せられ、ただただ、父上殿のような軍人になることばかりを考えてきました!」
深呼吸したのもつかの間、極度の緊張した状態は隠しようがないらしい。
「・・・パブロはね、父親を尊敬しているの。グラナドス家は先祖代々、軍人ばかりで“軍人であれ!”という家訓が伝わっているほどよ。彼も十分、それに影響されてるわ」
「そうだったんですか・・・だから武器や格闘技には強いんですね。あさってには私たちも一緒に、父上にお会いすることができます。楽しみです。」
そういって微笑むアンドレだった。
「パブロ、もういいわ。後は私がこの軍事オタクに教えておくから・・・。さっき、ベンが探していたわよ。行ってあげて」
「了解しました!!」そういうとカチンコチンに固まった状態で部屋を出て行くパブロだった。残ったホウィとサラ・アンドレは顔を見合せて笑ってしまった。
「これがあの大胆不敵なパブロとはね・・・」携帯を胸のポケットにしまうと、ホウィはあきれた様子で壁にもたれてそう言った。
「父親がフォイオンにいるっていうだけで、極度の緊張状態。」
「すごく厳しい男なんだろなあ。・・・・で、サラ・・・またドレスを着ていくの?そのスペイン大使館での食事会。できれば今度はミニスカートなんてどう?」ホウィはミニスカートをめくる動作をしてみせた。
「またこの・・・」握りこぶしを見せるサラに、ホウィは2・3歩後ずさりした。
「おっと・・・失礼ー!」部屋から慌てて出て行くホウィに、ため息をつくサラだった。
アンドレはペンとノートを机の隅に寄せながら、サラのほうに向きなおった。
「人質になったとき、ミニスカート作戦は有効でしょうか?」
「ウィルまでそんなことを・・・。」しかしアンドレはまじめに質問したいようで、サラからどんな返事が返ってくるのか待っている様子だ。
「あ・・そうね・・・いたずらにそんな格好になって命乞いしたとしても、テロリストたちの欲望に満ちた眼差しで見られるだけね。一人どこかに詰め込まれて、もてあそばれるのが落ち。」
「まさか、サラにはそんな経験もあるのですか?」
「・・・・昔、陽動作戦を展開中に降下ミスで、ヘリから新兵が一人、敵陣の真ん中に落ちてしまったの。それを救助しようとした私たちのヘリにミサイルが襲ってきた。気づいたときには敵の陣地内で捕まっていた。」
「ええ?!」自分とは全く世界が違うその経験談に、アンドレはますます興味を持ったようだった。
「私たちトループは敵の残忍な見せしめ殺人に仲間を殺され、数人の仲間はテンパッてしまって、もはや極限状態・・・そいつったら敵に向かって暴言を吐きだし、あの時は私たちは殺されると思ったわ。」
「相手を落ち着かせるには、自分たちが落ち着かないとだめっていうことですね。・・・・・」
「そのとおり。私はあの時ふと、足に痛みを感じズボンの裾をめくりあげた瞬間、敵味方の男から、なにか不穏な空気が流れたのを覚えている。どうせ死ぬなら、この女を最後に・・・って叫ぶ奴もいた。味方だとか、捕虜の待遇がどうとか・・・そんな理想論は極限状態では無に等しいってことね。」
「ミニスカートは敵だけでなく味方にも悪影響がある・・・なるほど・・。では、人質になってしまった場合にはどうすればいいのでしょう」
「なるべく会話をすることかな」
「会話?・・交渉ではなくって?」
「いいえ、普通の会話よ。当たり障りのない、ごく普通の・・」
「そんなこと・・・」サラは呆然としているアンドレの表情を見て、少し微笑んだ。
「これには目的は2つ。ひとつはパブロが言ってたようになるべく幹部を狙って、家族の話や恋人の話をするの。・・・家族の話は万国共通の心をオープンにする鍵みたいなもの・・。また好きなスポーツはとか、場所を特定してそこへ行ったことあるかとか、偶然を装って同時期に同じ場所にいたことにしちゃうケースも有効よ。そういった関係がイザというときに殺すことをためらわせるのが目的。」
「なるほど、だんだんと情が湧いてきてしまうものなんですね。」
「Absolutly。二つ目の目的、情報収集。もし敵が好きなスポーツはアイスホッケーと答え、流暢な英語を話すのなら、カナダに長年滞在したことがあるかもしれない。これは後々にいいデーターになるわ。」
「ミニスカートはだめですが、会話はOKということですね」サラは、普段ならそんなジョークも言わないアンドレをおかしく思えた。
「・・・・あはははは!ウィルったら、ミニスカートにこだわっているのね。」
明るい表情を見せたサラだった。
「あ、すみません・・・。ちょっと無礼でした。・・でも、私も男ですから・・、サラのそんな姿、興味がないといったら嘘になるでしょうけど。」
「・・・・あ・・・。」
「でもそんなミニスカートより、今のサラの笑顔のほうがずっと魅力的ですよ。」
「・・・・あ・・ありがとう。・・」サラは、ちょっと照れくさくなって、あわててバスルームに飛び込んだ。大きな鏡の前でじっと自分の顔を見つめてみた・・・。
「私、今・・・大声で笑った?・・・」
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